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『行列のできるれいむのお悩み相談所』 39KB いじめ 野良ゆ 現代 どうしてこんなに長くなったのやら…… ※おまけ注意 読まなくてもお話は完結します 「はぁーっ……」 日が沈み、夜の帳が下り始めた繁華街。人工的な明かりの中、賑わいを見せるその場にそぐわず溜息を吐く青年がいた。 癖を無理矢理にワックスで固めた様な髪に不自然に皺の無いスーツ。そしてその手には履歴書が握られている。 この青年、俗に言うフリーターで、現状を打破するべくアルバイトの面接に行ったのだが、なんとその場で不採用を言い渡されてしまったのだ。 「ったく、あの禿げジジイめ……。見る目がねえっていうかなぁ……」 口から出るのは溜息か愚痴ばかり。 確かに大学も行かず二十歳過ぎてもぷらぷらしている様な奴を、そう簡単には採用出来ないという考えは分からなくもない。 だからといって、 「なーにが『今どき高卒って、君は社会を舐めてるの?』だ!俺だって好きで高卒やってんじゃねーんだよ!!」 納得出来ないものは出来ない。青年には青年なりの事情があって、大学卒業という(多少は)安定した肩書きを諦めたのだ。 まあ、今も安定した職に就けていないのは彼自身の所為なのだが、それを自身で理解しているからこそ尚更、腹立たしい。 「畜生めっ!!」 あまりの腹立たしさに、思わず手にしていた履歴書を地面に叩き付ける青年。 突然の大声と音に道行く人が少し足を止めたが、それだけ。 誰もが数秒後には彼の事など意識の外に捨て、足早に去って行く。彼に声を掛けようなどという酔狂な人物などいない。 青年は一層惨めな気持ちになるだけだった。 「ゆ!おにいさん、ゆっくりしていってね!」 「え?」 青年は俯きかけていた頭を勢いよく上げた。 周りには自分以外にもお兄さんと呼ばれるような人が居るにも関わらず、何となく自分が呼ばれたように思えたのだ。 上げた視線の先、そこに彼に話し掛ける人物はいない。しかし、 「おへんじしてくれないとゆっくりできないよ?おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「あ、ああ……。ゆっくりしていって、ね……?」 再び下げた視線の先、そこに青年に話し掛けるゆっくりがいた。一目で野良と分かる容姿をしたゆっくりれいむである。 反射的に返してしまった言葉だったが、れいむとしては満足だったのか顔をにやつかせた。それが何だか彼を少しイラつかせる。 「……お前、何で俺に話し掛けた?っていうか、何でこんな所に野良ゆっくりがいるんだ。潰されたいのか?」 「ゆゆっ、れいむつぶされたくないよ!」 「だったら早くどっか行けよ。道路も汚れないで済むしさあ」 「でも、れいむはどうしてもここにいないといけなくて、だからおにいさんにこえをかけたんだよ!」 「あ?どういう事だ?」 イラついた状態でゆっくりと会話するのは勘弁したく立ち去るように言う青年だったが、れいむが何やら訳の分からない事を言い始めた。 「れいむにはね、かわいいかわいいおちびちゃんがいるんだよ!」 「おい、何の話だそれ」 「れいむとおなじれいむなんだよ!」 「話を聞け、こら」 「ほんとうはおちびちゃんはたっくさんいたんだけど、いまはいちゆんしかいないんだよ……」 「いや、知らんがな」 「つがいだったまりさもかりからかえってこないし……」 「ふーん」 「でもね、れいむはしんぐるまざーとしてがんばるってきめたんだよ!」 「それは大層な事で」 「そして、れいむとおなじぐらいにびゆっくりなおちびちゃんに、すてきなつがいをみつけてあげるのがゆめなんだよ!!」 「自画自賛の上に親馬鹿か。救いようがねえな」 れいむのどうでもいい話に適当に相槌を打つ青年だったが、我慢がいよいよ限界にきていた。 とりあえず、れいむの頭を踏み付け話しを進めることにする。潰してもいいのだが、何も聞かずになあなあに事を終わらせるのが嫌いな青年であった。 「んで、どうして俺に声を掛けたんだ?ちゃんと答えないと潰すぞ?」 「ゆぶぶぶっ!ま、まっでね!ぢゃ、ぢゃんとはなずがら……!」 「さっさとしろよな、ったく……」 野良ゆっくりと会話するなど、虐待鬼威惨と思われかねない。 別にゆっくりを虐待する趣味などない青年としては、これ以上、世間体を悪くするのは勘弁したかった。 ようやく本題を話し始めるれいむだったが、その内容は至極どうでもいい事だった。 「れいむはおにいさんにきゃっしゅさんをもらいたかったんだよ!」 「キャッシュさん?キャッシュってのは金の事か?」 「ゆーん!そのとおりだよおにいさん!」 「あれだろ?お前らで言うキャッシュさんを集めて、甘い物でも食べようって魂胆だろ?」 「ものわかりがよくてれいむたすかるよ!ついでにそのきゃっしゅさんをちょうだいね!!」 「分かり易いし、どさくさに紛れて何を言ってやがる。誰がゆっくりなんぞに金をやるか」 れいむの言葉から、確認する為に財布から百円玉を取り出した青年。れいむは図々しくも強請ってきたが、彼は一蹴した。 それと同時に彼は失望する。このれいむの行いはただの乞食。そこらのゆっくりが日常的に行っていることだ。 ゆっくりなどに時間を割いてしまい今日は厄日だなと思わずにはいられない。 「ゆぅ……。しかたないね……」 「え……?」 しかし、れいむの思いがけない一言に驚いてしまう。 仕方ない?野良ゆっくりが殊勝な態度をとる?おかしくはないだろうか? 「おいおい、そこは『いいからそれをよこせー』とか『くそじじいー』とかじゃねえの?」 「はぁ?そんなこといったらにんげんさんにえいえんにゆっくりさせられちゃうでしょ?ゆっくりりかいしてね!」 野良ゆっくり故の生きる知恵なのか、さも当然のように語るれいむ。 確かにその通りなのだが、同時に挑発していると気付いているのだろうかと青年は疑問に思う。 「はぁ……」 何だか異様に疲れが溜まっている。 面接に行けば禿げた親父に軽くあしらわれ、意気消沈していると野良ゆっくりに絡まれる。 それは疲れも溜まるよなと、青年は自己完結するのだった。 「おにいさんはげんきがないね!」 「お陰様でな……」 会話が成立(?)したからか、馴れ馴れしく話し掛けてくるれいむ。 自分がその元気を奪っている要因などとは露とも思ってはいないのだろうその笑顔が、青年は何とも妬ましい。 いっそゆっくりみたいに能天気に生きれたらなどと致命的に馬鹿な妄想をしてしまう。 「なにかおなやみがあるのなら、れいむにそうっだんするといいよ!」 「ああ?お前に相談だぁ?」 「そうだよ!れいむはおなやみそうっだんのえきすぱーとっ!だからね!」 いやいやそれはまずいと妄想を振り払っていた青年に、れいむは更に訳の分からない事を言い出した。 「ふーん。それは何でもいいのか?」 「どんとこーい!だよ!」 「ちなみに、そのお代は?」 「きゃっしゅさんでいいよ!」 「やっぱりか」 結局、行き着く先はそこ。欲望に忠実なゆっくりらしい思考だ。 しかし、ゆっくりに相談とはどうだろう。如何に青年といえど、そこまで落ちぶれたつもりはない。 となると、彼がこのれいむに相談するのはお門違いである。 「悪いけど、俺がお前に相談することはないな。多分、未来永劫に」 「ゆぅー。ざんっねんだよ……」 そう言って項垂れるれいむ。余程お金が欲しいのだろう。 だかといって、野良ゆっくりがお金をもっていたとしても使えるはずもなく、むしろ持っているだけで盗んだと疑われるのが落ちだろう。 「っていうか、お前は何でそんなに金を欲しがるんだ?そこまで甘い物が食べたいか?」 「れいむはいまのごはんさんでじゅうっぶんだよ!でも、おちびちゃんはべつだよ!きっとたべたいにきまってるよ! れいむはおちびちゃんをぜんっぜんゆっくりさせてあげられないから、せめてあまあまだけでもたべさせてゆっくりさせてあげたいんだよ!!」 あえて非情な現実を伝えることはせず、青年はれいむに質問した。すると、れいむはその行い全てが我が子の為だと誇らしげに語る。 きっとこのれいむは本物の母性を持った『れいむ』なのだろうが、青年にはやたらと勘に障った。 その根拠無く自身に満ち溢れる瞳からは、きっとこのれいむがお金を稼ぐことの難しさを理解していない事が容易に伺える。 自分の夢を語ればきっと人間は共感し、お金をくれるはず。……誇大妄想にも程があるというものだ。 そんなどうしようもなく甘い考えを、青年は叩き折ってやりたくなった。 「……お前、もし金が手に入るのなら何でもするか?」 「あったりまえだよ!」 「絶対に?」 「もっちろん!」 「途中で諦めたりしないな?」 「とうっぜんだよ!」 「よし、言ったな?」 言質は取ったぞと、青年の口元が歪む。 彼はもう世間体など気にしないことにした。所詮はこの場限りなのだ。野良ゆっくりと会話をする変人に思われたってどうという事はない。 ただ、この世間知らずな馬鹿ゆっくりに、この世の厳しさというものを教えなくては気が済まなくなっていた。 「おい、喜べ。お前の金稼ぎ、俺が手伝ってやるよ」 「ゆゆっ!?ほんっとうなのおにいさん!?」 「ああ、本当だ。ただし、あくまで『お仕事』だからな?楽ができると思うなよ?」 「ゆ、ゆっぉおおおおおおー!!おにいさんがいるならひゃくっにんっりきだよぉおおおおおおー!!」 「ははっ……」 れいむの過大評価に青年は苦笑するしかない。 彼はただのフリーター。世の中を動かすことなど出来るはずもなく、またその厳しさ全てを知っている訳でも当然ないのだ。 「……という仕事なんだが、お前にぴったりだろ?」 「かんっぺきだよ!こんなことをおもいつくなんて、おにいさんはてんっさい!だね!!」 「お世辞はいい。俺は準備をしてくるから、お前はここで待ってろ。くれぐれも誰かに潰されたりするなよ?」 「りょうっかいだよ!!」 それでも、このれいむには自身の知る厳しさの十分の一でも刻み付けたいと思った。 お金を稼ぐという行為が、どれ程に大変な事なのかを……。 「ゆーん!にんげんさん、よってらっしゃいだよー!れいむのおなやみそうっだんじょがはっじまるよー!!」 十数分後、準備が整った青年とれいむは早速『お仕事』に取り掛かることにした。 準備と言っても『仕事』を行う上で欠かせないある物を買ってくるのに時間がかかっただけで、他は数分で済んでしまっていた。 場所は変わらず繁華街だが、路上で行う為、警察の御厄介にならないように人通りの少ない路に移動している。 青年も流石に人生に一生残る様な恥を野良ゆっくりなんかと一緒には残したくない。 さて、肝心の『仕事』内容だが、単純な肉体労働などでは勿論ない。 ゆっくりに肉体労働が務まる筈も無く、ましてや青年がゆっくりの為に汗を流すなどあり得ない。 ではお歌でも歌わせるかとなると、それは単なる物乞いであって『お仕事』にはならない。 青年が目に付けたのは、れいむが言っていた悩み相談という言葉だ。 何やら大層な自身を持っていたようなので、それを仕事にしてみてはとれいむに進言したしたところ、僅か二言でめでたく『お仕事』が決定した。 「そうっだんりょうはいっかいひゃくえんさんだよ!ゆっくりよっていってね!」 ちなみにお悩み相談の料金はれいむの言う通り一回百円。隣に突っ立っている青年が、不要となった履歴書の裏に少々汚い字でその旨を示している。 ゆっくりに悩み相談、しかも一回に百円も取られる。これでは『お仕事』になる前に潰されるのが早いのではと思われるだろう。 事実、道行く人はれいむの声(と側に立つ青年の姿)に不思議そうな顔だったり、あからさまに不快な顔を浮かべている。勿論、れいむの声に立ち止まる人はいない。 「ゆーん、にんげんさんはゆっくりしてないよ……。れいむのおはなしをぜんっぜんきいてくれないよ……」 「何だまだ始めたばかりだろう?」 「でも、にんげんさんはれいむをむししていくよ……」 「まあ、初めはそんなもんだって」 「ゆぅぅ……」 れいむは落ち込むも、青年の中では想定内の事態である。 しかし、一回で百円もするれいむ相談所だが彼はイケると踏んでいた。その胸の思いを確信へと変える為、彼は行動に出る。 「あのなぁ、誰にでも声を掛けりゃ良いってわけじゃねーんだぞ?例えばよ、あの向こうから歩いて来るおっさんを見てみろ」 「ゆ?あのにんげんさん?」 「そうだ。どうだ、あのおっさんはお前から見てゆっくりしてるように見えるか?」 「ゆむむむむ……」 青年におっさんと呼ばれた人間をれいむは注視する。 どうにもくたびれた感じの人間だ。着ている服がよれているのが尚更そう感じさせる。 しかし、何よりも特筆すべきはその纏っている空気だ。れいむにはその人間の周りだけ空気が若干、死んでいるように思えた。 それら全てを考慮に入れ、れいむは結論を出す。 「ゆっ!とーってもゆっくりできてないよ!!」 野良であるれいむからしても、その人間はゆっくりしているようには見えなかった。故にこの結論。 「だろ?きっとあのおっさんは何か悩みを抱えてるんだ」 「お悩みさんを?」 「ああ、だからゆっくりできていない。そんでさ、お前の『お仕事』は何だったっけ?」 「それはにんげんさんのおなやみそうっだんにのってあげること、……ゆ?」 「気付いたか?」 青年の誘導によって、ようやく理解するに至ったれいむ。 れいむは最初から『数撃てば当たる』とばかりに、通行人に声を掛けまくっていたからいけなかった。 悩みを相談する場所ならば、悩みを持った者を誘えばいいだけの話である。 「……あのにんげんさんを、れいむのおきゃくさんとしてむかえればいいんだね?」 「そうだ。ほら、早く声を掛けろ。おっさん行っちまうぞ」 「ゆ!?」 気付けば件の人間はれいむと青年の前を通り過ぎようとしていた。 声を掛けるならば正に今という絶妙なタイミングで、れいむは人間の歩みに待ったをかける。 「そこのにんげんさん!おなやみがあるのなら、れいむにそうっだんしていってね!!」 「……は?」 れいむ相談所、記念すべきお客様一号の誕生の瞬間だった。 「……それで、私はどうしてここにいるのかな?」 「にんげんさんがとってもゆっくりしてなかったからだよ!」 「おっさんが辛気臭そうにしてたからだな」 一回りぐらい年下に思える青年とその連れのれいむからのあんまりな言葉に、おっさんと呼ばれた男は頭を抱えてしまいたくなった。 男はしがない管理職。上から叩かれ下から突き上げられの毎日を過ごす苦労中年である。 今日も部下(新人)の失敗を取り戻す為に奔走し、疲れた身体を引き摺り帰路に着こうとしていた。しかも、この後はまだ妻の愚痴を聞くという大事な仕事が待っている。 我が家に帰ろうとも休みは無いのかと、帰宅の途中だというのに意気消沈してしまっていた。 そして、そんな暗澹たる気持ちの中で声を掛けて来たのがこの一人と一匹だった。自分が足を止めた理由もよく分からないまま、男はとりあえず気になった事について問うてみる。 「いや、辛気臭いって……。そんなに私はゆっくりしてない顔だったのか?」 「ああ。如何にも私は不幸なんですー、って面してたな」 「にんげんさん!ゆっくりしないとゆんせいがだめになるよ!ゆっくりしようね!」 一人と一匹は何の躊躇いも無くそう言い切った。 何処となく部下と似ている青年の言葉には容赦というものがまるで無く、的確に男の弱い所を突いてきた。 それだけに、れいむの能天気な言葉が僅かに心に染み、つい自嘲気味に男は言葉を漏らす。 「ははっ……。そうか、私はそんなに不幸面を晒していたのか……」 「見てるこっちが暗くなりそうだったぜ?さっきのあんたの顔」 「はは……、は……」 青年の追撃の言葉に苦笑さえ浮かべるのが困難になってしまった。 普通は何か言い返すのかもしれない。しかし、男にはそんななけなしの気力さえも奪い尽くされてしまっていた。 「だからさ、ここであんたの鬱憤を晴らしちまえよ」 「え?」 だからこそ驚いた。自分の心をへし折った張本人が、そんな提案を持ち掛けてきたのだから。 まさか落とした後に持ち上げる新手の商法か何かではないかと警戒する男だったが、青年はそんな様子も気にせず話を続けていく。 「溜まってんだろ、不満とか不安とか?そうじゃなきゃあんな顔しないって」 「あ、ああ」 「だから、ここでおっさんのそれをぶち撒けりゃあいいんだよ!」 「ぶ、ぶち撒けるって……。それにここって……」 青年の意図が分からずに混乱してしまう男。 青年は男のそんな様子に、まるで役者か何かの様に大袈裟に首を振りながら答える。 「ここはここだ。あんたの足元には何がいる?」 「何って……、ゆっくり?」 「そうだ。そして、あんたは何でここに足を止めたんだった?」 青年の言葉に、男はつい先程までの記憶を思い返す。 自分は確かに暗い面持ちで帰り道である繁華街を歩いていた。そこに馴れ馴れしく声を掛けてきたのが、青年とれいむだった。 そういえば、足元のれいむが何か言っていた気がする。それは確か、 「まさか、悩み相談?」 「そうそう。それであんたの悩みを解決。そして大団円、ってね」 「それは勿論……、君が乗ってくれるんだよな?」 「俺がそんなこと出来るような奴に見えるか?あんたの相談相手はこいつだよ」 「ゆん!れいむにかかればどんなおなやみもそく!かいっけつ!だよ!」 男は目眩を覚えた。ゆっくりに悩み相談?冗談も大概にしてほしい。 金バッヂを取得している真に優れたゆっくりなら分からないでもないが、足元のれいむは汚れ具合からして野良の様に思えた。 となると十中八九、れいむが人間の相談に乗れる技能などあるわけが無く、同時にその隣に立つ青年が野良ゆっくりに構う様な暇人である事が窺える。 途端に胡散臭さが増し、面倒なことに巻き込まれたのだと今更になって自覚する男。 何より落ち込むのは、そんな馬鹿げた話しについ足を止めてしまった自分はどれだけ思い詰めていたのかという事だ。 「相談って……、ゆっくり何かにそんなことが出来るはず無いだろう!?」 「いやいや、こいつはきっとあんたの悩みを解消してくれるよ?」 「にんげんさん!しつれいなこといわないでね!れいむはえきすぱーと!なんだからね!!」 「ほら、本ゆんもこう言ってるし」 「自称じゃないか……」 話しにならない。もう関わるのはやめようと男は決断し、帰り道へと足を向けようとする。 すると、男の動きを予知していたかの様に青年がそれを阻む。いい加減に我慢が限界に近い男は不快を隠そうともせず青年に言う。 「私は疲れているんだ、もう関わらないでくれ!」 「まあまあ、通販番組を見る為に時間を割いてると思って……」 「私は通販などしない!『時は金なり』という言葉を知らないのか君は!?」 「通販も見たり聞くだけならタダだよ」 「何を馬鹿な……っ!」 男の言葉を飄々とした態度で流す青年に業を煮やしかけた瞬間、青年が男の首にその腕を巻き付けてきた。 傍から見れば、まるでいじめっ子に金をせびられるいじめられっ子の様な構図である。 「ほら、耳を貸しなって」 「わ、私を揺する気か!?やっぱりそれが目当てで……!」 「んな気は無いって。今から話すのはただの相談方法だよ」 「いいから離してくれ……!」 「その方法ってのがな……」 いよいよ男の言葉を無視し話し始めた青年。そんな話など聞きたくないとばかりに、何とか青年の腕を首から外そうと奮闘する男だったが、思いの外その力が強く困難だった。 聞くものかと思った時に限って内容は耳から頭に入ってくるもので、青年の話す事はすらすらと男の頭の中に刻まれていく。 そして、一通り青年が話し終えた時、男の顔は初めはぽかんとしたものだったが、次第に頬が引き攣り始める。 「……以上だけど、斬新でしょ?」 「斬新って……。そんなこと、私には出来ないぞ!?」 「いいんだって、本ゆんはやる気満々だしさ」 「君はこのゆっくりが可哀想だと思わないのか!?」 「んー。無理矢理やらされてるならそう思わなくもないけど、こいつとは合意の上だし」 「し、しかしだな……」 「こいつは自分の子供にどうしても甘い物を食べさせたいんだと。その為の『お仕事』なんだよ」 男は愕然とした。 てっきり青年はゆっくり虐待趣味の人間で、今も面白半分に自分を巻き込んでいるのではと思っていたので、真っ当な理由に虚を突かれてしまったのだ。 「おら、お前の出番だぞ」 「おにいさん、ゆっくりしすぎじゃないの?れいむ、まちくたびれちゃったよ!」 「文句ならおっさんに言ってくれ」 「にんげんさん!ゆんせいはときにすぱっ!とけつっだんすることもだいじだよ!!」 「流石はエキスパート、それっぽい事も言えるのな」 「ゆっへん!」 何やら当の一人と一匹は勝手に話を進めてしまっているが、男は相談するとは一言も言っていない。 慌ててその場を去ろうとするも、時既に遅し。男の目の前には、青年によって掬いあげる形で抱えられたれいむ(消毒済み)がいた。 「さ、おっさん。何時でもどうぞ」 「どうぞっだよ!」 「あっ……」 青年の手、正確にはその手に抱えられているれいむを見た瞬間、男の中で二つの事が起きた。 一つはつい数瞬前まで一刻も早くその場から離れようとしていた足が、縫い付けられたように動かなくなった。そして、もう一つ、 「ゆっ!にんげんさん!」『あっ、先輩!』 「……っ!?」 れいむの無駄に自信満々な顔、それに厚顔無恥な自分の後輩の顔が重なったのだ。 「おかおがゆっくりしてないよ?ぽんぽんいたいの?」『先輩、顔色悪いっすよ?腹痛ですか?』 「……」 「それのげんっいんは、きっとすとっれすだね!」『それきっと仕事疲れですよ』 「……」 「むりしてちゃめっ!だよ!」『無理して仕事しちゃあ駄目っすよ』 きっと目の前のれいむは純粋に自分を心配してくれている。だが、 「『だから』」 どうしてもその顔が、声が、 「れいむにおなやみそうっだんをまかせてね!」『今日の仕事は俺に任せて下さい!』 否応無しに重なってしまうのだ。 このれいむと後輩は違う。違うと分かっているのに……。 「……なあ」 「ゆ?なに、にんげんさん?」 「君は私の『相談』に乗ってくれるんだよな?」 「あったりまえだよ!なんでもそうっだんしてね!!」 「そうか……」 「ありがとう」 「ゆ?にんげんざん、なにをしでべらぁっ!?」 男は既に『相談』をせずにはいられなかった。 「い、いだぃいいいいぃいいいい!!どうしてれいむをなぐるのぉおおおおお!?おなやみそうだんはどうしたのぉおおおおお!!!」 「何でって、可笑しい事を言うな。これが君の悩み『相談』の方法なんだろう?」 「ゆぅ!?」 全く寝耳に水だという風に驚きの表情を浮かべるれいむだが、スイッチの入った男には至極どうでも良かった。 「なあ、君はゆっくりなのにどうして彼にそっくりの顔をしているんだい?どうして言い訳するんだい?」 「な、なにをいってるの……?」 「私も君が仕事を任せろって言った時はそれは嬉しかったさ。でもさあ……、」 「にんげんさ……」 「どうしてそこで失敗するんだ!何でそれを隠そうとするんだ!!あまつさえへらへらと笑っていられるんだ!!! さっさと言えばいいものを……!よりによって帰る間際に言わなくてもいいじゃないか!!おかげでこんなにも帰るのが遅れてしまった!!! どうして君の失敗の為に私が頭を下げなきゃいけない!?君がいの一番に頭を下げるべきだろう!! 結局は私が全部する事になったじゃないか!君は今日一日何をやっていたんだ!? 分からないのなら聞けよ!適当に済まそうとするなよ!!迷惑するのは私や君だけじゃないんだぞ!!! 大体、最近の仕事疲れだって君の仕事の補助に回ってるからなんだよ!いい加減あれ位の仕事一人でこなせるようになってくれよ!! 私だって本当はゆっくりしたいんだよぉおおおおおおっ!! ……何だその顔は?私が悪いとでも言いたいのか!?いいだろう!今日はとことん付き合ってやる!!覚悟しろぉおおお!!!」 「ゆがっ!やべでびゅ、ぼうりょぎゅべぇっ!ゆっぐりでぎなばぶぅっ!?おでがいだぎゃばあっ!! ゆびっ……、ゆじゅがっあああああ!?で、でいぶのはざんがおでじゃったぶっ!?いびぃいいいい!!おべべっ!おべべぎゃあああああああっ!! みえない!みえない゛んっ!?……っが、へいふの、へいふのひははんほこなのぉおおおおおおおおお!?」 「まだだ!まだまだ帰さんぞおぉおおおおおっ!!」 「……うわー」 もう完全にれいむと部下の区別がつかなくなってしまった男は、青年の手かられいむを奪い、その肌に拳を叩き込み続けている。 ゆっくりであるれいむが当然それに耐えられるはずも無く、野良にしては張りのあった肌は凹凸だらけに変わり果ててしまっている。 ベルセルクと化した男。歯、目、舌を喪失したれいむ。そんな両者を心身共に一歩引いた状態で見る青年。 場はこの上なく混沌としていた。 さて、この『相談』方法はお分かりだろうが青年の考えたものだ。 れいむの『相談』とは、人間に殴られてその人のストレスを解消するというもの。ゲームセンターにあるアレのゆっくり版である。 青年の持っている紙には『れいむのお悩み相談所 身体を張ってあなたの悩み受け止めます! 一回(発)百円』としっかり明記されている。 そんな本人の大部分の私情と僅かな人間味のある素敵な『相談』方法である。因みに、集まったお金は青年の懐に入る予定だったりする。 「さってと、そろそろ限界かな?」 中年の体力は如何ともし難い。二十を過ぎた辺りから腕と声に力が無くなってきている。 律儀に回数を数えていた青年は頃合いと見て、男に話しかけるのだった。 「はぁっ……、はぁっ……。私は、一体……」 「いやあ、随分とハッスルしてたけど、気分はどうよ?」 「!?……ああ。憑物でも落ちた様な、気分だよ……」 「そりゃあ、こんな往来であんだけ派手なことやればすっきりするよな」 「うっ……。って、ああっ!?」 「ん?どうしたよ、おっさん」 「いや、その、ゆっくりが……」 「ゆ゛っ……!ゆ゛っ……」 「あー、忘れてた」 『相談』を終え、晴れ晴れとした気分と羞恥の気分を味わっていた男だったが、『相談』相手であったれいむの姿を見て、顔を青褪めさせた。 男の苛烈な『相談』をその身に受けたれいむは、陸に打ち上げられた魚の様にびくんびくんと痙攣を起こしている。誰がどう見ても危険な状態である。 「だ、大丈夫なのか、これ!?」 「大丈夫、大丈夫。こっちには秘密兵器があるから」 慌てる男を尻目に、青年はあくまでマイペースに買い物袋を漁る。 その中にあるのは、『お仕事』を始める前に男が探してきた例のアレで、今回の秘密兵器である。それは、 「じゃん!オレンジジュースッ!!」 ゆっくりにとっては定番のアイテム、オレンジジュースである。 「本当にそんな物が効くのか!?」 「ゆっくりにはこれが一番の特効薬なんだって。しかもこれ、ゆっくり向けのオレンジジュースらしいし」 「効くのなら何でもいいが、早くあげないか?さっきよりも痙攣が……」 「やばっ。とりあえず、ドバ―ッ!」 れいむの痙攣が『ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……』とペースアップしているのを見た青年は、慌ててオレンジジュースをれいむに振り撒いた。すると、 「おおっ!?」 「これは、すごいな……」 男の『相談』によって膨らんだ餅の様に腫れ上がっていたれいむの肌は、時間を巻き戻したかのように元へと戻っていく。 肌だけではない。潰れてしまった目も、折れて欠けてしまった歯も、千切れて飛んでいった舌も、全てだ。 予想以上の効果に、大の男二人は思わず呆けてしまう。 「オレンジジュースって、凄いんだな……」 「ああ……」 妙に感心した風の二人だが、普通のオレンジジュースにここまでの効果は無い。 大体が傷を治し、腫れを抑える程度であり、激しい欠損を癒すことは如何に万能のオレンジジュースといえど不可能である。 だが、青年の買ってきたオレンジジュースは既存の物とは異なっていた。 名を安芸オレンジジュース。『奇跡のオレンジジュース』とも呼ばれる曰く付きの一品である。 このジュース、使われているオレンジの酸味が強過ぎるため、実は人間にはあまり好まれる味ではない。 だが、あるゆっくり虐待家が弱っているゆっくりにこのオレンジジュースを使った所、驚くべきことに忽ち全快してしまったのだ。 従来を遥かに超える効果に、虐待家の間で瞬く間にそれは広がっていった。 故にこのオレンジジュースは人間の飲料としてではなく、ゆっくり(虐待または治療)用として販売されていたりするのだ。 「ゆ……?」 「お、目が覚めたか?」 「ゆぅ、おにいさ……!?」 「あ……」 死の淵から一瞬で戻ってきたれいむだったが、その元凶である男を見た瞬間に凍り付いた。おそらくは先の恐怖で身体が竦んでしまったのだろう。 バツの悪そうな顔をする男は青年の方を見るも、何か口を挟んでくる様子はない。このままでは埒が明かないと思った男は少し慌てた感じで青年に話し掛ける。 「料金は幾らだ?」 「えーと、二十八ぱ、回だったから二千八百円だな」 「そうか……」 それだけすればこんな反応も当然か。 そう思いながら男は財布から千円札二枚と五百円玉一枚と百円玉三枚を取り出し、それを青年、ではなくれいむの目の前に置いた。 青年は不審そうな視線を送ってくるが無視。身を屈めるとれいむの身体は震えた。が、あえて気にせずれいむに言葉を送る。 「ありがとう。君のおかげで私の悩みが晴れたよ」 「ゆ?」 「それじゃあ」 それだけを言って男は立ち去る。 ごめんでもすまないでもなく、ありがとう。この場で謝ることはれいむへの侮辱の様に思えた。だからこその感謝の言葉。 「おにいさん、これがきゃっしゅさん?」 「そうだ」 「これ、れいむがあつめたんだよね?」 「……ああ、そうだよ」 「っ!れいむ、もっとがんばるよ!」 「……好きにしろよ」 「ゆへへ」 男の背中が人混みに紛れて見えなくなった後、れいむは青年に問い掛けた。 彼はれいむに返事はするものの、言葉に先程までの勢いは無い。 それはれいむの嬉しそうな顔を見たからか。 それとも去り際の男の顔が何か満ち足りたものだったからか……。 れいむにお金を稼ぐことの厳しさは刻み込めたはず。なのに、彼は実にすっきりしない気分を抱いたのだった。 おっさんと呼ばれた男が去った後も、一人と一匹は通行人に声をかけ続けた。 コンビニのレジと似たようなもので、誰かが並ぶと連鎖的にそこに人は集まるものだ。日本人特有の性質と言っていい。 現に先程までのやり取りを遠巻きに見ていたと思われる人々が、少しずつ『相談』に乗ってき始めた。 「あんの馬鹿男がっ!よくも私を捨てやがって……!5回死んどけぇえええ!!」 「ゆべばらぁっ!?」 彼氏の浮気の八つ当たりとして『相談』を持ってきたヒステリックなOL。 「糞先公め!俺じゃあ第一志望は無理だあ!?決め付けてんじゃねえよ!見てろよ、ぜってえ受かってやるからなぁあああ!!」 「ぷろぱぁっ!?」 志望校合格の宣誓をする為に『相談』しにきた高校生。 「ううっ……。自分は高いランチとか食べてる癖に、僕の小遣いはこれっぽっちとか……。千円ぐらい上げてくれたっていいじゃないかぁあああ!!」 「びゅぼぁっ!?」 自分のお小遣い事情についての不満を泣きながら『相談』するサラリーマン。 「いくぞ、兄ぃっ!」 「おうよ、弟ぅっ!」 「俺と!!」 「お前の!!」 「「コンビネーションブロォオオオオオッ!!!」」 「ぶぷふぅっ!?」 「「弾けて消えてしまえっ!!」」 必殺技っぽい何かの練習台として『相談』を求めてきた暑苦しい兄弟。 「何かてめーを見てるだけでムカつくんだよっ!!」 「ゆぎゃぶっ!?」 中々に理不尽な理由で『相談』してくる中年。 「第一打ぁあああっ!」 「ゆぷっ!」 「第二打ぁあああっ!」 「ひゅばびっ!?」 「第さ、ヒャアッ!もう我慢出来ない!チマチマやるのは性に合わねえ!!ゆっくりは地獄の十六連打だぜヒャッハ―ッ!!!」 「ゆぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!?」 「フィイイイイイニッシャアアアアアッ!!!」 「ゆびゃっぽわがっ!?」 もはや趣味的な意味で『相談』にやって来たモヒカン男。 青年もれいむも想像していなかった程の繁盛振りだった。 青年としては嬉しい誤算な上、最初の男の後みたいな気分を味わうことはなかった。ただ、客の大多数が終わった後にれいむに感謝することだけは何となく癪に思った。 当のれいむとしては痛い思いと回復の繰り返しで実にゆっくり出来ない。が、我が子のゆっくりの為と思えば我慢をすることは出来たし、客の感謝の言葉には少しゆっくり出来た。 れいむはお悩み『相談』はその後も続いた。青年の心とれいむの身体を削りながら……。 「まいどありー」 「すっきりー!ありがとうな、れいむー♪」 「ゆ、ゆっくりまたそうっだんにきてね……」 『お仕事』を始めて二時間弱が経った頃、遂にオレンジジュースが切れてしまった。 オレンジジュースが切れてしまっては続けようもないので、自然とさっきまでの客が最後となった。 「いやー、提案した俺が言うのもなんだけど、よく耐えたな。お疲れさん」 「すごく、ゆっくりはできなかったよ……」 「だろうなあ。これでゆっくり出来たらお前はドMだよ」 実はこんなシチュエーションが大好物なゆっくりもいるのだが、青年は知らない上にどうでもよかった。 今はただ、目の前にある現金を勘定することが大切なのだ。 「一、二、三……」 お金の大半は硬貨が占めており長期戦は必至である。 が、それだけお金がいっぱいあるという事なので、青年はむしろ沢山あれという気持ちで勘定に挑んでいる。 ゆっくりであるれいむは数字の概念をほとんど理解していない為、幾ら稼げたのか緊張した面持ちで青年を見つめ続けた。 「……」 「……」 両者無言。音は周りの雑踏と、紙幣を終え続いて硬貨を積み上げる音だけ。そして、 「……終わった」 「……!」 青年の言葉に視線を強めるれいむ。そこには自分が幾ら稼げたのかという不安と期待が同居している。 その目を見据えながら、青年はその金額を告げる。 「一万七千五百円」 「ゆ?」 「一万七千五百円だ」 「それって、たっくさん?」 「まあ、たっくさんだな」 「……っ!ゆ、ゆぅうううう!やったよ!おかあさんはきゃっしゅさんをたっくさんかせいだよぉおおおおお!!」 一気に喜びを爆発させたれいむだが、喜びたいのは青年も一緒だった。 まさかこれ程に稼げるとは思わなかった。短時間で、しかもゆっくりを使っての商売でこの大金だ。嬉しくないはずがない。 後はこのお金を持って帰るだけである。しかし、一時とは言え『お仕事』のパートナーだったれいむに何の礼も言わないのは気が引けた。 だから、彼は最期にれいむに礼をすることにした。この選択が、後の彼の人生を大きく変えるとは思いもせずに……。 「ありがとうな。お前のお陰でこんなに稼げたよ」 「おれいをいいたいのはれいむのほうだよ!おにいさん、ありがとう!!」 「え?」 男は悪意満々の感謝の言葉を口にしたが、まさか基本的に自分本位のゆっくりから感謝されるとは思っていなかった。 頭に疑問符を飛ばす青年だったが、こういう所はゆっくりらしく彼のことなど気にせず話し続ける。 「れいむはね、うれしかったんだよ!にんげんさんとおはなしできたことやおしごとできたことが!」 「いや、お仕事って……」 「たしかにおなやみそうっだんはすっごくいたくてゆっくりできなかったよ!」 「だろ?だから……」 「でもね?にんげんさんがれいむにありがとうっていってくれたとき、すっごくゆっくりできたんだよ!」 「ゆっくり出来たって……」 「まちがいないよ!おちびちゃんがうまれたときとおなじぐらいゆっくりできたよ!!」 「いや、おかしいだろ……?」 「れいむはにんげんさんはみんなゆっくりがきらいだとおもってたよ!でも、れいむにきゃっしゅさんをくれたし、ありがとうもいってくれたよ!!」 「待て、待ってくれ……」 「それだけじゃないよ!れいむ、おにいさんいがいのにんげんさんとあんなになかよくはなすこともできたんだよ!」 「お願いだから……」 「おにいさんがいなきゃきづけなかったよ!にんげんさんはみんな、おにいさんみたいにやさしいって!!」 「違う、俺は……」 「れいむのおちびちゃんにもきょうのおはなしはしっかりつたえなきゃね!ゆっくりとにんげんさんはなかよくできるって!!」 「違うんだ……」 「おにいさん!れいむとはなしてくれてありがとう!れいむににんげんさんのやさしさをおしえてくれてありがとう!」 「俺は……」 「れいむに、おしごとをおしえてくれてありがとうだよ!おにいさん!!」 青年は言葉が出なかった。いや、喉がキュッと締ってしまい呼吸すら怪しい。 何とか気道を確保しながら、酸欠の様な状態で青年はその場を離れようとする。 「ゆ?おにいさん、だいじょうぶ?ゆゆ?きゃっしゅさんはどこ?ねえ、おにいさん?」 目の前の何処にでもいるような、しかし自己を壊しかねないゆっくりから、一刻も早く逃げる為に。 れいむは困ってしまった。『お仕事』の相方である青年が姿を消してしまった。しかもれいむが稼いだお金を持ってだ。 普通の人や賢いゆっくりなら、れいむは騙されて利用されるだけ利用され捨てられたのんだと思うだろう。だが、 「ゆぅ……。おにいさん、くるしそうだったけどだいじょうぶかな?ゆっくりできてるのかな?」 このれいむはそんな相手を慮る。自分の恩人が苦しそうにしていたのだから、心配するのは当然だという思考で。 「しんっぱいだよ……」 優しい人間を教えてくれた青年は、同じく優しい人間に決まっている。れいむの中では一種の固定観念が出来上がってしまっていた。 れいむは騙されたとも気付けないような悲しいまでに純粋な個体だったのだ。 「ゆっ!そういえば、きゃっしゅさんがなくなっちゃったよ……」 今更ながられいむはその事実を思い出した。 我が子の為、あれだけ痛い思いをして得た物が無くなってしまったのは非常に悲しい。 「こまったけど、せにはらはかえられない!っだよ!」 ここで立ち止まっては今までと一緒だった。しかし、今は違う。れいむはお金を稼ぐ手段を知っているのだ。 優しい人間さんならまた自分にお金を与えてくれる。またありがとうの言葉をくれる。そして、我が子にあまあまを食べさせてあげられる。 それだけでれいむは今からの『お仕事』の辛さなど吹き飛んでしまうと感じられる。 青年の具合が治っていれば良い。そうしたらもう一度会いたい。会って彼に自慢の我が子を紹介するのだ。 そんな小さな幸福の未来を思い浮かべながら、れいむは口を大きく開き、 「にんげんさん!れいむのおなやみそうだんじょがはじ……」 「んな事する必要はねーよ」 「ゆ?」 その商売文句は青年の言葉に遮られた。 「お、おにいさん!からだはだいじょうぶなの!?ゆっくりできてる!?」 「ゆっくり出来てるかは分からんが、大丈夫だ」 「よかったよー……」 「ん、すまん。実はお前に渡す物があってな、それを用意しに行ってたんだ」 「ゆ?れいむに?」 つい先程までとは逆に疑問符を浮かべるれいむ。そして、それを気にせずにビニール袋を漁る青年。 彼がれいむの為に用意した物。それは、 「おら、やるよ」 「ゆ?このいたさんはなーに?」 「ん、分かんないか?チョコだよ○治の」 「ちょこれーとさん?あま、あま……?」 「ああ、お前らで言うとこのあまあまだ」 青年はそうぶっきら棒に言い放つ。 れいむは呆けた顔をして固まっているが、彼は言い訳でもしているかの様に早口で事の詳細を捲し立てる。 「確かにお前は金を稼いだ。それはすげえよ、本気ですごいと俺も思う。 でもな、お前はゆっくりだ。野良ゆっくりじゃあまあま?は金を持ってても手に入らないんだよ。 だからその、何て言うか、その……」 ゆっくり相手だと言うのに口が上手く回らない。ああ、だから俺は面接で落とされたんだなと場違いながらも思ってしまった。 でも、この一言だけはきっと言う。青年はここに来るまでにそう決めていた。 「ありがとう、な」 感謝の言葉。それは相手がゆっくりだとしても言いそびれてはいけない。 「ゆ?どうしておにいさんがありがとうをいうの?れいむはおにいさんになにもしてないよ?」 「いいや、お前はお前が気付かない内にいっぱい俺にしてくれたよ。だから、このありがとうは当然なんだ」 「とうっぜんなの?」 「当っ然だ」 「ゆふふ。へんなおにいさんだね!」 一人と一匹はまるで友人同士であるかの様に親しげに言葉を交わす。 いや、彼らの中には確かに人間とゆっくりという種族間の垣根を越えた友情が形成されていた。 「それじゃあ、あまあまもてにはいったし、れいむはそろそろいくね?おちびちゃんがまってるよ!」 「そうか。気をつけてな、チョコを落としたりするなよ?」 「ゆん!わかってるよ!おにいさんはれいむをしんっらいしてね!」 「ははっ」 しかし、そんな彼らにも当然の様に別れの時は来た。 おそらくはもう二度と会うことは無いだろう。だからこそ、最後は後腐れのないように済ます。 「じゃあな」 「さよならだよ」 別れの言葉は僅か二言。しかし、青年とれいむにはそれで十分だった。 ぽんぽんと跳ねながら去って行ったれいむの姿が路地裏に消えた後、青年はまだその場に立っていた。 しかし、そこには最初には無かった力強さが宿っていた。 「ありがとう……」 れいむが消えていった道、そこに向けて再び感謝の言葉を呟く青年。 本当なら一回や二回の感謝で済むものではない。彼はれいむに救われたのだ。 れいむの言葉が無ければ、彼は自分の行いに何の罪悪感も感じられなかった。 れいむの言葉が無ければ、彼は畜生道を歩んでいたかもしれない。 れいむの言葉が無ければ、彼は人生に生き甲斐を得ることはなかった。 はっきり言えば、青年はれいむに嫉妬していた。 騙されているというのにそれに気付きもせずに声を張り上げ、ゆっくり出来ないだろうにゆっくり出来ると言い、最後は彼に感謝までしてきた。 青年は理解したのだ。自分はれいむの前向きさ、その心意気に劣等感を感じていたのだと。 あの金はれいむが自力で、身体を張って稼いだお金だった。無産市民の自分とは違う。 そして、その金に手を付けた時、彼は完全完璧なまでにれいむに負けると悟った。 次に湧き上がったのは涙、ではなく枯れたはずの反骨心だった。いくら相手がれいむとはいえ、ゆっくりに負けることはさすがの彼も許容しかねた。 れいむの稼いだお金、これははっきり言ってれいむの様な野良が持っていては危険を招くだけだ。れいむには悪いが、全て募金に回すことにした。 だから、彼はれいむの為のチョコを買った。自腹で。 それは彼の現時点でのなけなしの反骨心そのものであり、また枯れた感情を呼び覚ましてくれたれいむへの本当の感謝だった。 「ありがとう、れいむ……」 青年はもう一度そう呟き、その場を後にした。 十数年後、青年はゆっくり業界の若き重鎮となる。 彼はれいむと別れた後、猛烈な勢いで勉学を修め、この業界に入った。 彼が唱えた人間とゆっくりの共存は、初めの内は若者の夢見がちな意見と鼻で笑われた。 しかし、彼の熱意とそれに裏付けされた実績が、次第に周りを惹き込んでいった。 今では試験的ながらも、完全に人間とゆっくりが共存している地域も生まれてきている。 彼はゆっくり業界の奇跡などと呼ばれるが、彼自身は満足などしていない。 以前程ではないとはいえ、ゆっくり、特に野良への風当たりは未だ強い。彼の理想は全ての人間とゆっくりの共存である。 その理想が叶う日まで、彼が歩みを止めることはない。 「私がゆっくりとの共存を理想とする理由?ふむ、それはあるゆっくりれいむとの出会いがきっかけでね……」 全てはあのれいむに負けたくないという未だ消えぬ思いと、れいむの理想を叶えたいという一心故に。 後書き どうも、蜜柑あきです。前の投稿から結構間が空きましたが、何とか書き終えました。レポートさんは、ゆっくりできない……。 前作があんまりだったので私なりに気合い入れて書いてみたら、最初は20KB以内に収めるつもりだったのがどうしたことか倍近くに……。 久し振りのれいむメイン作品でしたが、自分で書いててれいむが可哀想に思えました。でも、こういうお馬鹿なゆっくりなら私は飼ってみたい。 次回はいただいたネタを書きたいなー、と思っています。ではでは。 P.S. 前回に引き続き、anko3065『まりさのお家』の挿絵を描いていただき、ありがとうございました。 書いたものはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3404.html ご意見・感想はこちら http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1304737576/l50 おまけ:その後のれいむ 「おちびちゃん!ゆっくりただいま!」 「ゆゆっ!おきゃーしゃんゆっくちおきゃえ、どおしちゃのしょのおきゃおはぁあああ!?」 野良れいむはまだ身体の芯に残る痛みを我慢しながら、戦利品である明○の板チョコを持って我が子である赤れいむの待つ家に帰った。 幾分腫れ上がった身体を心配されるも、どうということでもないとばかりにれいむは我が子へ朗報を告げる。 「しんぱいしないでね、おちびちゃん!おかあさんはおしごとをがんばったんだよ!すっごくゆっくりできなかったけど、がんばってあまあまをてにいれたんだよ!」 「ゆーっ、あみゃあみゃ!?ちゃべちゃい!れいみゅいみゃしゅぐちゃべちゃいよ!!」 野良ゆっくりが求めて止まないあまあま。それが手に入ったというのだから、赤れいむのテンションは跳ね上がった。 「ゆふふ。おちびちゃんのげんきがでて、おかあさんほんとうにうれしいよ!じゃあゆっくりしないであまあまをたべようね!!」 「ゆわーい!あみゃあみゃ!あみゃあみゃー!!」 今まで碌にゆっくりさせてあげられなかった我が子の喜ぶ姿に、涙を流し、心の中で青年に感謝するれいむ。 赤れいむはそんな親の機微になど気付くはずもなく、ただ目の前にあるあまあまの味に期待を注ぐのだった。 「まってねおちびちゃん!……ゆ?なんなのこのかみさんは?」 「ゆー?おきゃあしゃん、れいみゅはやくあみゃあみゃちゃべちゃいよ!」 「ゆっゆっ!ちょ、ちょっとまってねおちびちゃん!ゆぐっ、ゆんぐーっ!!」 しかし、問題が起きてしまった。チョコレートを包む紙、それが取れないのだ。 元々は人間を対象としたお菓子なのだから、手足を持たないゆっくりに取ってみろというのは酷な話である。 不審がる我が子に対して、大丈夫だと言う様に奮闘するが、包み紙が取れる気配は無い。 「にゃにをゆっくりやっちぇるのおきゃあしゃん!?れいみゅはゆっくりしないであみゃあみゃがちゃべちゃいっちぇいっちぇりゅでしょー!?」 「ま、まってね!すぐにたべれるからね!?ゆぐーっ!かみさんはゆっくりしないでやぶけてねぇえええっ!!」 段々と不穏な空気が漂い始めるれいむ親子。しかし、ゆっくりの世界では特に珍しいことでもない。そして、 「あまあまをもちかえったっていうれいむのいえはここなのかぜぇえええ!?」 「いますぐあまあまをちぇんによこすんだよー!わかれよー!!」 「けんじゃなぱちぇはずのうろうどうがしごとだからとうっぶんがひつようなのよ!そのあまあまをわたしなさい!」 「みょんだってつかれたからだにはあまあまがひつようだみょん!ぱちゅりーはうせるみょん!」 「むほぉおおおおおっ!がらなちょこさんはどこなのぉおおおお!?はやくありすにけんじょうなさぁあああい!!」 「ゆんやーっ!?れいぱーだぁああああっ!!」 「はぁああああっ!?すべてのあまあまはすべからくでいぶのものでしょおおおおお!?むちなげすどもはゆっくりしないでしんでねぇええええ!!」 「じゃまだぁあああ!くそでいぶはさっさとうんうんしておうちでねてるがいいのぜぇえええーっ!!」 運良くあまあまを手に入れても、それを他ゆんから奪われることもまた然り。 如何なる風の噂があったのか、いつの間にかれいむ親子の家の前には野良ゆっくりが大挙していた。 「「「「「「「「あまあまよこぜぇええええええぇええええええぇええええええぇえええええーっ!!!!!」」」」」」」」 「「ゆんやぁああああああああぁああああああぁあああああ!?」」 たった一個の板チョコをめぐって醜い争いが始まり、繁華街の野良ゆっくりの数は激減した。 そして、どの野良ゆっくりもが渇望したあまあまは、多くのゆっくりに踏み砕かれ、何者の口に入ることなく路上のシミへと姿を変えたのだった……。 「お、にい、さん……」
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そこまでハードな虐待では無い筈・・・ 処女作ですので読みにくい点は多いかもしれませんが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 『赤ちゃんれいむとすりすり』 「ゆっくり~♪ゆっくりしたこになってね~♪」 でっぷりした体を揺らしながら、笑顔で体を揺らすゆっくりれいむ。 最近俺の家の縁の下に住み着いたゆっくりである。 どうやら動物型のにんっしんっをしているらしく、のそのそとしか体動かせない様だ。 一緒に「すっきりー!」した相手は居らず、1匹だけ。 でっぷりの体ではろくにエサは取れないし、外敵からも身を守るのは難しい。 そのため外敵から身を守るのに縁の下は適した場所と判断したのだろう。 俺はこのゆっくりを追い出そうとも駆除しようともしない。 勝手に家のほうに上がってお得意の「おうち宣言」をする訳じゃないし、 「おかしをちょうだいね」やら「おやさいをよこしてね」等不快な台詞も吐かない。 それどころかにんっしんっ中の栄養を確保するべく、庭の雑草を食べてくれる。 ゆっくりれいむ自身は、ここが人間の住処という事は解っているらしいが 人間の恐ろしさを知っているのか俺と関わろうとはしなかった。 おなかの赤ちゃんを守る為でもあるのだろう。 たまに聞こえる声は鬱陶しいが、とりあえずは追い払うことはしなかった。 そんなれいむがのそのそと動き始め、独り言を言い始めた。 「あかちゃんのためにまたえいようをとるよ!」 「にがいくさでもがんばってたべるから、いいこにそだってね!」 そう言い終えるといつもの様に雑草を食べ始める。 ゆっくりは雑食とはいえ、雑草ばかりを食べるのは辛いらしいが 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」「う゛・・・あかちゃんのためなら・・・しあわせー・・・!」 などと言いながら涙目で賢明にほお張っている。 このゆっくりが来る前に比べると大分雑草は減った。ありがたい。 にんっしんっゆっくりが縁の下に住み着いて十日ほど経った時、その時はやってきた。 いつものように雑草を食べ終えて木陰で休むれいむに激痛が走る。 「ゆぅっ!!うまれるぅぅぅぅぅ!!」 めりめりと下腹部(?)から赤ちゃんが顔を覗かせる 「ゆうううううう!ゆ゛ぎぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!」 「はやぐででぎでぇぇぇぇ!!ゆぐうううう!!!」 「ゆ゛っゆ゛っぶふー!!ゆ゛っゆ゛っぶふー!!」 「ゆ゛ぎゃがががあああああおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・・・!!!」 メリ・・・メリメリ・・・ポーン! 勢い良く飛び出してきた赤ちゃんれいむ。その勢いのままぺしっと地面に落ちた。 「ゆ・・・ゆ・・・ゆっくちちていってね!」 産声にあたる誕生の挨拶をあげた。自然と顔がほころぶお母さんれいむ。 「ゆっくりしていってね!!!おかあさんだよ!!!」 これ以降痛みはこない。どうやら身篭ったのは1匹だけのようだった。 「おかーしゃん、ゆっくちちようね!」 「ゆぅぅぅ・・・かわいいあかちゃんだよぉぉ」 すりすりすりすり・・・ お母さんれいむが赤ちゃんにほお擦りをする。ゆっくりの間の愛情表現らしい。 ほお擦りされている赤ちゃんもきもちよさそうだ。 すりすりすりすり・・・ 「ゆっ♪くちゅぐったいけどきもちいい♪おかーしゃんだいちゅき!」 そんな様子を見て俺はある事を思いついた。 早速準備に取り掛かる。 俺はお母さん用の桃一つと、赤ちゃん用の切り分けた桃を用意して2匹に近づいた。 人間の近づく音に気づいたお母さんれいむは、とっさに赤ちゃんを体の後ろに隠し身構えた。 「ゆっ?にんげんがなんのよう?れいむはわるいことしてないよ?だからゆっくりはなれてね!」 「いや、今君が赤ちゃんを産んだのを見かけてね。おめでとう!」 「ゆ!ありがとう!とってもゆっくりしたいいこだよ!でもこわいにんげんにはみせてあげないよ!!」 「そう言うなよ。君は赤ちゃんを産むためにここらの草を沢山食べてくれただろう? あの草は人間にとってゆっくり出来ないものなんだ。それを沢山食べてくれたから嬉しくてね。 だからそのお礼とお祝いをかねて桃を持ってきたんだよ」 そう言いつつ用意した桃を目の前に置いた。 その匂いに釣られてふらふらとお母さんの後ろから赤ちゃんが現れる。 「ゆっ?いいにおいがしゅるよ!ももってなぁに?ゆっくちできる?!」 「ゆ!あかちゃんでてきちゃだめだよ!!にんげんはゆっくりできないよ!!」 「でもおなかしゅいたよ!!あれたべたいよ!!」 ゆーんゆーん、と泣き出してしまった赤ちゃんれいむ。お母さんは困っている。 「人間が怖いなら、お兄さんはもう行くよ。桃は置いて行くからゆっくり食べて行ってね!」 俺はそういってその場を後にし、家に入った。家の中から様子を伺う。 「ゆ!にんげんがいったよ!!あかちゃん、このももをたべようね!!」 「たべていいの?おかーしゃん」 「“おいわい”で“おれい”っていってたよ!あのにんげんはおかあさんのためにこれをくれたんだよ! だからきっとたべてだいじょうぶだよ!!」 「ゆゆっ!おかあしゃんしゅごーい!!」 そうして、お母さんは桃にかじりつき、赤ちゃんは食べやすい切り分けた桃にしゃぶりついた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー☆☆☆」 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわしぇー☆」 お母さんれいむは最近雑草ばかり食べていた。久々のまともな食事、それも甘い桃。自然と涙を流していた。 赤ちゃんれいむは生まれて初めて食べたたべもの。“もも”の美味しさに感動した。 「おかーしゃん!もっとたべたい!にんげんのところにいこうよ!」 「だめだよ!!にんげんはこわいんだよ!!さっきはおかあさんのおかげでおいしいものがもらえたけど ふだんはそうはいかないよ!!」 「ゆぅ・・・“もも”おいちかったなぁ・・・」 食べ終えて3分もすると二匹は寝息を立てていた。 あの桃にはゆっくり睡眠薬を仕込んでおいたのだ。 お母さんの方には強力な、ゆっくり去勢手術で使うようなもので、ちょっとやそっとじゃ目を覚まさない。 赤ちゃんの方には軽いもので、睡眠を導入する程度のものである。 ゆぅゆぅと寝息を立てる2匹に近づき、母親の方を持ち上げると、家のほうに持ってきた。 「さてと…始めますか!」 おれはまずゆっくりの両頬を餡子が見えない程度にそぎ落とした。 そこにガラス片や釘、とがった石などをはりつける。 その頬を水で溶いた小麦粉で覆い、形を元通りにして完成。そこで睡眠薬の拮抗剤を打っておいた。 小麦粉が乾いて定着するまでまだ少しかかるが、この薬は強力、まだしばらく起きないだろう。 30分程の作業を終えて外を見ると、もう赤ちゃんれいむは目を覚ましていた。 涙目できょろきょろとあたりを見回している。あ、大泣きし始めた。 俺は驚かさないように近づき、そっと声をかけた。 「どうしたんだい?大きな声で泣いて」 「ゆわぁぁぁぁぁん!!おかーしゃんがいにゃくなっちゃったぁぁぁぁ!!ゆえぇぇん!!」 甲高い声で泣き声をあげる赤ちゃんれいむ。野生だったら死んでるぞ。 「きみのお母さんはお兄さんの家でゆっくりしてるよ。だから君もおいで」 「ゆえええ…。ゆっ?おかーしゃん、いるの!?ちゅれってってぇぇぇ。ゆえぇぇん!」 随分と泣き虫なゆっくりだな・・・。そんなことを考えながら掌に乗せ、家の方へ向かう。 程なくして寝息を立てるお母さんが目に入ったようだ。お母さんはまだ目を覚ましていない。 「ゆぅ!おかーしゃん、いたぁ!ゆえぇぇぇぇん!!よかっちゃよう!!ゆぇぇぇぇぇん!!」 また泣くし。そんな赤ちゃんれいむをあやしつつ、桃を食べさせてあげた。 さっきの桃がよほど気に入っていたのかゆっくりらしからぬ反応で桃にしゃぶりついてきた。 ちあわせー☆、と声を上げる頃にはすっかり泣き止んでくれたようだ。 桃を食べさせてくれた事と、母親のところに連れてきた事で、あかちゃんはすっかり俺に懐いた様だ。 「もものおじちゃん!ありがちょう!ゆっくちできるよ☆」 「落ち着いたみたいだね、お母さんにも会えたし、よかったね!」 「うん!!もものおじちゃん!!おかーしゃんはにんげんはこわいっていってたけど、ゆっくりできるんだね!!」 笑顔で足元に寄ってきてこちらを見上げている。 そんな赤ちゃんを持ち上げて、俺の顔に近づける。 すりすりすりすり・・・すりすりすりすり・・・ 「ゆ♪もものおじちゃんのすりすりきもちいい♪」 すりすりすりすり・・・すりすりすりすり・・・ きゃっきゃと声をあげて喜ぶ赤ちゃんれいむ。 俺が赤ちゃんれいむと戯れていると、お母さんれいむが目を覚ましてきた。 俺を見るや否や、赤ちゃんにほお擦りをしている様子を見て思わず声を荒げるお母さん。 「あかちゃんからはなれてね!!きやすくすりすりしないでね!!!」 そんなお母さんの声に気づいたのか、赤ちゃんは下を見てぱぁっと笑顔を見せる。 「おかーしゃん!このおじちゃんはいいにんげんだよ!ゆっくちできるよ!すりすりきもちいよ!」 「だめだよ!にんげんはあぶないんだよ!」 「ほらせっかくお母さんが起きたんだからお母さんのところへ行ってあげなさい。」 そういって赤ちゃんれいむを下ろしてあげると、ゆっくりなりの急ぎ方でお母さんが近づく。 人間と楽しそうにしているのがよほど気に入らなかったのか、その場で赤ちゃんにほお擦りを始めた。 すりすりすりすり・・・ずりッ! 「ゆきゃぁぁぁぁぁ!やめちぇぇぇぇぇ!!おかーしゃんすりすりしにゃいでぇぇぇぇ!!」 そんな悲鳴を上げる赤ちゃん。 お母さんは何が起こってるのかわからず、困惑している。 すりすりずりッ!すりずりッ!ずりッ! 「どうしてそんなこというの!?おかあさんのすりすりはにんげんのよりきもちいいんだよ!!」 「やべちぇぇぇぇぇ!!あんごがもれぢゃうぅぅぅ!!」 その悲鳴にハッとしてとっさに赤ちゃんを見る。 そこには頬が削れて涙を流して痛みにもがく赤ちゃんの姿があった。餡子もすこし漏れている。 「どうしてぇぇぇ?!なんであかちゃんがきずついてるのぉぉぉ!?」 「もものおじちゃんたしゅけてぇぇぇぇ!ゆえぇぇぇぇん!!」 何が起こったのか解らず悲鳴のような叫び声を上げるお母さんれいむ。 赤ちゃんれいむは泣きながらこちらに寄ってきた。おれは餡子が漏れないように拾ってやる。 さっきのお母さんにつかった小麦粉の余りを塗って、無傷の側の頬へすりすりしてやった。 すりすりすりすり・・・ 「やべろぉぉぉ!!あがぢゃんにずりずりずるなぁぁぁぁ!!おがあざんがずりずりずるんだぁぁぁ!!」 「ゆ!おかーしゃんのすりすりはやだよ!!ごりごりでとげとげでいたいよ!! れいみゅをきずつけるようなおかーしゃんなんてきらい!!ゆぇぇぇぇん!!」 「どぼじでぞんなごどいうのお゛お゛お゛お゛!!」 苦い雑草で何とか栄養をつけて、苦労して生んだわが子に罵声を浴びせられる。 お母さんれいむは精神的にかなりのショックを受けたようだ。さっきからしゃがれた声で叫んでいる。 「ゆ゛っ!?ぞうだ!!ぎっどにんげんのぜいでおがあざんがずりずりじであがぢゃんがきずづいだんだ!! やっばりにんげんはゆっぐりでぎないね!!ばがなにんげんはどっどどあがぢゃんをはなじでゆっぐりじねぇ!!」 とっさに人間に責任転嫁するお母さんれいむ。いや大正解ですけど。 でも何も知らない赤ちゃんが止めの一言を放った。 「もものおじちゃんはゆっくちさせてくれるよ!!“もも”をくれりゅよ!!すりすりもきもちいよ!! おかーしゃんはもものおじちゃんに“しっと”ちてるんだよ!! だからにんげんがこわいなんていううそもついてただね!! ゆっくりできないごつごついがいがのおかーしゃんなんていらにゃいっ!!ちねっ!!」 その一言に相当ショックを受けたのか白目をむきゆっゆっ、と痙攣しだした。 俺は小刻みに震えるお母さんれいむを掴み上げ、家の外の木に叩きつけるように投げた。 ぐしゃっと音がし。たぶん即死だろう。 「もものおじちゃん!こわかったよう!たしゅけてくれてありがちょう!」 そんな言葉を聞いて俺はまた赤ちゃんれいむを顔に近づけた。 すりすりすりすり・・・ 「ゆっ!やっぱりすりすりきもちいよ♪」 すりすりすりすり・・・ 「これからはもものおじちゃんとゆっくちするよ!」 すりすりすりすり・・・ 「もものおじちゃん、だいちゅき♪」 すりすりすりすり・・・がぶり 「ゆ゛っ!?」 このSSに感想を付ける
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『むささびれいむ』 傾斜が厳しく高い木が並び立つ地域にそのゆっくりは居た。 「すごい!まるでおそらをとんでるみたい!!!」 赤いリボンを大きく広げて風を受け、空より舞い降りるゆっくりれいむ。 しかしこのれいむは、通常のれいむとはシルエットが大きく違う。 このれいむのリボンは一回り大きく、後ろ頭を隠すほど大きかった。 今日は地上に降りて、持ちの良い木の実を集めているようだ。 「ひゅっふひはふへふぁほ!!!」(ゆっくりあつめたよ!!!) 口に一杯の木の実を集めると、すぐ近くにそびえ立つ高い木に近づき 「ひゅっほ!!」 なんとゆっくりが木を駆け上っていくでは無いか。 この地方のゆっくりれいむは独自の進化を遂げていた。 身体が全体的に、通常のゆっくりよりも粘着力の高い餅肌になっており、 そのくっつく力を利用して、木にくっついては飛びくっついては飛びを繰り返し、高くへと上っていくのだ。 そしてある程度の高さに生えたしっかりした枝に乗ると 「ひゅっほひほらぼほぶびょ!!!」(ゆっくりそらをとぶよ!!!) 周りを確認した後、頭を下にした状態で大きなリボンに風を受け飛び立つ。 「ひゅぼひ!ふぁるへふぉほはほほんふぇふゅふぃふぁひ!!!」 (すごい!まるでおそらをとんでるみたい!!!) 別にいつも飛んでいるのだが、 まるで初めての飛行に感動するかのようにこの言葉を放つ。 しかし、実はこのセリフには重要な意味がある。 ほかのれいむに対し警告する合図である。 滑空であるゆえ、旋回はできる物の高度を変える事は出来ない。 しかも回りは背の高い木々が何本もたった場所。 もし他の飛んでいるれいむとニアミスでも起そうものなら、それは即激突死である。 それを避ける為、たとえ食物を口に入れ持ち帰る途中であろうとも 先程のセリフで、周りに自分が飛んでいることをアピールするのだ。 あるとても太く巨大な木の上。大きく開けた樹穴のなか、 存分にゆっくりするには少し狭いものの、中では赤ちゃんゆっくりがゆっくりしていた。 先程のれいむの子供であろう。 やはり、他のちびゆっくりれいむに比べてリボンが大きい。 「ひゅっひゅふぃふぃふぇいっふぇへ!!!」(ゆっくりしていってね!!!) そこに、大きなリボンのれいむが帰ってきた。 「ゅ!おかーしゃんかえっちぇきたょ!!」 「「「ゆ~♪!!おかーしゃ~ん!!」」」 大きなリボンのれいむは即座に、口にためていた木の実をテーブル代わりの 大きな葉っぱに吐き出し、子供たちに与える。 こうやって、飛べる程の大きさになるまで子供たちに食事を与え続け、 もう少し大きくなり、リボンが風を受けれるようになって初めて 親子で狩りに出かけるのだ。 食べ終り、日が落ち始めると皆で夕日を眺めゆっくりする。 「ゆ~!もう少し大きくなったら、みんなでおそらをとぼうね!! そしたら、とってもすごくゆっくりできるよ!!!」 「「「「しゅごきゅゆっきゅちできるにぇ!!!」」」」 仲良く家の中に戻っていくれいむ達。 大きなリボンに風を受け空を舞う彼女の姿はまるで、むささびの様だった。 即興の人 頬袋が可愛いです -- 名無しさん (2009-08-29 11 56 50) かわいいいいい -- 名無しさん (2009-09-05 18 09 54) 名前 コメント
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ゲバ アナーキーインザゆっくり ~ゆっくり闘争っていってね!!!~ パンクとは全く関係有りません。ごめんね 最近この村のゆっくり共に変化が現れた。 普通ゆっくりはそれぞれが勝手な行動を取るだけだが、この頃は何らかの統率が見て取れる。 おそらく強力なリーダーを持った群れが出来たに違いない。 人間の被害が拡大する前に、何とか群れを崩さねばならないだろう。 「ゆっくりしていってね!!!!」 群れを壊滅させる方法を皆で練っていた最中に大音声が鳴り響いた。 この大声、普通のゆっくりの物ではない。皆がその声のした方向を見ると、そこにはこれまで見たこともないような大きなゆっくりが居た。 そこらの木々よりも大きな体に髪に結んだ幾つもの飾り、そのゆっくりはドスまりさと呼ばれるものだった。 突然のことに対処のしようもない我々だったが、ドスまりさには村を襲撃しようなどというつもりはなく、何やら談判しに来ただけのようだった。 知能が高いと評判のこの大饅頭、どうやら人間と対等の関係を結びたいらしい。人里は荒らさぬ、そちらも我々に無用の干渉をするな、とのことだ。 饅頭風情と相互不可侵条約を結ぶなど屈辱も良いところだが、我々の命は今のところこの大饅頭に握られている。こいつが暴れれば留める術を我々は持っていない。 そこで渋々ながらも我々は承諾した。それをこの饅頭は自らの主張が話し合いによって認められたと勘違いして喜んで居る。糞饅頭め。 確かにゆっくりによる被害は減った。初めの内は。 しかし次第に元に戻っていった。我々も作物を盗みに来たゆっくりは容赦なく潰した。ドスとはもともとそう言う取り決めであった。 自らが裏切ったことを都合良く忘却し、あるいは初めから理解して居なかったのか、死の間際までドスに頼りドスの救いを求めながら潰された饅頭も居た。 まあ元々この程度は想定の範囲内であった。しかし、どうしても食料が足りなかったのだ、と泣きながら訴えつつ潰されたものも居た。 もしもこのことが本当だとしたら、なりふり構わぬ奴らはいずれドスまりさの主導の元に、人間の食料を奪いに来ることも考えられる。それだけは阻止せねばならない。 やはり先手を打つべきなのか。 ある日私が道を歩いていると一匹のゆっくりれいむに出くわした。 「ゆっくりしていってね!!!」 ドスのおかげで人間は自分達には危害を加えないとわかっているので、人間に怯えること無くゆっくり本来の反応を見せてくれた。ゆっくり達にとっては良い時代になったものだ。 「ゆっくり・・・か。君は本当にゆっくりできているのか?」 れいむに私は問いかけた。 「ゆっ?れいむはゆっくりできてるよ!!」 当然の反応だ。 「しかし、君よりももっとゆっくりできているゆっくりが居るんじゃないか?」 「ゆゆっ・・・」 黙り込んでしまった。どうやら思い当たるところが有るようだ。 「・・・ドスまりさか?」 「ゆっ!」 れいむは驚いたような表情をしたまま固まってしまった。 「あいつはあの巨体だ。どうせ普段は自分で餌も取れないんだろう。権威を笠に着てふんぞり返ってるだけじゃないのか?」 「ゆゆっ!!そんなことないよ!!ドスまりさはたしかにごはんはとれないけどみんなのためにがんばってるよ!!!」 普通のゆっくりならここで嫉妬に狂っていただろうが、このれいむはマシな部類のようだ。 「本当にがんばってるのか?ただ体がデカいだけで誰も逆らえないんじゃないのか?」 「特別扱いを受けてる奴らは居ないか?あいつに取り入ろうとしてる奴らは居ないのか?」 「結局アイツは自分が良い思いをしたいが為にお前達を利用してるんじゃないのか?」 「ゆぐぐうぅ・・・」 畳みかけるようにれいむの組織への疑いを煽っていく。 極めつけにこの一言だ。 「あいつが来る前は、お前達はもっとゆっくりできていたんじゃないのか?」 「ゆっ!!」 れいむの脳裏に過去の記憶が蘇った。 確かにあのころはみんなゆっくりしていた。 好きなときに食べ、自由な時間を過ごし、愛し合っていたのだ。 それが今はどうだ。 群れのため、と言う名目で食料は取り上げられ、群れのために働かされ、子供も作ることを許されない。 そして自分たちの努力の上に胡座をかく下劣な支配者・・・・ 「ゆっっぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 餡子の涙を流しれいむは怒った。ドスまりさに、側近達に、そして疑いもなく奴らを信じた自分に。 「おにいざん!!あいづらをなんどがじだい!!」 なんとかして、ではないところにこのゆっくりの気概が感じられる。つくづく良く出来たゆっくりだ。 「ならば奴を殺せ!」 「ゆ゙っ!?」 この答えは予想していなかったらしい。 「何を躊躇うことがある。奴を殺せば皆がゆっくりできる。それに、あんな奴を生かして置いてもまたどこかで同じ事をするさ」 「でも・・・れいむじゃドスまりさにはかてないよ!!」 「私が勝てるようにしてやる!奴を倒したければ私の所に来い!」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりついていくね!!」 瞳に強い意志を込めれいむは頷いた。 仕込みは完了。賢いゆっくりに会えてよかった。馬鹿なゆっくりはこんな話理解することも出来ないだろう。 程なくして家に着いた。 れいむを家に入れて待たせ、自分は準備をしに村の武器庫に行った。 帰ってきたとき、れいむは家を荒らすこともなく行儀良くしていた。意志の力はゆっくりでさえも変えるのか。 「待たせたな。これは小さくても必殺の武器だ。これを使えばドスまりさも一発だ。」 れいむに箱のような物を見せる。 「これを使うには強く噛むだけでいい。できるだけドスまりさの近くで使うんだぞ。あいつの側近も巻き込めるだけ巻き込んでおけ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 れいむは勇敢に頷いた。 「・・・れいむ」 「おにいさん!なに!?」 「ここで言ってしまうと君の決心が鈍るかもしれないが、やはり言っておくべきだろう。」 「君は死ぬかも知れない」 「ゆっ・・!でもそんなのはじめからわかってたよ!!それでもれいむはやらなきゃいけないんだよ!!れいむがやらなきゃだれもできないよ!!!」 やはりこのれいむ、私が見込んだだけのことはあるようだ。 「しかし、たとえ君が死んだとしても、後のゆっくり達は君を英雄と認めるだろう。」 「そして、もし君が生きて目的を達成することができたとしたら・・・!」 「ゆゆ・・・!!」 れいむの頬が緩む。英雄として讃えられる自分を想像したのだろう。まあ、戦いに行く者としてはこれくらいで丁度良い。 「よし、行け!!もう会うことも無いだろう!!」 「ゆっ!!おにいさん!!ありがとう!!ぜったいにおにいさんのことはわすれないよ!!!」 れいむは箱を口の中に入れ、家から飛び出していった。 「まあ会う事なんて絶対に無いんだけどね。」 所変わってここはドスまりさの住む洞窟。 「ゆうぅぅぅぅ・・・・」 「むきゅ!どうしたの!?ためいきなんかついて!」 旧友のゆちゅりーがドスをたしなめる。 しかし溜息をつくのも無理はない。群れの状態が極めて芳しくないのだ。 「ごはんはあまりとれないし、みんなはつかれてるし、まりさのなまえをだしてわるさをするやつらもいるし・・・」 「ドスはよわねははかないのよ!いつかみんなわかってくれるわよ!」 「ぱちゅりー・・・」 このままでは群れは自壊してしまう。なんとかしなければならない。いっそ村を襲うか。 しかし、こちらから結んだ条約を勝手に破るのは・・・いや、手段を問うている場合ではない。しかし・・・ れいむは群れの中を飛び跳ね、ドスまりさの元へと進んでいた。 その時、一匹のまりさがれいむに気付いた。 「れいむ!!どこいってたの!?ふたりでゆっくりするってやくそくしてたよね!?」 れいむはまりさに振り向いて答えた。 「ごめんね!!だいじなだいじなようじができたんだよ!!」 そしてれいむは真剣な表情になって言った。 「このたたかいがおわったら、まりさ、れいむと・・・ううん!なんでもないよ!!!」 最後まで言い切らず、踵を返して跳ねてゆくれいむ。 「ゆゆ!?たたかいってなに!?なにをするきなのれいむ!!?」 問いかけるまりさの声を背に受け、れいむは洞窟へと急いだ。 「ゆっ!?なにしにきたの!?」 護衛のゆっくりたちが洞窟の入り口を塞ぐ。 「ドスまりさにようがあるよ!!ゆっくりとおしてね!!」 「だめだよ!ドスまりさはきょうはだれともあわないよ!!」 このまま問答を続けても仕方がない。 「もういいよ!!れいむはいくよ!!」 れいむは強引にゆっくり達を押しのけ、洞窟の中に入っていった。 「れいむがはいっていったよ!!!」「ゆっくりつかまえてね!!!」 何匹ものゆっくり達がれいむを捕らえようと追いすがってくる。 しかし、強い意志に裏打ちされて走るれいむを捕まえられるゆっくりなど居るはずもなかった。 そして、ドスまりさの元へ辿り着いた。 幸運にも奴らは会議中だ!! 「どすまりさああああああぁぁぁぁ!!!」 れいむは絶叫を上げ飛び跳ねる。 辺りに居たゆっくり達は皆驚いた顔でこっちを見た。 「ゆっくりとりおさえてね!!!」 護衛達も追いついて来た。 「ゆっくりしねええええええええぇぇぇぇぇ!!!ぐぶぅ!」 ドスまりさの目の前まで到達した、と思いきや、そのままドスまりさに踏まれてしまった。 「れいむ!どうしてこんなことするの!!?」 厳しい顔で詰問するドスまりさ。 「はんぎゃくしゃだってさ」「おおこわいこわい」 「むきゅううう・・・」 側近達も脅威が去ったと思い、こちらに近づいてきた。 すぐに自分を踏みつぶすよりも、一旦捕らえ、組織への不満を聞き出して対策を行ったり、あるいは反逆者として処刑を行えば、群れの結束を強めるのに利用することも出来るだろう。 この場合、ドスまりさの判断は正しい。 だが、こちらの戦力を把握する前に行動を起こすべきでは無かった。 「かったぞ!!!」 れいむは叫び、必殺の武器を起動させた。 洞窟内に閃光が走り、同時に爆風が吹き荒れ、洞窟を揺らした。 男がれいむに渡したのは、確かに必殺の武器であった。使用者に対しても。 れいむは体内から吹き出す爆風に一瞬で身を四散させた。 れいむの近くに居たゆっくり達は全て粉々に砕けるか吹き飛ばされて岩壁に叩き付けられ、中身を吹き出して絶命した。 護衛のゆっくり達も吹き飛ばされ、満身創痍の状態だ。 「ゆ゙っ!ゆ゙ぼっ!!ど・・どぼじでごん゙なごどに・・・!!!」 ドスまりさは体が二つにちぎれかけるほどの重傷を負ったが、かろうじて意識は残っていた。 そのために見てしまった。岩に張り付いたぱちゅりーの顔を。 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ばぢゅり゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!!!」 体が崩れかけているためにゴボゴボと濁ったその絶叫は、洞窟中に響き渡り、外へと抜けていった。 「ゆゆっ!!!」 洞窟の外にいたゆっくり達も異変に気付き、次々と洞窟の中に入ってきた。 そしてその惨状を見た。 「「「「「「「「「「「「「「「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」 ゆっくり数十匹とドスまりさ一匹の絶叫は、爆発によって崩れかけていた洞窟の天井に最後の一撃を加えるのに十分だった。 ゆっくり達の絶叫はそのまま天井が崩れてくる事に対してのものになり、仲間が潰れ、生き埋めになっていく事に対してのものになり、そして自分の命が失われる事に対してのものになっていった。 ゆっくりの群れはここに壊滅した。 しかし生き残った一部のゆっくり達は、れいむの思惑通りドスまりさが来る以前の状態に戻っていった。 人間に駆除され、動物に食べられ、加工場で加工され、鬼居山に虐待され、AQNに虐殺されるだけの底辺の生物へと。 今回の教訓 中途半端に賢い者は集団にとっての最大の害悪 偉い人の苦労は理解されない(しかし偉い人が苦労しているとも限らないが) 極左思想で一番得をするのはその集団の外部の者 小さくても必殺の武器が必ずしも銃だとは限らない 戦っちゃいけないんだ僕達は 愛など粘膜の作り出した妄想 ゆっくり内部崩壊していってね!!! 多分一番楽なドス駆除法。 あの爆弾はもしれいむがそのままドスまりさに踏み潰されていたとしてもドスの重量でスイッチが入ります。 もしれいむが自爆テロをせずにドス殺害に成功したとしても、理解のない群れのゆっくり達による集団リンチに遭うだけでしょう。 そしてもし英雄として認められたとしても、駆除に来た人間に立ち向かわされて死んだだけでしょう。 つまりれいむは初めからどう見ても詰んでます本当にありがとうございました 餡子クチュクチュの人がお送りしました このSSに感想を付ける
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ゲバ アナーキーインザゆっくり ~ゆっくり闘争っていってね!!!~ パンクとは全く関係有りません。ごめんね 最近この村のゆっくり共に変化が現れた。 普通ゆっくりはそれぞれが勝手な行動を取るだけだが、この頃は何らかの統率が見て取れる。 おそらく強力なリーダーを持った群れが出来たに違いない。 人間の被害が拡大する前に、何とか群れを崩さねばならないだろう。 「ゆっくりしていってね!!!!」 群れを壊滅させる方法を皆で練っていた最中に大音声が鳴り響いた。 この大声、普通のゆっくりの物ではない。皆がその声のした方向を見ると、そこにはこれまで見たこともないような大きなゆっくりが居た。 そこらの木々よりも大きな体に髪に結んだ幾つもの飾り、そのゆっくりはドスまりさと呼ばれるものだった。 突然のことに対処のしようもない我々だったが、ドスまりさには村を襲撃しようなどというつもりはなく、何やら談判しに来ただけのようだった。 知能が高いと評判のこの大饅頭、どうやら人間と対等の関係を結びたいらしい。人里は荒らさぬ、そちらも我々に無用の干渉をするな、とのことだ。 饅頭風情と相互不可侵条約を結ぶなど屈辱も良いところだが、我々の命は今のところこの大饅頭に握られている。こいつが暴れれば留める術を我々は持っていない。 そこで渋々ながらも我々は承諾した。それをこの饅頭は自らの主張が話し合いによって認められたと勘違いして喜んで居る。糞饅頭め。 確かにゆっくりによる被害は減った。初めの内は。 しかし次第に元に戻っていった。我々も作物を盗みに来たゆっくりは容赦なく潰した。ドスとはもともとそう言う取り決めであった。 自らが裏切ったことを都合良く忘却し、あるいは初めから理解して居なかったのか、死の間際までドスに頼りドスの救いを求めながら潰された饅頭も居た。 まあ元々この程度は想定の範囲内であった。しかし、どうしても食料が足りなかったのだ、と泣きながら訴えつつ潰されたものも居た。 もしもこのことが本当だとしたら、なりふり構わぬ奴らはいずれドスまりさの主導の元に、人間の食料を奪いに来ることも考えられる。それだけは阻止せねばならない。 やはり先手を打つべきなのか。 ある日私が道を歩いていると一匹のゆっくりれいむに出くわした。 「ゆっくりしていってね!!!」 ドスのおかげで人間は自分達には危害を加えないとわかっているので、人間に怯えること無くゆっくり本来の反応を見せてくれた。ゆっくり達にとっては良い時代になったものだ。 「ゆっくり・・・か。君は本当にゆっくりできているのか?」 れいむに私は問いかけた。 「ゆっ?れいむはゆっくりできてるよ!!」 当然の反応だ。 「しかし、君よりももっとゆっくりできているゆっくりが居るんじゃないか?」 「ゆゆっ・・・」 黙り込んでしまった。どうやら思い当たるところが有るようだ。 「・・・ドスまりさか?」 「ゆっ!」 れいむは驚いたような表情をしたまま固まってしまった。 「あいつはあの巨体だ。どうせ普段は自分で餌も取れないんだろう。権威を笠に着てふんぞり返ってるだけじゃないのか?」 「ゆゆっ!!そんなことないよ!!ドスまりさはたしかにごはんはとれないけどみんなのためにがんばってるよ!!!」 普通のゆっくりならここで嫉妬に狂っていただろうが、このれいむはマシな部類のようだ。 「本当にがんばってるのか?ただ体がデカいだけで誰も逆らえないんじゃないのか?」 「特別扱いを受けてる奴らは居ないか?あいつに取り入ろうとしてる奴らは居ないのか?」 「結局アイツは自分が良い思いをしたいが為にお前達を利用してるんじゃないのか?」 「ゆぐぐうぅ・・・」 畳みかけるようにれいむの組織への疑いを煽っていく。 極めつけにこの一言だ。 「あいつが来る前は、お前達はもっとゆっくりできていたんじゃないのか?」 「ゆっ!!」 れいむの脳裏に過去の記憶が蘇った。 確かにあのころはみんなゆっくりしていた。 好きなときに食べ、自由な時間を過ごし、愛し合っていたのだ。 それが今はどうだ。 群れのため、と言う名目で食料は取り上げられ、群れのために働かされ、子供も作ることを許されない。 そして自分たちの努力の上に胡座をかく下劣な支配者・・・・ 「ゆっっぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 餡子の涙を流しれいむは怒った。ドスまりさに、側近達に、そして疑いもなく奴らを信じた自分に。 「おにいざん!!あいづらをなんどがじだい!!」 なんとかして、ではないところにこのゆっくりの気概が感じられる。つくづく良く出来たゆっくりだ。 「ならば奴を殺せ!」 「ゆ゙っ!?」 この答えは予想していなかったらしい。 「何を躊躇うことがある。奴を殺せば皆がゆっくりできる。それに、あんな奴を生かして置いてもまたどこかで同じ事をするさ」 「でも・・・れいむじゃドスまりさにはかてないよ!!」 「私が勝てるようにしてやる!奴を倒したければ私の所に来い!」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりついていくね!!」 瞳に強い意志を込めれいむは頷いた。 仕込みは完了。賢いゆっくりに会えてよかった。馬鹿なゆっくりはこんな話理解することも出来ないだろう。 程なくして家に着いた。 れいむを家に入れて待たせ、自分は準備をしに村の武器庫に行った。 帰ってきたとき、れいむは家を荒らすこともなく行儀良くしていた。意志の力はゆっくりでさえも変えるのか。 「待たせたな。これは小さくても必殺の武器だ。これを使えばドスまりさも一発だ。」 れいむに箱のような物を見せる。 「これを使うには強く噛むだけでいい。できるだけドスまりさの近くで使うんだぞ。あいつの側近も巻き込めるだけ巻き込んでおけ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 れいむは勇敢に頷いた。 「・・・れいむ」 「おにいさん!なに!?」 「ここで言ってしまうと君の決心が鈍るかもしれないが、やはり言っておくべきだろう。」 「君は死ぬかも知れない」 「ゆっ・・!でもそんなのはじめからわかってたよ!!それでもれいむはやらなきゃいけないんだよ!!れいむがやらなきゃだれもできないよ!!!」 やはりこのれいむ、私が見込んだだけのことはあるようだ。 「しかし、たとえ君が死んだとしても、後のゆっくり達は君を英雄と認めるだろう。」 「そして、もし君が生きて目的を達成することができたとしたら・・・!」 「ゆゆ・・・!!」 れいむの頬が緩む。英雄として讃えられる自分を想像したのだろう。まあ、戦いに行く者としてはこれくらいで丁度良い。 「よし、行け!!もう会うことも無いだろう!!」 「ゆっ!!おにいさん!!ありがとう!!ぜったいにおにいさんのことはわすれないよ!!!」 れいむは箱を口の中に入れ、家から飛び出していった。 「まあ会う事なんて絶対に無いんだけどね。」 所変わってここはドスまりさの住む洞窟。 「ゆうぅぅぅぅ・・・・」 「むきゅ!どうしたの!?ためいきなんかついて!」 旧友のゆちゅりーがドスをたしなめる。 しかし溜息をつくのも無理はない。群れの状態が極めて芳しくないのだ。 「ごはんはあまりとれないし、みんなはつかれてるし、まりさのなまえをだしてわるさをするやつらもいるし・・・」 「ドスはよわねははかないのよ!いつかみんなわかってくれるわよ!」 「ぱちゅりー・・・」 このままでは群れは自壊してしまう。なんとかしなければならない。いっそ村を襲うか。 しかし、こちらから結んだ条約を勝手に破るのは・・・いや、手段を問うている場合ではない。しかし・・・ れいむは群れの中を飛び跳ね、ドスまりさの元へと進んでいた。 その時、一匹のまりさがれいむに気付いた。 「れいむ!!どこいってたの!?ふたりでゆっくりするってやくそくしてたよね!?」 れいむはまりさに振り向いて答えた。 「ごめんね!!だいじなだいじなようじができたんだよ!!」 そしてれいむは真剣な表情になって言った。 「このたたかいがおわったら、まりさ、れいむと・・・ううん!なんでもないよ!!!」 最後まで言い切らず、踵を返して跳ねてゆくれいむ。 「ゆゆ!?たたかいってなに!?なにをするきなのれいむ!!?」 問いかけるまりさの声を背に受け、れいむは洞窟へと急いだ。 「ゆっ!?なにしにきたの!?」 護衛のゆっくりたちが洞窟の入り口を塞ぐ。 「ドスまりさにようがあるよ!!ゆっくりとおしてね!!」 「だめだよ!ドスまりさはきょうはだれともあわないよ!!」 このまま問答を続けても仕方がない。 「もういいよ!!れいむはいくよ!!」 れいむは強引にゆっくり達を押しのけ、洞窟の中に入っていった。 「れいむがはいっていったよ!!!」「ゆっくりつかまえてね!!!」 何匹ものゆっくり達がれいむを捕らえようと追いすがってくる。 しかし、強い意志に裏打ちされて走るれいむを捕まえられるゆっくりなど居るはずもなかった。 そして、ドスまりさの元へ辿り着いた。 幸運にも奴らは会議中だ!! 「どすまりさああああああぁぁぁぁ!!!」 れいむは絶叫を上げ飛び跳ねる。 辺りに居たゆっくり達は皆驚いた顔でこっちを見た。 「ゆっくりとりおさえてね!!!」 護衛達も追いついて来た。 「ゆっくりしねええええええええぇぇぇぇぇ!!!ぐぶぅ!」 ドスまりさの目の前まで到達した、と思いきや、そのままドスまりさに踏まれてしまった。 「れいむ!どうしてこんなことするの!!?」 厳しい顔で詰問するドスまりさ。 「はんぎゃくしゃだってさ」「おおこわいこわい」 「むきゅううう・・・」 側近達も脅威が去ったと思い、こちらに近づいてきた。 すぐに自分を踏みつぶすよりも、一旦捕らえ、組織への不満を聞き出して対策を行ったり、あるいは反逆者として処刑を行えば、群れの結束を強めるのに利用することも出来るだろう。 この場合、ドスまりさの判断は正しい。 だが、こちらの戦力を把握する前に行動を起こすべきでは無かった。 「かったぞ!!!」 れいむは叫び、必殺の武器を起動させた。 洞窟内に閃光が走り、同時に爆風が吹き荒れ、洞窟を揺らした。 男がれいむに渡したのは、確かに必殺の武器であった。使用者に対しても。 れいむは体内から吹き出す爆風に一瞬で身を四散させた。 れいむの近くに居たゆっくり達は全て粉々に砕けるか吹き飛ばされて岩壁に叩き付けられ、中身を吹き出して絶命した。 護衛のゆっくり達も吹き飛ばされ、満身創痍の状態だ。 「ゆ゙っ!ゆ゙ぼっ!!ど・・どぼじでごん゙なごどに・・・!!!」 ドスまりさは体が二つにちぎれかけるほどの重傷を負ったが、かろうじて意識は残っていた。 そのために見てしまった。岩に張り付いたぱちゅりーの顔を。 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ばぢゅり゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!!!」 体が崩れかけているためにゴボゴボと濁ったその絶叫は、洞窟中に響き渡り、外へと抜けていった。 「ゆゆっ!!!」 洞窟の外にいたゆっくり達も異変に気付き、次々と洞窟の中に入ってきた。 そしてその惨状を見た。 「「「「「「「「「「「「「「「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」 ゆっくり数十匹とドスまりさ一匹の絶叫は、爆発によって崩れかけていた洞窟の天井に最後の一撃を加えるのに十分だった。 ゆっくり達の絶叫はそのまま天井が崩れてくる事に対してのものになり、仲間が潰れ、生き埋めになっていく事に対してのものになり、そして自分の命が失われる事に対してのものになっていった。 ゆっくりの群れはここに壊滅した。 しかし生き残った一部のゆっくり達は、れいむの思惑通りドスまりさが来る以前の状態に戻っていった。 人間に駆除され、動物に食べられ、加工場で加工され、鬼居山に虐待され、AQNに虐殺されるだけの底辺の生物へと。 今回の教訓 中途半端に賢い者は集団にとっての最大の害悪 偉い人の苦労は理解されない(しかし偉い人が苦労しているとも限らないが) 極左思想で一番得をするのはその集団の外部の者 小さくても必殺の武器が必ずしも銃だとは限らない 戦っちゃいけないんだ僕達は 愛など粘膜の作り出した妄想 ゆっくり内部崩壊していってね!!! 多分一番楽なドス駆除法。 あの爆弾はもしれいむがそのままドスまりさに踏み潰されていたとしてもドスの重量でスイッチが入ります。 もしれいむが自爆テロをせずにドス殺害に成功したとしても、理解のない群れのゆっくり達による集団リンチに遭うだけでしょう。 そしてもし英雄として認められたとしても、駆除に来た人間に立ち向かわされて死んだだけでしょう。 つまりれいむは初めからどう見ても詰んでます本当にありがとうございました 餡子クチュクチュの人がお送りしました このSSに感想を付ける
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飼われいむはおちびちゃんが欲しい 27KB 虐待-普通 同族殺し 飼いゆ ぺにまむ 餡子ンペ09出展 ・餡子ンペ出展『改造/失敗作の末路』 ・ゴミ処理場ネタでテーマ『改造』やろうと思ったけど、間に合わないので別ネタ。 「飼われいむはおちびちゃんが欲しい」 D.O ぺにぺに(まむまむ)と言えば、それはゆっくりにとっての生殖器を意味する。 器官としては単純な構造をしていて、外観はただの穴、 ただしゆっくり自身の意思で、体外に男性器のように飛び出させることもできる構造となっている。 体外に飛び出した状態をぺにぺに、体内に収納して穴のままの状態ならまむまむ、と呼ぶ。 ゆっくりの生殖行為は、一方のぺにぺにをもう一方のまむまむに挿入することで成立する。 ぺにぺにを挿入した側が精子餡、と呼ばれる特殊な餡子をまむまむ側に注入し、 精子餡を受け取った側が胎生型、あるいは植物型にんっしんをするのだ。 というわけで、ゆっくりにとって『ぺにぺに』は、子供を作るのに必要不可欠な器官なのである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくちちちぇっちぇにぇ。」 「ああ、これからは俺が飼い主だ。ゆっくりしていけ。」 れいむは今日、ゆっくりショップから買われた飼いゆっくり。 まだまだ生まれて一週間足らずの赤ゆっくりだ。 その表情は純粋で希望に満ち、おリボンにつけられた飼いゆっくり証明の銀バッジも、キラキラと輝いている。 「ゆっくちー。」 れいむは、生まれて翌日には親離れを済ませられ、涙を流す姉妹たちとともに飼いゆっくりとしての教育を受けた。 人間に迷惑をかけないための最低常識、『飼い主さん』と仲良くするとゆっくりできるということ、などなどである。 商品価値の問題もあるので、教育は生後3日程の間にみっちり行われた。 無論ゆっくり的道徳から見れば理不尽な内容も多く、しかも無条件に愛を与えてくれるはずの両親から引き離され、 それが終われば狭く透明なケースの中で、人間さんの品定めする視線にさらされ続けるのである。 ゆっくりショップでの生活は、まったくゆっくりできない日々であった。 「(ゆっくちできにゃいよ・・・。でみょ、れーみゅはかいぬししゃんと、ゆっくちくらしゅよ。)」 その中で支えとなったのは、『飼い主さんと仲良くすると、ゆっくりできる』という教えであった。 愛を与えられない悲しみ、過酷な教育を受ける苦痛。 だが、飼いゆっくりになれば、飼い主さんに迷惑さえかけなければしあわせーな生活が待っているのだ。 れいむはショーケースの中で、ゆっくりした未来を思い描いていた。 温かく安全なおうち、ゆっくりしたじゅうたんやベッドさん、柔らかく甘いゆっくりしたごはん、 恵まれた環境の中でゆっくりと育ったれいむの前に、ある日、とてもゆっくりしたまりさがやってくる。 まりさと瞬く間に恋に落ちたれいむは、情熱的なすっきりーを存分に行うのだ。 れいむの頭上には6匹のゆっくりしたおちびちゃん、れいむとまりさが3匹ずつ。 その後も何不自由ない生活の中で、おちびちゃん達はすくすくと育ち、やがておとなになる。 かつてのおちびちゃん達は、それぞれがとてもゆっくりしたつがいを見つけ、おちびちゃん達を産むだろう。 れいむが生涯を終えるとき、その周囲を飼い主さんと、何千匹もの自分の餡子を継いだ子たちが囲むのだ。 なんてゆっくりしたゆん生だろう。 これでこそ、れいむがゆっくりとして生まれた意味があるというものだ・・・・・・ 「じゃあ、ぺにぺに切ろうか。」 「・・・・・・ゆっ?・・・どうしちぇしょんなこちょいうにょ?」 「どうしてって。子供が出来たら俺がゆっくりできないだろ。俺がゆっくりできないと、お前もゆっくりできなくなる。」 「ゆ・・・おちびちゃん?ゆぴぅ?」 れいむはまだ赤ゆっくり。 人間で言えば2次性徴よりだいぶ前である。 将来おちびちゃんが欲しいとは思っているが、子作りの方法はよくわかっていない。 「ああ、お前子供だからよくわかんねえか。ぺにぺにってのは、無くなると子供が出来なくなるんだ。 お前に子供は必要ないからな。今のうちにぺにぺにを切っとくんだよ。」 なんとなくだが、れいむもぺにぺにの持つ意味を理解できた。 だが、もうひとつ疑問が湧いてくる。 「ゆぅう・・・?おちびちゃんはゆっくちできりゅよ?おにーしゃんもゆっくちできりゅでしょ?」 「俺はできん。勝手に増やされると迷惑なんだよ。じゃあ切るぞ。」 「ゆぁーん!やめちぇぇぇええ!!」 お兄さんは、れいむを左手でつまみあげると、ぷるぷると30秒程度小刻みに揺らしてやる。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆふぅぅぅうううう?」 れいむの顔はすぐに紅潮し、あごの下辺りからつまようじの先程の小さなぺにぺにが飛び出してきた。 そこに爪切りがそっとあてがわれる。 「ゆっくちやめちぇぇぇ!きょわい『ぷちんっ』・・・・・・ゆぴぃぃぃぃぃい!いぢゃいぃぃぃいい!!ぴぅ、ぅ・・」 「あとはこうして生地で傷埋めて・・・と。終わりだ。じゃあ今後もゆっくりしていってくれ。」 「ゆびゅ・・・ぴぅ。れいみゅ・・・・おちびちゃ・・。」 れいむの夢見た未来は、こうしてあっさりと失われたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おーい、れいむー。公園いくぞ。」 「ゆっくりいくよ!ゆっゆーん!」 れいむは施術後、数日はお兄さんに厳しい目を向け、避けてはいたものの、月日を重ねるごとに従順になった。 そうして数ヵ月経って成体となった頃には、食事や遊びの時に、しあわせーできる普通の飼いゆっくりになっていた。 少なくとも表面上は。 れいむは、そこそこ優秀な飼いゆっくりだった。 それはれいむのリボンについた銀バッジからも確かであった。 バッジによる飼いゆっくり登録制度は、一応ガイドラインこそあれど、 事実上各自治体や企業で基準はバラバラと、かなり怪しい制度だ。 とはいえ、飼いゆっくりの質を把握すること、野良と区別すること等では役に立つので、採用され続けている。 ここ、虹浦市では以下のような基準となっている。 『銅バッジ』は、いわゆる飼いゆっくり証明証。 ただし躾等は行われていない。個体によっては優秀かも知れないので、マニアや慣れた調教師は好んで購入する。 『金バッジ』は、優良飼いゆっくり認定証。 人間に迷惑をかけない程度の常識を教育され、かつ人間との生活にストレスをあまり感じないという、 飼いゆっくり向きの性格だと認定された個体を示す。 人間の常識の中でゆっくりが生きると言うのは、野生に近い性格であるほど苦痛なものらしい。 では『銀バッジ』はと言うと、この2つの中間、人間に迷惑をかけない程度の常識を教育されたゆっくりである事を示す。 本来自分勝手で無条件に愛情が注がれることを望む赤ゆっくりが、生後数日で手にするには、 なかなかハードルの高いバッジなのであった。 「ゆーん!それじゃ、おにーさん。れいむはおともだちとあそんでくるよ!」 「あー、俺はココで寝てるから、好きに遊んでこい。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 そんなわけで、れいむは飼いゆっくり生活のため、奪われた未来のことを忘れられないながらも、 人間と折り合いをつけて生きていくことを選んだのであった。 ・・・この日までは。 ここはデパート屋上に造られた、飼いゆっくり向けの施設が充実した室内公園。 公園では飼いゆっくり達が、いくつかのグループに分かれて各々ゆっくりと遊んでいた。 「こーりょこーりょしゅるよ!」 「わきゃるよー。」 「みゅほぉ!きゃわいいまりしゃにぇ!」 「れいぱーに、うんうんしゅるよ!しゅっきりー。」 「ゆぁーん。ありしゅ、ときゃいはにゃにょにー。」 赤ゆっくりや子ゆっくり達は、同世代の友達を作り、清潔な砂場の中で元気に跳ねまわっている。 「ゆゆーん。れいむのおちびちゃん、ゆっくりしてるよー。」 「ありすのおちびちゃんだって、とってもとかいはなのよ。」 「わかるよー。」 「みょん。」 子・赤ゆっくり達の中には、飼いゆっくりの両親から生まれたおちびちゃん達も多い。 そういった親ゆっくり達は、砂場の外でおちびちゃん達の遊ぶ姿を眺めながら、 子育ての苦労、自分のおちびちゃん達の可愛さ自慢などを楽しげに話している。 実は苦労しているのは飼い主の方なので、この親達はおままごとのような子育てを楽しんでいるだけなのだが。 他には少数のアスリートゆっくり達がぺにぺにやぺにぺに以外を鍛えているが、 大部分は先の2グループと、あと1つ、れいむを含めた去勢済みゆっくりのグループが占めていた。 「ゆぅ。おちびちゃんたち、たのしそうだね。」 「ゆっくりしてるわ。とかいはね。」 「うらやましいよー。」 遊ぶと言っても、おちびちゃんではないので飛んだり跳ねたりすることはない。 元々必要が無ければ運動もやりたがらないのがゆっくりなので、 子供もいない成体ゆっくり達が公園でやることと言えば、もっぱら井戸端会議となる。 未去勢のゆっくり達とは別グループ。 仲良くできるはずもない。 「ありすー、そろそろ帰るわよー。」 「ゆっくりわかったわ。おちびちゃん、もうかえりましょう。」 「ゆわーん。ありしゅ、もっとあしょびちゃいわ。」 「わがままいうのはとかいはじゃないわ。ぺーろぺーろ。」 「ゆゆーん、しゅっきりー。ありしゅ、ゆっくちりきゃいしちゃよ!」 「おちびちゃんは、とってもとかいはね!!すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!」 「ほらほら。早く帰りましょ。今日はありすの好きなシュークリームよ。」 「「ゆっくりー!」」 自分達には得られない幸せを存分に味わうゆっくりを、恨めしそうにれいむ達去勢ゆっくりは眺めていた。 「ゆっくりしたおちびちゃん、ほしいねー。」 「むきゅん!ほうほうもなくはないわ。」 「ゆゆっ!?」×40 今日もそんな愚痴をこぼしていた所、これまた去勢済みのぱちゅりーが井戸端会議の輪に入ってきた。 「ゆぅー。またいなかものの、うそつきぱちゅりーがきたわ。」 「むきゅー!せめて『うわさずき』といってほしいわ!」 このぱちゅりーは、この辺りで飼われているゆっくり達の間では、『情報屋(自称)』として知られているけんじゃ(笑)。 噂から冗談、聞きかじりの知識など、あることないこと収集してはばら撒く、 井戸端会議では必須のキャラクターであった。 まあ、嘘つきぱちゅりーは言いすぎだが口が軽いので、秘密は絶対話せないタイプである。 だが、れいむはぱちゅりーの言葉に食いついた。 「そんなことより、れいむたちでもにんっしんするほうほうがあるの!?」 「わからないよー。」 「むきゅん。ぱちゅりーのじょうほうもうから、ゆっくりできないうわさがながれてきたのよ。まぎれもないじじつよ!」 「ゆっくりしないでおしえてね!」 「むきゅー。それじゃあ、このとっておきのじょうほうを、とくべつにおしえてあげるわ!」 「ゆっくりおしえてね!」×120 結局、みんな興味深々だった。 ・・・・・・。 それは、あまりにゆっくりできない方法であった。 多くのおちびちゃん達を生贄に捧げ、決められた手順に沿って儀式を行う。 幼く罪もない多くの命を犠牲にすることで、ぺにまむを失ったゆっくりでもにんっしんできる、というものである。 ただし、犠牲が多すぎること、手順に間違いがあると効果も失われることから、 これまでこの方法が成功した例は無い、という事らしい。 人間が聞けば矛盾だらけのぱちゅりーの話だったが、ゆっくり達は完全に信じた。 とはいえ、信じることと実行しようと考えることは別問題である。 「わ、わからないよー。」 「そ、そうね。よそのこでも、おちびちゃんはおちびちゃんよ。」 「そ、そんなの、ゆっくりできないみょん。」 ゆっくり殺しはゆっくりできない。 ましてそれがおちびちゃんであれば、なおさらであった。 それは、自分のにんっしんと引き換えにするとしても、高すぎる代償であった。 「むきゅーん。でも、このくらいしないと、ぱちゅりーたちはにんっしんできないわ。」 「もういいよー。ますますゆっくりできないよー。わかってねー。」 「むきゅ、そうね。じゃあ、つぎはとってもゆっくりした、ひとりすっきりーのほうほうをはなすわ!」 「ゆゆっ!!」×300 「むきゅー。まずはこんにゃくさんを・・・」 周囲のみんながぱちゅりーの性生活を垣間見ている頃、れいむはただ1匹、考え込むような表情のまま、 井戸端会議の輪から離れていったのであった。 「おちびちゃん・・・れいむのおちびちゃん・・・」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− れいむの子作りへの執念の強さは、人間にも、他の去勢ゆっくりにも理解できないものであった。 それは、れいむ自身の生まれ持った性格もあるが、不幸な偶然の積み重ねも原因であった。 そもそも、れいむが育ったゆっくりショップのゆっくり達は、すっきりー禁止の教育は受けていない。 客の中にはすでに飼っているゆっくりのために、つがいとして買っていく人も多いからだ。 教育内容としては『飼い主さんに逆らわない』だけで、その後すっきりー禁止、あるいは去勢するのは飼い主の自由。 実はゆっくりショップでも去勢済み赤ゆっくりは販売しているが、値段は数割増しだ。 これは、ゆっくりの体だけでなく、心にも傷が残らないように施術する技術料である。 もっとも普及している去勢法は、ゆっくりにとって麻酔となるラムネに発情剤を混ぜて眠らせ、 ギンギンになっているぺにぺにを、眠っている間に切り取ってしまう方法だ。 施術は赤ゆっくりのうちに行う。 これは別に博愛主義的な理由ではなく、ぺにぺにを失ったことによる喪失感やショック(+人間への不信感)を、 極力減らすために行っている処置だ。 ぺにぺにの存在理由もよくわかっていないうちに、しかも気がつけば切除されている、というようにすることで、 別にそんなもの無くてもゆっくりできる、という程度の認識になる。 こうすると、成体になった頃自分に子供が出来ないことは理解しても、あきらめがつく程度のショックで済むのだ。 だが、お兄さんは、何も理解していなかった赤れいむに、わざわざぺにぺにの存在理由を教えてしまった。 しかも、自分の顔を見せないなどの対策もせず、飼い主自身の手でぺにぺにを切り取る瞬間を見せつけてしまったのである。 いっそ銅バッジのゆっくりだったら、露骨に嫌悪感を飼い主に見せただろうから、決着は早く着いたはずであったろう。 お兄さんが仕事に出た後、れいむは庭の生け垣の向こうにいる、一匹の野良まりさに声をかけた。 「ゆぅ、まりさ。てにいれてほしいものがあるよ。」 「ゆっへっへぇ。あまあまさえくれれば、しろいこなさんから、きれいなこいしさんまで、なんでもてにいれてやるのぜぇ。」 野良まりさは、ゆっくり的に言えば非合法な商品を扱う売人である。 白い粉=小麦粉はゆっくりの治療薬(外傷用)だが、吸引すれば麻薬にもなる。 まともな飼い主なら、ゆっくりの手の届かないところに管理する。 きれいな小石は、要するに河原の小石とかだが、これまためったに外に出ない飼いゆっくりだと手に入れにくい。 野良だってそれなりに入手ルートは必要だが、案外飼いゆっくりより自由にモノが仕入れられるのだ。 金バッジ認定されるようなゆっくりでなければ、飼いゆっくりにはストレスをため込む者も多い。 れいむも多くの飼いゆっくり同様、しばしばおやつのお菓子で小麦粉を購入しては憂さを晴らしてきていた。 「ゆぅぅ。きょうはちがうよ。・・・・・・のらのおちびちゃんを、たくさんもってきてほしいんだよ。」 「ゆ、ゆ?・・・ゆふぅ。れいむにもそんなしゅみがあるなんて、まりさもしらなかったのぜぇ。ゆへぇ。」 わずかに冷や汗をかきながら、口の端を釣り上げて、陰気な笑みを見せる野良まりさ。 本心からの笑みでは無いことは、さすがにれいむもわかる。 野良まりさは、れいむが野良のおちびちゃんを使って、れいむ自身の薄暗い欲望を満たすつもりなのだと考えたようだった。 実際、野良まりさの客にはそういう飼いゆっくりも多い。 「おちびちゃんで、なにするのぜぇ?じわじわころすのぜ?すっきりーするのぜ?かんしんしないのぜぇ。」 「ゆぅっ、ゆぅー!ちがうよ!なんでもいいから、はやくもってきてね!」 「・・・しゅるいはなんなのぜ?かみがくろいのぜ?それともきんいろなのぜ?かずもいうのぜ。」 野良まりさの声が機械的なモノに変わる。 完全に商談として、頭を切り替えたようだ。 「・・・・・・れいむのおちびちゃんだけ、うまれたてで、このふくろはんぶんくらいでいいよ。」 れいむは、コンビニの買い物袋をまりさに渡す。 「ゆ゛ぅ。ずいぶんはでにやるのぜ・・・。」 「なんでもいいよ。できるの?」 「・・・・・・・・・まかせるのぜ。あしたのおひるにはもってくるのぜ。おなじりょうのあまあまとこうかんなのぜ。」 「わかったよ。」 まりさはコンビニ袋を口にくわえ、路地裏に消えていった。 そして、れいむは自分が引き返せない道に進みつつあることを感じていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌日の昼には、生まれたてでつやつやぷにぷにな赤れいむ10数匹をコンビニ袋に詰めてやってきた。 「ゆぴぃ。ゆっくちできにゃいよぉ。」 「しぇまいよぉ。ゆっくちさせちぇー。」 「しゅーやしゅーや、ゆぴー、ゆぴー。」 どうやって手に入れてきたかは野良まりさも語らない。 れいむにとってもなんの興味もない事であった。 「・・・さいごまでよくかんがえるのぜ。いまならまにあうのぜ。」 「まりさにはかんけいないよ。」 「・・・・・・だからいってるのぜ。」 まりさは、結局お菓子を受け取ると、れいむの方を振り向くことすらなく路地裏に消えていった。 れいむは、その姿を見届けることもなく、儀式の準備に取り掛かる。 時刻は太陽さんがオレンジ色に輝き始める頃。 庭の真ん中に、自分の体より少し大きく、深さはあごが隠れるくらいの穴を掘る。 「ゆぴぇ!ゆぅーん、おにぇーしゃん、ゆっくちさせちぇにぇ!」 次に、袋の中でもしょもしょと這う赤れいむを1匹とりだす。 そして、先のとがった棒を咥え、 「ゆぅ、おにぇーしゃん、どうしちゃにょ『ぷすり』ゆぴゃぁぁぁあああ!!」 転がした時に横を向いていた可愛いあんよに棒を突きたてた。 「ゆぁーん。どうしちぇしょんなことしゅるにょ『ころころころ、ぽろり』ゆあぁぁあ、おちりゅぅぅぅ。」 あんよに穴を開けた後は、死なせてしまわないようにそっと転がして、穴の中に放り込む。 「やめちぇ『ぐさり』ゆぴぃぃー。」 「ゆっくちできにゃ『ぷすり』ゆんやぁー。」 1匹取り出してはあんよに穴を開け、穴に落とす。 処置した赤れいむが5匹を越えたあたりからは、袋の中の赤れいむ達も異常に気付いて逃げだそうとするが、 所詮はまだ生まれたてで這いずるくらいしかできない赤れいむ達。 逃げる方法もなく、れいむの届かない所に隠れようと、袋の奥へと逃げ固まり、もしょもしょと身を寄せ合って震えていた。 「はやくでてきてね!」 「ゆぴぁぁー。たしゅけちぇー。」 無論、袋の中でどれほど奥に隠れようと、れいむが舌を伸ばせば簡単に届く。 結局生まれて間もなく親元を離され、袋の中で震えていた赤れいむ達は、 1匹残らずあんよに穴を開けられ、庭の穴の中に敷き詰められた。 「ゆっくちたしゅけちぇー。」 「みゃみゃー。ぴゃぴゃー。」 「おにぇーしゃん、ぺーりょ、ぺーりょ。ゆっくちちちぇにぇ。」 「しゅーり、しゅーり。みんにゃ、ゆっくちちちぇー。」 ぷりぷりとした、可愛い可愛い赤れいむ達。 穴のふちで、息も絶え絶えながらいまだにお互いを気遣う赤れいむ達を眺めていたれいむだったが、 その健気な姿も、決意を揺るがせるには至らなかった。 「おちびちゃんたち!」 「ゆぴぃ。おにぇーしゃん、ゆっくちちちぇー。」 「れいむのおちびちゃんのために、ゆっくりしんでいってね!!」 「ゆ、ゆぴゃぁぁああああ!!」×16 そういうと、れいむは穴の中に、ゆっくりと飛び降りた。 「ゆぴゅ・・・おみょい『ぷちゅ』・・・」 「ゆっくち、ちちゃか『ぐちゃ』・・・」 「どうしちぇ、みゃみゃ『ぷちっ』・・・」 じわり、とれいむのあんよに生温かく水気の多い餡子の感触が広がる。 ぷちりぷちり、とれいむのあんよに赤れいむの潰れる感触が伝わる。 ・・・やがて、赤れいむの声が聞こえなくなり、庭に掘った穴は、新鮮な餡子で満たされた風呂になった。 これこそが、れいむがぱちゅりーから聞いた、儀式の全てであった。 「ゆ、ゆ、ゆぅ。これで、これでおちびちゃんが・・・。」 ぱちゅりーの話が正しく、儀式が成功していれば、 れいむは今夜すーやすーやすると、朝にはれいむのお腹の中に、新しい命が宿っているはずであった。 れいむは全てが終わった後、お兄さんにばれないように庭の穴を埋め、 全身を泥まみれにして餡子風呂の痕跡を隠し、 お兄さんの帰りを待った。 お兄さんはれいむの汚れ方に驚いたものの、 めったに元気よく遊ぶことのないれいむが、珍しくはしゃいでいる事にむしろ喜んでいた。 形ばかりは叱ったものの、お風呂にれいむを入れてやり、珍しくゆっくりフード以外のご飯も作ってあげた。 その日、庭でれいむが何をしたのか、全く疑うことなく。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌日、れいむは自分のお腹の中に、たった1つだけではあるが、確かに新しい命の存在を感じた。 ゆっくりの本来の生態から考えると、まったくありえないにんっしんであった。 全ては、思い込みが行動や能力に多大な影響を与える、ゆっくり特有の性質によるものであろう。 胡散臭く凄惨な儀式を、本当に効果があるものだと本気で信じたこと。 それ以上に、おちびちゃんが欲しいという想い。 れいむの良くも悪くも、純粋な願いが、れいむの体に限界を超えさせたのであった。 その日から数日、れいむの食欲は倍増し、瞬く間にサイズが増していったが、 お兄さんも、まさかれいむがにんっしんしているなどとは思わず、 「最近太ってるけど大丈夫か?」 などと言う程度だった。 胎生型にんっしんにしては大きく育っていないことも、ごまかすことが可能だった原因だったかもしれない。 多産なゆっくりは、植物型にんっしんで5~10匹、胎生型でも2~3匹は産む。 まして胎生型なら赤ゆっくり1匹のサイズもビリヤードのボール並になる。 通常のにんっしんであれば、さすがにお兄さんも気付いたであろう。 そしてにんっしんから4日後、通常のにんっしんよりかなり早く、れいむは産気づいた。 今は夕方だが、お兄さんはまだ仕事で家にいない。 出産のタイミングとしては今しかなく、れいむはお兄さんの枕をおちびちゃんの着地地点に置き、出産の体勢に入った。 「ゆ、ぎ、ぎ、ぎぃぃぃ!おちびちゃん!ゆっぐぢうまれでねぇぇぇぇえええ!!」 ぺにぺに、まむまむを失っているれいむは、普通の出産が出来ない。 そのためおちびちゃんは、メリメリとあにゃるから顔を出していた。 うんうんと同じ感覚で産もう、などと器用な事が出来るわけでもなく、れいむの表情は苦痛にゆがむ。 だが、この苦痛の先には明るい未来があるのだ。 そして、 しゅぽーん。ぺちょり。 「ゆ、ゆ、ゆぅぅ・・・」 「おちびちゃん!」 「ゆ、ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「ゆぅぅぅううう!おちびちゃん、れいむのおちびちゃん!ゆっぐぢぢぢぇっぢぇにぇぇぇええ!!」 れいむから生まれた赤ゆっくりは、たった1匹だけ。 ゴルフボールより少し大きい程度の、胎生出産にしては小さすぎる赤れいむであった。 思い込みで乗り越えた限界も、この辺りが精一杯であったのであろう。 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー。」 「ゆぅぅぅううう!ずーり、ずーりぃ!!」 「ゆぁーん、おきゃーしゃん、いちゃいよぉ。」 「ゆふふふぅぅぅ!ごべんでぇぇぇぇええ!!」 だが、一度は完全に諦めていた、自分の体を痛めて産んだおちびちゃん。 大切に、大切に育てていこう、そうれいむは誓ったのであった。 お兄さんにばれたらおちびちゃんが酷い目に会うかもしれない。 自分みたいにぺにぺにを切らせるわけにはいかない。 おちびちゃんを隠すなら、めったに使ってない物置部屋の、机の下をおうちにしよう。 今日までずっといい場所を探していたんだ。 ご飯は、れいむが大食いになったふりして、いくらかお口の中に隠して持っていこう。 うんうん、しーしーはティッシュさんをおうちに持っていけばいい。 物置部屋は奥の部屋だから、夜でもなければ少しくらい声を出しても大丈夫。 大きくなったおちびちゃんには、ゆっくりしたお嫁さんを連れてこないと。 そうだ、公園で遊んでいたあのまりさはどうだろう。 とってもゆっくりした飼いまりさだった。 きっとれいむのおちびちゃんと、相性バッチリだ。 そしたら、おちびちゃんのおちびちゃんも・・・・・・ れいむは、これまで足りない頭で必死に子育て計画を練っていた。 それは、れいむがあの『儀式』を知るずっと前から。 いつか築き上げる、れいむのゆっくりした家族、 じぶんが赤ゆっくりだった頃に夢見た未来のために。 「おい。なんだその赤れいむは?」 まったく無駄だったが。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「だから、何なんだよ。この赤れいむは。」 お兄さんは、れいむが産気づいている間に家に帰って来ていた。 帰っても出迎えが無いのは珍しいので、何かあったのかと思って探してみればこの結果である。 ちなみに赤れいむは、ぴーぴーうるさいのでゆっくりフードにラムネを加えて食べさせ、すーやすーやしてもらっている。 れいむも赤れいむも、お兄さんの机の上に乗せられた。 特にれいむはデスクライトを真正面から向けられ、取り調べの様相となっている。 「しゅーや、しゅーや・・・ゆっくちー。」 「・・・れいむのおちびちゃんだよ。」 「ああ。さっきの見てたから、そこは理解した。でも、何でだ?まむまむは無いんだぞ?父親はだれだ?」 「ゆぅ・・・それは・・・」 ゆっくりは精子餡を体内に受け取るどころか、体に浴びるだけでも時にはにんっしんしてしまうほど、すっきりーの成功率は高い。 あにゃるでも口内すっきりーでもドンと来いである。 ただし、ぺにぺに(まむまむ)を切除されると、思い込み効果であろうが、 にんっしん能力を完全に失うはずなのであった。 「あり得ないだろ。お前の態度を見てると、どっかからチビを拾ってくるかもとは思ってたが。まさか産むとは・・・。」 れいむは、全てを話した。 儀式の話、全てを。 れいむは、自分が野良と接触していたこと、勝手ににんっしんした事を怒られると思っていた。 だが、詳しい話を聞くうち、困惑の中にも怒気を含んでいたお兄さんの表情は消え、 話が終わった頃には、無表情ながら、顔色が多少青ざめていた。 「れいむ。」 「ゆぅ。」 「今の話、全部本当か。」 「そうでず。だまっててごべんだざい。」 お兄さんとしても、さすがに全ては信じられなかったのか、話の途中で庭まで見てくる程だったが、 穴の痕跡を少し掘り返したところで見つけた、小さなリボンの残骸とコンビニ袋を見ると、 それ以上掘り返すまでもなく信じるしかなかった。 「れいむ・・・・・・お前はもう飼えないよ。」 「ゆっ!?ゆぅ、ゆっくりりかいしたよ。」 銀バッジ試験を受けた頃から教えられていたこと。 飼いゆっくりが勝手に子供を作ったら、捨てられたり、折檻を受けたり、 ゆっくりできない事になるということは、ずっと前から聞いていた。 「おにいさん、れいむは、おちびちゃんとゆっくりいきていくよ。・・・さようならだね。」 おちびちゃんは、今も机のど真ん中で、仰向けに寝転がって気持ちよさそうに寝息を立てている。 「ゆぴー、ゆぴー。もうたべられにゃいよぉ・・・」 このおちびちゃんが、野良として過酷な環境に生きていかなければならないのはつらいが、 もはやれいむにはどうしようもない事であった。 お兄さんは文房具立てに立ててあったはさみを手に取ると、 赤れいむの口のすぐ下とぺにぺにの位置に先端を押し付け、 しょきん 赤れいむの腹を縦に切り裂いた。 「ゆ・・・ぴゅ・・・」 赤れいむは相変わらず穏やかな表情のまま、2~3度ぷるぷるっ、と痙攣すると、 口の端から餡子を一滴たらし、そのまま動かなくなった。 「?・・・ゆぁぁっぁああああああー!ゆっぐぢぢでぇぇえええ!」 れいむは赤れいむの傷口をぺーろぺーろして癒そうとするが、 舌が赤れいむに触れるたびに、腹の傷口から水気の多い餡子がごぽっと流れ出す。 れいむの見ている前で、赤れいむは安らかな表情のまま餡子の水たまりを広げていき、 へにょへにょとしぼんでいった。 「ゆびぇぇぇぉえええええ!!なんでぇぇぇえ!なんでなのぉぉおお!おにいざぁぁあん!!」 「・・・子供に罪は無いからな。楽に済ませた。」 「なにいっでるのぉぉぉぉぉ!!」 「俺も、育て方失敗したな。」 「ゆぁぁぁあああああ!!おちびぢゃんがぎらいなら、ずでればいいでじょぉぉおお!どおぢで!どおじでぇぇえええ!!」 お兄さんは、飼えないと言った理由をれいむが誤解している事をわかっていたが、もはや訂正しなかった。 ゆっくりが嘘をついたり、ごまかしたり、わがままを言ったり、物を壊したりするのは、叱りはするが別に捨てる理由にはならないと。 たとえ野良の赤ゆっくりを拾って、隠れて育てていたとしても、それは変わらないこと。 ひょっとしたら、1匹くらいしょうがないと、れいむと一緒に飼ってあげたかも知れないこと。 しかし、今後もれいむを飼っていくには、今回の行いは余りにもおぞましすぎたのだ。 お兄さんもゆっくりの育て方を知らなすぎたと反省してはいたが、このれいむが特殊な部類であろうことは、さすがに理解できていた。 それにもうひとつ、れいむは誤解していた。 「ゆぎぃぃぃいいいい!!はなしでぇぇえええ!れいむをはなじでぇぇえええ!!」 お兄さんは先ほど穴から掘り出してきた、かつて野良赤れいむが詰められていたコンビニ袋にれいむを詰め込む。 赤れいむの遺体も一緒に。 「ゆぁぁあぁあああ!おちびじゃん!おぢびぢゃぁぁあああん!!」 そして、口をしっかりと結んでれいむを閉じ込めると、かかとをそっとれいむの頭の真ん中に乗せた。 「れいむは、れいむはのらになっで!もっどおぢびぢゃんをうむんだよぉぉおお!! たぐざんのおぢびじゃんど、おぢびぢゃんのおぢびぢゃんど、おぢびぢゃんのおぢびぢゃんのおぢびぢゃんど・・・」 れいむは誤解していた。飼いゆっくりを生きたまま捨てるのは、マナー違反だ。 「ゆあぁぁああああ!!れいむはおぢびじゃんとゆっぐりずるんだぁぁああ!!ゆひぃ!ゆひぃぃい!ゆっぐぢ」 お兄さんはそっと、全体重をかかとにかけた。 ・・・・・・ぶじゅり。 挿絵 by儚いあき 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓右に同じ -- 2016-09-01 21 32 39 やっぱバッジ付きでもバカはバカなんだよな。根本的な部分は、何一つ変わっちゃいない。 -- 2016-05-05 21 54 11 取り敢えずれいむは糞だな -- 2016-02-23 15 26 13 去勢のやり方さえ変えてればこうわならなかった -- 2014-04-18 14 27 33 半分以上は去勢の仕方に問題が有りすぎたお兄さんの責任でもあるな。 このれいむにエリザベート・バートリー級の狂気を感じた。 -- 2012-11-28 01 59 40 人間じゃなくてゆっくりに全ての虐め行為を代弁させている感じがして下衆だなぁ。 内容は面白いけど。 -- 2012-06-12 15 14 10 べつににんっしんしなくても、まりさに調達してもらった赤ゆを自分の赤ちゃんにすればよかったのに。 馬鹿なれいむだったね。 -- 2012-02-28 04 45 05 一生モノのトラウマだよ!お姉さん最悪!もっと下さい。 -- 2012-02-27 22 01 20 今回はお兄さんが悪いな。 銀バッジなんて買うから。やっぱり買うなら金にしないと。 安く銅とか銀とかかって殺すことになるなら、飼いやすい金と飼い方のマニュアルを用意するのがペットを買うということだろう。 -- 2011-10-22 09 05 34 お兄さんいかにやりすぎだ・・・。 俺ゆっくり飼ってみたい -- 2011-08-11 10 06 06 これは珍しいケースなんだから、学会発表モノじゃ無いのか? もったいない・・・。 -- 2011-07-12 22 42 47 商人まりさ凄ぇなw お兄さんはけじめが有って優しい人なんだねー。今度飼うゆっくりと幸せになる事を祈るよー -- 2010-10-24 21 51 51 楽に殺してあげるなんていいお兄さんだな 俺だったらヒャッハーしてるわ -- 2010-09-28 17 03 28 この商人まりさが未成ゆんででてくるゲスまりさか -- 2010-08-12 23 33 33 これめっちゃおもしろい!! 望まない去勢のせいで気が病んでしまったんだな けじめのあるお兄さんで良かった -- 2010-07-30 17 34 08 商人まりさは実は良いゆっくりだな -- 2010-07-29 00 57 05 面白かったです。 れいむが夢見てた、何千匹もの自分の餡子を継いだ 子供たちに囲まれて生涯を終えるってとこ。気持ち悪すぎて目眩がした。 -- 2010-07-20 16 54 25 流石にコレはゆっくりの生体を勉強してても予想できんだろ… 想像妊娠で出産まで出来るってなにごと… -- 2010-07-14 14 35 25 思い込みってすごいな・・・・。処分するのは当然の処置だな。 -- 2010-06-27 23 36 03 お兄さん、ペット飼う前には勉強しとけよ -- 2010-06-22 08 54 54
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ゲバ アナーキーインザゆっくり ~ゆっくり闘争っていってね!!!~ パンクとは全く関係有りません。ごめんね 最近この村のゆっくり共に変化が現れた。 普通ゆっくりはそれぞれが勝手な行動を取るだけだが、この頃は何らかの統率が見て取れる。 おそらく強力なリーダーを持った群れが出来たに違いない。 人間の被害が拡大する前に、何とか群れを崩さねばならないだろう。 「ゆっくりしていってね!!!!」 群れを壊滅させる方法を皆で練っていた最中に大音声が鳴り響いた。 この大声、普通のゆっくりの物ではない。皆がその声のした方向を見ると、そこにはこれまで見たこともないような大きなゆっくりが居た。 そこらの木々よりも大きな体に髪に結んだ幾つもの飾り、そのゆっくりはドスまりさと呼ばれるものだった。 突然のことに対処のしようもない我々だったが、ドスまりさには村を襲撃しようなどというつもりはなく、何やら談判しに来ただけのようだった。 知能が高いと評判のこの大饅頭、どうやら人間と対等の関係を結びたいらしい。人里は荒らさぬ、そちらも我々に無用の干渉をするな、とのことだ。 饅頭風情と相互不可侵条約を結ぶなど屈辱も良いところだが、我々の命は今のところこの大饅頭に握られている。こいつが暴れれば留める術を我々は持っていない。 そこで渋々ながらも我々は承諾した。それをこの饅頭は自らの主張が話し合いによって認められたと勘違いして喜んで居る。糞饅頭め。 確かにゆっくりによる被害は減った。初めの内は。 しかし次第に元に戻っていった。我々も作物を盗みに来たゆっくりは容赦なく潰した。ドスとはもともとそう言う取り決めであった。 自らが裏切ったことを都合良く忘却し、あるいは初めから理解して居なかったのか、死の間際までドスに頼りドスの救いを求めながら潰された饅頭も居た。 まあ元々この程度は想定の範囲内であった。しかし、どうしても食料が足りなかったのだ、と泣きながら訴えつつ潰されたものも居た。 もしもこのことが本当だとしたら、なりふり構わぬ奴らはいずれドスまりさの主導の元に、人間の食料を奪いに来ることも考えられる。それだけは阻止せねばならない。 やはり先手を打つべきなのか。 ある日私が道を歩いていると一匹のゆっくりれいむに出くわした。 「ゆっくりしていってね!!!」 ドスのおかげで人間は自分達には危害を加えないとわかっているので、人間に怯えること無くゆっくり本来の反応を見せてくれた。ゆっくり達にとっては良い時代になったものだ。 「ゆっくり・・・か。君は本当にゆっくりできているのか?」 れいむに私は問いかけた。 「ゆっ?れいむはゆっくりできてるよ!!」 当然の反応だ。 「しかし、君よりももっとゆっくりできているゆっくりが居るんじゃないか?」 「ゆゆっ・・・」 黙り込んでしまった。どうやら思い当たるところが有るようだ。 「・・・ドスまりさか?」 「ゆっ!」 れいむは驚いたような表情をしたまま固まってしまった。 「あいつはあの巨体だ。どうせ普段は自分で餌も取れないんだろう。権威を笠に着てふんぞり返ってるだけじゃないのか?」 「ゆゆっ!!そんなことないよ!!ドスまりさはたしかにごはんはとれないけどみんなのためにがんばってるよ!!!」 普通のゆっくりならここで嫉妬に狂っていただろうが、このれいむはマシな部類のようだ。 「本当にがんばってるのか?ただ体がデカいだけで誰も逆らえないんじゃないのか?」 「特別扱いを受けてる奴らは居ないか?あいつに取り入ろうとしてる奴らは居ないのか?」 「結局アイツは自分が良い思いをしたいが為にお前達を利用してるんじゃないのか?」 「ゆぐぐうぅ・・・」 畳みかけるようにれいむの組織への疑いを煽っていく。 極めつけにこの一言だ。 「あいつが来る前は、お前達はもっとゆっくりできていたんじゃないのか?」 「ゆっ!!」 れいむの脳裏に過去の記憶が蘇った。 確かにあのころはみんなゆっくりしていた。 好きなときに食べ、自由な時間を過ごし、愛し合っていたのだ。 それが今はどうだ。 群れのため、と言う名目で食料は取り上げられ、群れのために働かされ、子供も作ることを許されない。 そして自分たちの努力の上に胡座をかく下劣な支配者・・・・ 「ゆっっぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 餡子の涙を流しれいむは怒った。ドスまりさに、側近達に、そして疑いもなく奴らを信じた自分に。 「おにいざん!!あいづらをなんどがじだい!!」 なんとかして、ではないところにこのゆっくりの気概が感じられる。つくづく良く出来たゆっくりだ。 「ならば奴を殺せ!」 「ゆ゙っ!?」 この答えは予想していなかったらしい。 「何を躊躇うことがある。奴を殺せば皆がゆっくりできる。それに、あんな奴を生かして置いてもまたどこかで同じ事をするさ」 「でも・・・れいむじゃドスまりさにはかてないよ!!」 「私が勝てるようにしてやる!奴を倒したければ私の所に来い!」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりついていくね!!」 瞳に強い意志を込めれいむは頷いた。 仕込みは完了。賢いゆっくりに会えてよかった。馬鹿なゆっくりはこんな話理解することも出来ないだろう。 程なくして家に着いた。 れいむを家に入れて待たせ、自分は準備をしに村の武器庫に行った。 帰ってきたとき、れいむは家を荒らすこともなく行儀良くしていた。意志の力はゆっくりでさえも変えるのか。 「待たせたな。これは小さくても必殺の武器だ。これを使えばドスまりさも一発だ。」 れいむに箱のような物を見せる。 「これを使うには強く噛むだけでいい。できるだけドスまりさの近くで使うんだぞ。あいつの側近も巻き込めるだけ巻き込んでおけ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 れいむは勇敢に頷いた。 「・・・れいむ」 「おにいさん!なに!?」 「ここで言ってしまうと君の決心が鈍るかもしれないが、やはり言っておくべきだろう。」 「君は死ぬかも知れない」 「ゆっ・・!でもそんなのはじめからわかってたよ!!それでもれいむはやらなきゃいけないんだよ!!れいむがやらなきゃだれもできないよ!!!」 やはりこのれいむ、私が見込んだだけのことはあるようだ。 「しかし、たとえ君が死んだとしても、後のゆっくり達は君を英雄と認めるだろう。」 「そして、もし君が生きて目的を達成することができたとしたら・・・!」 「ゆゆ・・・!!」 れいむの頬が緩む。英雄として讃えられる自分を想像したのだろう。まあ、戦いに行く者としてはこれくらいで丁度良い。 「よし、行け!!もう会うことも無いだろう!!」 「ゆっ!!おにいさん!!ありがとう!!ぜったいにおにいさんのことはわすれないよ!!!」 れいむは箱を口の中に入れ、家から飛び出していった。 「まあ会う事なんて絶対に無いんだけどね。」 所変わってここはドスまりさの住む洞窟。 「ゆうぅぅぅぅ・・・・」 「むきゅ!どうしたの!?ためいきなんかついて!」 旧友のゆちゅりーがドスをたしなめる。 しかし溜息をつくのも無理はない。群れの状態が極めて芳しくないのだ。 「ごはんはあまりとれないし、みんなはつかれてるし、まりさのなまえをだしてわるさをするやつらもいるし・・・」 「ドスはよわねははかないのよ!いつかみんなわかってくれるわよ!」 「ぱちゅりー・・・」 このままでは群れは自壊してしまう。なんとかしなければならない。いっそ村を襲うか。 しかし、こちらから結んだ条約を勝手に破るのは・・・いや、手段を問うている場合ではない。しかし・・・ れいむは群れの中を飛び跳ね、ドスまりさの元へと進んでいた。 その時、一匹のまりさがれいむに気付いた。 「れいむ!!どこいってたの!?ふたりでゆっくりするってやくそくしてたよね!?」 れいむはまりさに振り向いて答えた。 「ごめんね!!だいじなだいじなようじができたんだよ!!」 そしてれいむは真剣な表情になって言った。 「このたたかいがおわったら、まりさ、れいむと・・・ううん!なんでもないよ!!!」 最後まで言い切らず、踵を返して跳ねてゆくれいむ。 「ゆゆ!?たたかいってなに!?なにをするきなのれいむ!!?」 問いかけるまりさの声を背に受け、れいむは洞窟へと急いだ。 「ゆっ!?なにしにきたの!?」 護衛のゆっくりたちが洞窟の入り口を塞ぐ。 「ドスまりさにようがあるよ!!ゆっくりとおしてね!!」 「だめだよ!ドスまりさはきょうはだれともあわないよ!!」 このまま問答を続けても仕方がない。 「もういいよ!!れいむはいくよ!!」 れいむは強引にゆっくり達を押しのけ、洞窟の中に入っていった。 「れいむがはいっていったよ!!!」「ゆっくりつかまえてね!!!」 何匹ものゆっくり達がれいむを捕らえようと追いすがってくる。 しかし、強い意志に裏打ちされて走るれいむを捕まえられるゆっくりなど居るはずもなかった。 そして、ドスまりさの元へ辿り着いた。 幸運にも奴らは会議中だ!! 「どすまりさああああああぁぁぁぁ!!!」 れいむは絶叫を上げ飛び跳ねる。 辺りに居たゆっくり達は皆驚いた顔でこっちを見た。 「ゆっくりとりおさえてね!!!」 護衛達も追いついて来た。 「ゆっくりしねええええええええぇぇぇぇぇ!!!ぐぶぅ!」 ドスまりさの目の前まで到達した、と思いきや、そのままドスまりさに踏まれてしまった。 「れいむ!どうしてこんなことするの!!?」 厳しい顔で詰問するドスまりさ。 「はんぎゃくしゃだってさ」「おおこわいこわい」 「むきゅううう・・・」 側近達も脅威が去ったと思い、こちらに近づいてきた。 すぐに自分を踏みつぶすよりも、一旦捕らえ、組織への不満を聞き出して対策を行ったり、あるいは反逆者として処刑を行えば、群れの結束を強めるのに利用することも出来るだろう。 この場合、ドスまりさの判断は正しい。 だが、こちらの戦力を把握する前に行動を起こすべきでは無かった。 「かったぞ!!!」 れいむは叫び、必殺の武器を起動させた。 洞窟内に閃光が走り、同時に爆風が吹き荒れ、洞窟を揺らした。 男がれいむに渡したのは、確かに必殺の武器であった。使用者に対しても。 れいむは体内から吹き出す爆風に一瞬で身を四散させた。 れいむの近くに居たゆっくり達は全て粉々に砕けるか吹き飛ばされて岩壁に叩き付けられ、中身を吹き出して絶命した。 護衛のゆっくり達も吹き飛ばされ、満身創痍の状態だ。 「ゆ゙っ!ゆ゙ぼっ!!ど・・どぼじでごん゙なごどに・・・!!!」 ドスまりさは体が二つにちぎれかけるほどの重傷を負ったが、かろうじて意識は残っていた。 そのために見てしまった。岩に張り付いたぱちゅりーの顔を。 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ばぢゅり゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!!!」 体が崩れかけているためにゴボゴボと濁ったその絶叫は、洞窟中に響き渡り、外へと抜けていった。 「ゆゆっ!!!」 洞窟の外にいたゆっくり達も異変に気付き、次々と洞窟の中に入ってきた。 そしてその惨状を見た。 「「「「「「「「「「「「「「「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」 ゆっくり数十匹とドスまりさ一匹の絶叫は、爆発によって崩れかけていた洞窟の天井に最後の一撃を加えるのに十分だった。 ゆっくり達の絶叫はそのまま天井が崩れてくる事に対してのものになり、仲間が潰れ、生き埋めになっていく事に対してのものになり、そして自分の命が失われる事に対してのものになっていった。 ゆっくりの群れはここに壊滅した。 しかし生き残った一部のゆっくり達は、れいむの思惑通りドスまりさが来る以前の状態に戻っていった。 人間に駆除され、動物に食べられ、加工場で加工され、鬼居山に虐待され、AQNに虐殺されるだけの底辺の生物へと。 今回の教訓 中途半端に賢い者は集団にとっての最大の害悪 偉い人の苦労は理解されない(しかし偉い人が苦労しているとも限らないが) 極左思想で一番得をするのはその集団の外部の者 小さくても必殺の武器が必ずしも銃だとは限らない 戦っちゃいけないんだ僕達は 愛など粘膜の作り出した妄想 ゆっくり内部崩壊していってね!!! 多分一番楽なドス駆除法。 あの爆弾はもしれいむがそのままドスまりさに踏み潰されていたとしてもドスの重量でスイッチが入ります。 もしれいむが自爆テロをせずにドス殺害に成功したとしても、理解のない群れのゆっくり達による集団リンチに遭うだけでしょう。 そしてもし英雄として認められたとしても、駆除に来た人間に立ち向かわされて死んだだけでしょう。 つまりれいむは初めからどう見ても詰んでます本当にありがとうございました 餡子クチュクチュの人がお送りしました このSSに感想を付ける
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ゆっくりぴこぴこ2 書いた人 超伝導ありす 前作、ゆっくりぴこぴこ(fuku5263.txt)の続編となります。 単独でも読めますが、前作のキャラが出てきます。 このSSは以下の要素を含みます。苦手な方は読むのをお控えください。 ぴこぴこ 罪のないゆっくりがひどい目に遭います 死なないゆっくりがいます レイパー??ありすが登場します ゆっくりの交尾シーン(ぺにまむ無し設定) ここは、とあるゆっくりの巣。 その中では、今まさに新たな命が産み落とされようとしていた。 「そろそろうまれるよ!まりさ!」 「ゆっくりしたあかちゃんだといいね!れいむ!」 ぴこぴこ。 そこには、れいむとまりさ、二匹のゆっくりが住んでいた。 二匹はつがいである。 れいむの頭には、一本の茎が生えていて、だらんと垂れている。 その茎には、まるで果実のように、目を閉じたいくつもの赤ゆっくりが成っていた。 大きさは3cmほど。 植物型出産では標準的な大きさだ。 「ゆっくりうまれてね!いそがなくてもいいよ!」 自らの分身たる新しい命を、うっとりと見上げるまりさ。 ずっと苦楽と共にして来たれいむが子を産み、自分はこれから父親になる……。 この充足感は、何事にも代え難いゆっくりした気持ちのようだ。 そうしているうちに、赤ゆっくりたちが体をプルプルと震わせ始める。 運よく安全なにんっしんっ期間に恵まれた、母れいむ。 彼女が分け与えた餡子には、夢と希望がいっぱい詰まっている。 ゆっくり生まれてとは言うけれど。 早く生まれて、おかーさん、おとーさんとすりすりしたい。 おいしいご飯をむしゃむしゃ食べて、ゆっくりお歌を歌いたい。 赤ゆっくりたちは一生懸命に体を震わせ、茎と自分を切り離そうとしていた。 ぽとん。 と、最初に地面に降り立ったのは、赤れいむ。 ころころと転がって衝撃を緩和すると、ぱちくり!と目を開き、周囲を見渡してむくりと起き上がる。 そして。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」 ぴこぴこ! 母親へと振り向き産声を上げた赤れいむは、喜びを表現するために、自らの両脇にあるもみあげを前後に振り。 「ゆっくりしていってね!!」 ぴこぴこぴこっ!! それを受けて母親になったれいむも、もみあげを何度も振ってそれに応えた。 「れいむぅぅぅ!ゆっくりしたあかちゃんだね!!」 それを見て、父親となったまりさも、自慢の三つ編みを振り始めた。 こちらは、れいむのもみあげよりもずっと長いので、先端だけをぴこぴこと器用に振っている。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」 次々と生まれ、同じようにもみあげや三つ編みを振る、赤ゆっくりたち。 赤れいむが三匹、赤まりさが三匹と続き、残るは赤れいむ一匹だ。 末っ子となる赤れいむも、頑張って体を震わせ、地面に降り立つと。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」 大きな目をぱちくり開き、姉たちに倣って笑顔を振りまいた。 しかし。 「ゆっ?ゆっくりしていってね?」 末っ子れいむの姿を見て、戸惑う両親と姉たち。 なんだろう?この子だけはゆっくり出来ていない気がする。 「ゆっくちしちぇね!れいむ!」 そこで長女れいむは、末っ子れいむに更なるゆっくりを促してみた。 「ゆっ?」 心の中に、ハテナマークを思い浮かべる、末っ子れいむ。 生まれた喜びを表すために、満面の笑みとゆっくりの根源に関わる台詞を口にした。 幸せな未来を夢見て、両親と姉妹に恵まれた喜びに満たされた。 これ以上、どうゆっくりしろというのか。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!!」 人間が首を傾げるように、体を斜めに傾けながら、先ほどよりもっと大きな声で呼びかける。 末っ子れいむは半信半疑ながら、精一杯のゆっくりを体現しようとしたのだ。 『ゆううう!?』 ところが、それを見た両親と姉たちは、悲鳴を上げて一箇所に集まった。 末っ子がゆっくり出来ない理由に、気づいてしまったからだ。 ぴこぴこぴこっ!ぴーん!! 「ゆっくりできないこだよ!」 「いもうちょとは、ゆっくちできないよ!」 今まで嬉しそうにしていた、末っ子れいむ以外の家族たちは、一斉に髪を振るのを止め。 代わりに、れいむ種はもみあげを、まりさ種は三つ編みの先端を『ボッ』っと膨らませた。 まるで怒った猫が、尻尾を膨らませたかのようだ。 それは威嚇のポーズ。 なぜなら末っ子れいむは、もみあげを振る事が出来ない子、ゆっくり出来ない子だったからだった。 「どうしちぇぇぇ!?」 愛してくれるはずの家族に総スカンされ、驚きの声を上げる末っ子れいむ。 それどころか、家族がなぜ自分を否定するのか、その理由さえ分からない。 『ぴこぴこ』は意識して振っているものではないからだ。 「ゆっくりできないこは、れいむのあかちゃんじゃないよ!!」 「れいみゅは、こんなにゆっきゅりしちぇるのにぃぃ!!」 実の母親から、汚物を見るような目で見られ、悲しみに顔が歪んでいく末っ子れいむ。 母れいむは、六匹の正常な赤ちゃんに視線を移すと、満面の笑顔を浮かべ。 「さあ、れいむのあかちゃんたちは、ごはんにしようね!!」 「かぞくでゆっくりしようね!」 こめかみに力を入れて、頭に付いていた茎を地面に落とした。 「とってもおいしいおかーさんのくきが、さいしょのごはんだよ!」 「ゆっくちできしょうだよ!」 母れいむの前に六匹の赤れいむ・赤まりさが集まった。 嬉しそうにぴこぴこする、赤ゆっくりたち。 「れいみゅもゆっきゅりさしちぇにぇ!?」 それを見て、末っ子れいむも輪の中に飛び込もうとする。 だが、すかさず父まりさが、目の前に背を向けたまま立ちふさがった。 「ゆぴぃっ?」 父まりさの背中に弾き返される、末っ子れいむの体。 「れいみゅも!れいみゅもぉ!」 末っ子れいむはすぐに起き上がると、父まりさの背中に声を掛ける。 だが、父まりさも、そして母れいむも返事をすることはなかった。 とりあえずゆっくりしたい両親は、末っ子れいむを見なかった事にしたのである。 「あかちゃんたちも、おかーさんになったら、くきをたべさせてあげるんだよ!」 「すこしだけまっててね!いま、おかーさんがやわらかくしてあげるからね!!」 母れいむは茎を口に含み、咀嚼しはじめた。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりは、噛む力が弱い。 親が柔らかくして食べさせてあげるのだ。 「さあ、ゆっくりたべてね!」 母れいむが吐き出した、ペースト化された茎に群がる、赤ちゃんゆっくりたち。 『むーちゃむーちゃ、しあわせしぇぇぇ!』 赤ゆっくりたちは口を揃えて、初めて食べたご飯の味に感動した。 ほのかに甘く、そして瑞々しい草の味。 しかも、笑顔の両親に囲まれて、餡子を分け合う姉妹と頬を寄せ合って、これ以上の幸せはないというもの。 「ゆえ、ゆえええええん!!」 一方、末っ子まりさは、父まりさの背後で泣いていた。 末っ子れいむにとっては、これ以上の不幸はない。 生まれた途端に、いらない子だと突き放され、ご飯にすらありつけないのだ。 しかも、感極まったにも関わらず、末っ子れいむのもみあげはいまだ無反応。 「うるさいよ!!」 途端、父まりさが振り向き、末っ子れいむを三つ編みで弾き飛ばした。 末っ子れいむの体は放物線を描いて飛び、砂糖味の涙がそれを追う。 巣の壁際に追いやられたれいむは、思わず口をつぐみ、しかし泣きやむこともできない。 「ゆぎっ、ゆひっ」 大声を出してはまた飛ばされてしまう……。 末っ子れいむは恐怖に怯え、小さくむせび泣くしかなかった。 やがて姉たちは食事を終え、お腹いっぱいになる。 満腹になった赤子がすることといえば、一つだ。 「ゆふぅ、れいみゅ、ねみゅくなってきちゃよ…」 「まりしゃもねりゅよ」 「おかーしゃんといっしょにねりゅからね…」 姉たちは、母れいむに寄り添いまぶたを落とす。 「ゆふふふ!ゆっくりおねむしてね、れいむのあかちゃんたち!」 それを見届け、満足げな顔を浮かべる、母れいむと父まりさ。 しかし赤ちゃん達が寝静まると、今度は代わりに耳障りな声が聞こえてくる。 末っ子れいむの泣き声だ。 「まだいたの?ゆっくりできないこは、どこかへいってね!?」 無茶な要求をする、父まりさ。 生まれたばかりの赤ちゃんが、自ら外に出て行くという選択肢を思いつくはずがない。 それに外に出ようとしても、巣の出入り口には成体ゆっくりの力でがっちりと蓋がしてあった。 「まりさ!あのこがいると、あかちゃんたちもゆっくりできないよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 母れいむは『ゆっくりできる子』に寄り添われたまま、身動きが取れない。 代わりに父まりさが、末っ子れいむの居る、巣の壁際へとにじり寄った。 迫ってくるのは、大きな顔。 父まりさは、不機嫌そうに三つ編みをぶうん、ぶうん、と揺らしている。 殺される!! 末っ子れいむはガチガチと歯を鳴らしながら必死に考え、そして気づいた。 自分と、姉達の違いに。 しかし、末っ子れいむはもみあげを動かすことは出来なかった。 そうなれば、することは一つ。 「ゆっきゅりすりゅよ!ゆっきゅりすりゅよ!!」 末っ子れいむは、体を激しく前後に動かし始める。 反動で、もみあげを振ろうというのである。 赤ゆっくりにしては、よく考えたものだ。 否、生き残るために自然に体が動いたというべきか。 末っ子れいむは、体を動かし続ける。 何度も、何度も。 すると、わずかながらもみあげが前後に揺れたのだ。 それを見て、父まりさの表情が、少しだけ緩んだ。 「ゆゆっ!あかちゃんはすこしだけどゆっくりしてるね!」 「ゆっくりできるなら、ごはんをあげてね、まりさ」 母れいむもそれを見届けると、父まりさに指示をした。 父まりさは頷き、巣の奥の食料庫へと向かう。 自分の努力が認められたと思った末っ子れいむは、動きをやめ、ぺたんと地面に倒れてしまった。 本来なら何も考えずゆっくりできるはずの、赤ゆっくり。 その体に、激しい運動に耐える体力が、最初から備わっているはずもない。 もう一歩も跳ねられないような疲労感に襲われる、末っ子れいむの前に。 ぺっ。 父まりさが吐き落としたのは、咀嚼されていない苦い草だった。 ゆっくりが好んで食べる事のない、苦い草。 それでもいざという時の為に、聡明なまりさが少しだけ貯めていたのである。 父まりさは、にこりと笑って。 「ほんとうにゆっくりできたら、おいしいごはんをたべさせてあげるからね。がんばってね!」 そう言って背を向けた。 「ゆぐっ、ゆぐっ…ゆぐぐぐぐ…」 父まりさは時分の努力を認めてくれたわけではなかった。 執行猶予を与えたに過ぎなかったのだ。 再び絶望感に打ちひしがれながら、食欲には勝てず、泣きながら舌を伸ばす末っ子れいむ。 苦い草の一部を口に含み。 しかし噛み切れず、横に倒れた体勢のまま、咀嚼を始める。 「む……ちゃ……むひ……に、にぎゃいぃぃぃ」 まだ硬い物は噛み切れない赤ゆっくりに、この仕打ちは最悪のものだった。 噛めば噛むほど苦い汁が口の中に広がり、何度噛んでも噛み切れず。 仕舞いには何時までも残った味気ない繊維をかみ続けなければならないからだ。 苦い汁だけでは、腹は膨れない。 すでに疲労は限界だった。 末っ子れいむは、繊維をかみ締めながら、やがて気絶するかのように眠りにつくのだった。 翌日。 「ゆっくち…しちぇいってにぇ?」 末っ子れいむは目が覚めると、本能的に朝の挨拶を口にする。 ただしそれは、控えめで辺りをうかがいながらの挨拶だ。 家族に自分を否定された恐怖は、今もなお末っ子れいむの心にしっかりと刻まれている。 そして当然の如く、誰も返事はしてくれなかった。 姉たちはすでに朝食を終え、楽しそうに遊んでいた。 母親が噛み砕いてくれたご飯をたっぷり食べて、姉妹同士でコロコロ転がったり追いかけっこをしたり。 父まりさが狩りに出ている間、育児を任された母れいむはうっとりとその光景を眺めていた。 「ゆぐっ…」 末っ子れいむは仕方なく、苦い草を口に含む。 相も変わらず繊維は硬く、なかなか飲み込むこともできない。 姉たちよりも何十倍も口を動かしているのに、空腹が満たされることはなかった。 「おかーしゃん!れいみゅたち、おなきゃがしゅいちゃよ!」 「まっててね、あかちゃんたち!すぐにおいしいごはんをよういするからね!!」 赤ゆっくりは体が小さく、栄養を一度にたくさん貯めておくことができない。 そのため、一日に何度も食事を取る。 「むーちゃ、むーちゃ!しあわしぇ~!!」 その幸せそうな喧騒をBGMに、末っ子れいむは草を食み続けていた。 いつまでも。 午後になると、父まりさが狩りから帰ってくる。 「きょうもたいりょうだったよ!あかちゃんたちのためにがんばったよ!」 「おとーしゃん、おきゃえりなさい!」 「おとーしゃんは、すぎょいね!!」 頬をぱんぱんにして、餌を調達してきた父まりさを出迎える子供たち。 しかし、その中に末っ子れいむの姿はない。 『ゆっくりしていってね!!』 ぴこぴこぴこっ! 頑張った父まりさを称え、お決まりの大合唱をする一家。 「ゆっ、ゆっくちしちぇいってにぇ?」 少し遅れて末っ子れいむがぼそぼそと呟き、父まりさの顔をちらりと見上げた。 対して父まりさも末っ子れいむを見返し、険しい表情を浮かべる。 「ゆっくち!ゆっくちしてりゅよ!!」 末っ子れいむは昨日と同じように、慌てて体を揺すり始める。 ぴこぴこ、とまではいかずとも、それなりに揺れる末っ子れいむのもみあげ。 「さあ、赤ちゃんたち!おとーさんとゆっくりあそぼうね!」 父まりさは、ふいっと視線を戻し、満面の笑顔をゆっくり出来る赤ちゃんゆっくりたちだけに向けるのだった。 末っ子れいむの生活は、ずっとそんな調子で続いた。 姉たちが幸せそうに食事をしている最中も、ひたすら硬い草の繊維を噛み切る事に専念し。 姉たちが眠る頃、末っ子れいむは一人誰にも寄り添えず、疲れきって倒れ。 時折、親と目線が合うと、媚びへつらうかのように体を激しく振って、もみあげを動かす。 地獄のような日々は続いた。 両親は、末っ子れいむをすぐには追い出さなかった。 自ら手を下すのが嫌だったのか、あるいは必死な末っ子れいむに同情したのか。 それでも数日経つと、群れには末っ子れいむの悪い噂が広がり始めていた。 れいむの末っ子はゆっくり出来ない。 もしかしたら、親もゆっくり出来ないのかもしれない。 そんな噂が広がり始めると、両親の態度はさらに悪化した。 もう体を激しく揺さぶっても、その表情が和らぐことはない。 そして……。 「やっぱりれいむは、ゆっくりできなかったね!やっぱりれいむのあかちゃんじゃなかったね!!」 「れいむはいらないこだよ!とっとと、めのまえからきえてね!!」 生まれてから七日後、とうとう末っ子れいむは、父まりさに外に放り投げられてしまった。 「れいみゅはゆっくちしてりゅよおおお!!れいみゅはれいみゅおかーしゃんの…!!」 バタン。 慌てて巣に戻ろうとしますが、出入り口にはフタをされてしまう。 「ゆううう!れいみゅはおかーしゃんのあかちゃんなのにいいいい!!」 しばらく泣いていた末っ子れいむは、やがて後ろから近づいてくる影に気づいた。 「むきゅ。あなたがゆっくりできないれいむね!」 「ゆう?」 末っ子れいむが振り返ると、そこにはぱちゅりーが立っていた。 しかし、そのぱちゅりーも笑顔には程遠い憤怒の表情。 「ぴこぴこできないこは、あくまのこよ!はやくむれからでていってね!」 「ゆひっ?」 見れば、ぱちゅりーも両方に垂らした髪をくねくねさせていた。 そして振り向くことで、末っ子れいむは周囲に沢山のゆっくりが居ることに始めて気づく。 両親の巣は、群れのほぼ中央に近くにあり、巣の外には常に仲間の往来があった。 そのすべてがれいむ種やぱちゅりー種のように、垂らした髪を振っていた。 また、垂らした髪が無い種類のゆっくりは、気を逆立ててゆらゆらとさせている。 この群れでは、すべてのゆっくりが何らかの形で髪を揺らしている。 ここは、ぴこぴこゆっくりの群れだったのだ。 「ゆひああああ!?」 今までは両親の手前、もみあげを振ることだけを考えてきた末っ子れいむ。 けれども落ち着いて考えてみると、それが正常であるとは到底思えなかった。 ぴこぴこなんて、ゆっくりできない。 「みんなゆっきゅりしちぇないよおおおお!!」 周囲の冷たい視線から、逃げ出すように跳ね始めた末っ子れいむ。 体はまだ小さく、どこへ行けばいいかも分からない。 けれど、とにかく跳ね続けた。 ぽすん。 その途中。 末っ子れいむは柔らかい何かに受け止められ、それを見上げる。 「あら、れいむがゆっくりできないれいむかしら?」 そこには、一匹のありすが居た。 末っ子れいむは、ありすの下膨れにぶつかったのだ。 ありすは髪を逆立て、ゆらゆらと揺らしてはいなかった。 それだけではない。 ありすは笑顔で末っ子れいむを見つめていたのだ。 が。 そのありすを見て、末っ子れいむを視線で追っていた群れの仲間達は一斉に目を背けた。 まるで、その存在が禁忌であるかのように。 「だいじょうぶよ、れいむ。ありすはぴこぴこできなくても、きつくあたったりはしないわ」 「ゆ?……ほんちょう?」 「ええ、ほんとうよ」 その笑顔にほだされて、わずかに笑みを取り戻す末っ子れいむ。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆ…ゆっきゅりしていっちぇにぇ!」 ありすは、親愛の印である、いつものフレーズを、高らかに口にする。 末っ子れいむはやや遅れてから返事をして。 ようやく自分が求められていることを実感し始めた。 「むれのなかにいてはきけんだわ。きょうからありすがれいむのおかーさんになってあげるわね」 「おかーしゃんに?」 「ええ。たくさん、たくさん、ゆっくりさせてあげるわ」 ぽろりぽろりと、末っ子れいむの瞳から涙の雫がこぼれた。 家族から見放され、群れのゆっくりからも疎まれ、絶望していた心に差し込む一条の光。 「ゆっくちできりゅの!?れいみゅはゆっくちしちぇいいの!?」 「もちろんよ!」 ありすは末っ子れいむの頭を優しく銜えて持ち上げる。 一瞬、びくりと震えた末っ子れいむだが、その動作が優しい事に驚き、嬉しくなった。 「さあ、ありすのおうちにかえりましょうね!そこはれいむのおうちでもあるわ!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅりすりゅよ!!」 末っ子れいむは舞い上がっていた。 実の母親ではないにしても、自分の母親になってくれるゆっくりに巡り会えたのだから。 「ゆっきゅり~♪きょうはゆっきゅりのひ~♪」 しかし、末っ子れいむは気づいていなかった。 ありすの背中では、束ねられた髪が牙を剥いた蛇のようにゆらゆらと揺れていたことに。 ありすの巣では、二匹のゆっくりが待っていた。 「ゆっくりおかえりなさい!」 「おかえりなさい、ありすおかーさま!」 そこに居たのは、末っ子れいむよりずっと大きい、子まりさと子ぱちゅりー。 「ありすのおちびちゃんたち!きょうから、れいむがあたらしい、いもうとよ!なかよくしてね!」 「よろしくね、れいむ!!」 「わかったわ、おかーさま!」 ありすが末っ子れいむを地面に降ろし、紹介すると、二匹の子ゆっくりは快く引き受けた。 「れいむはかわいいね!すりすりさせてね!!」 「むきゅ、ぱちゅりーはぺろぺろしてあげるわ」 「や、やめちぇにぇ!?」 末っ子れいむは、すぐにはその二匹が姉である実感がわかなかった。 今までの家族の仕打ちから、姉妹が愛すべき存在である事も忘れていた。 しかし、二匹は硬直する末っ子れいむに構わず、スキンシップを図る。 「すーりすーり。きもちいい?」 「ぺーろぺーろ。どうかしら?」 末っ子れいむにとっては、これが初めての同属とのスキンシップとなった。 体は正直なもので、初めてのすりすりとぺろぺろは、思いの外気持ちよく。 「ゆひゅひゅひゅ、くしゅぐっちゃいよ」 末っ子れいむは、すぐに心地よい快感に酔いしれた。 「まりさのことは、おねーさんとよんでね!」 「ぱちゅりーもよ!」 「ゆっきゅりりかいしちゃよ!まりさおねーしゃん!ぱちゅりーおねーしゃん!」 妹が出来た事に、子まりさと子ぱちゅりーも、心の底から喜んでいるようだった。 それから末っ子れいむは、夕方まで二人の姉に遊んで貰った。 帽子に載せてもらったり、お話を聞かせてもらったり。 唯一残念だったのは、実の姉達がやっていたコロコロ遊びが出来なかったことだ。 これは幼い姉妹同士だから出来ること。 体格差の大きい姉たちにそれをせがむのは、無理というものだ。 二匹も末っ子れいむ同様、生まれつきぴこぴこ出来ず、ありすに拾われた子ゆっくりだった。 同じ境遇と知り、ますます親近感を深める末っ子れいむ。 末っ子れいむにとって、その日は始めて充実した日になっていた。 「さあ、ありすのおちびちゃんたち!おゆうはんよ!ゆっくりたべなさい!」 夕方になると、狩りから帰って来たありすが、夕食を振舞った。 色とりどりの花や、草、虫の死骸や乾いた果物など、バランスのよい献立だ。 ありすは群れでも1、2を争う狩りの名手だったのである。 それもすべて、実子ではなくとも愛してしまえる、深い深い愛ゆえ。 「むーしゃむーしゃ!」 「れいむには、とくべつにありすがやわらかくしてあげるわ!」 姉二匹が食事を始める横で、おどおどしている末っ子れいむに、ありすはそう語りかけた。 末っ子れいむにとって、ご馳走は初めて見る食べ物ばかり。 どう食べてよいか分からなかったのである。 ありすは草を少しと果物を少しを口に含み、咀嚼してかられいむの目の前に吐き出す。 「ゆっ!?」 それは、夢にまでに見た母親の茎に似ていた。 「むーちゃむーちゃ……ゆっ!ゆゆゆゆゆ!しあわちぇええええええ!!」 飛びつき、そして思わず叫んでしまう、末っ子れいむ。 目からはうれし涙がぼろぼろとこぼれた。 乾ききっていた末っ子れいむの心に、ありすの愛が注がれる。 れいむは生まれてきてよかったんだ!! 止まらない、涙。 その涙さえ、れいむのあんよが解けてしまわないように、ありすが舐めとってくれる。 「おいしいかしら?れいむ」 「おいちいよ!おいちいよ!おかーしゃん!!」 素直に母親と認めてくれた事に、じーん…と心を振るわせるありす。 しかし、その口元には妖艶な笑みが浮かびつつあった。 「うふふふふ。かわいいわねぇ、れいむは…」 夢中になって食べる末っ子れいむを見下ろし、ほほ笑みながら目を細めるありす。 そして。 「たべちゃいたいくらい…。うふふふ…」 そんなありすの言葉には気づかずに、末っ子れいむは食事を終えた。 体の小さい末っ子れいむは、ありすが用意してくれた分だけでも満腹だった。 手持ち無沙汰になった末っ子れいむは、姉二匹の様子を眺めることにした。 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~」 さぞかし美味しそうに食べているのだろうと思いきや、二匹にはあまり元気がない。 口では幸せと言ってはいるものの、末っ子れいむほど飛びつくような勢いでもなかった。 よく見ると、二匹の目の下には、クマがうっすらと出来ている。 「どこかいちゃいの?まりしゃおねーしゃん?」 「ゆっ?だいじょうぶだよ、れいむ!がーつがーつ!」 「そうよ、ぱちゅりーもげんきよ!」 慌てて取り繕う姉たちに、小首を傾げる、れいむ。 食事が終わると、れいむは眠気に襲われた。 赤ゆっくりは、よく食べて良く寝て良く育つことが仕事。 れいむはようやく本職をまっとうできる環境を手に入れた…はずだった。 が。 「れいむ。まだねてはだめよ。ありすのこどもなら、しょくごのたいそうがあるのよ!」 そう告げるありす。 「ゆっくりはじめるよ…」 あまり嬉しそうではない声で、姉二匹は壁際に並んだ。 急に空気が緊張し、とても眠らせてもらえる雰囲気ではない。 末っ子れいむも、姉たちを真似て壁際に移動した。 「さあ、ぴこぴこたいそうよ!ゆっくりはじめてね!!」 「ゆううう!?」 「ぴーこぴーこ!まりさはゆっくりできるよ!」 「ぱちゅりーもくねくねできるわあ!!」 ありすの合図とともに、子まりさと子ぱちゅりーは、体を前後左右に揺すり始める。 末っ子れいむは、その光景を見て愕然とした。 壁際で体を振るわせるその姿は、かつての自分を彷彿とさせ、同時に恐怖が蘇える。 「ひいいい!ひいいい!」 その場で震え始める、末っ子れいむ。 「こわがらなくてもいいのよ、れいむ」 しかし、末っ子れいむに近づいてきたありすの顔は、相変わらず柔和な笑顔だった。 「ゆっ?」 「まりさもぱちゅりーも、れいむも。いずれは、おとなになって、どくりつするひがくるわ」 その柔和な顔が、さらにずずいっと近づいてきて。 「そのときに、ぴこぴこできなかったら、むれからおいだされてしまうの。だから、ゆっくりでもいいから、 れんしゅうしましょう……ね?ありすのあかちゃん?」 「ゆ、ゆう……」 そう言われてしまっては、末っ子れいむも従うしかなかった。 媚びへつらいながらの強制ぴこぴこよりはマシというもの。 ありすは元の位置に戻り、三匹の様子を眺める。 その頃には、すでに子まりさと子ぱちゅりーは、現実からトリップし始めていた。 自ら激しく体を揺する事によって、発情にも似た感覚に襲われていたのだ。 「そうそう!まりさもぱちゅりーも、とってもとかいはよ!」 末っ子れいむは、様子を窺いつつ、ゆっくり体を前後に揺らす。 「れいむはもっとがんばってね!ぴこぴこできないこは、なえなえよ!」 懸命に体を揺らす三匹を前に、うっとりと光景に見入るありす。 やがて、ありすの顔には、隠された表情が見え隠れし始めた。 「はぁ、はぁ、はぁ。もっとがんばってね!おかーさんをよろこばせてねえ!!」 一度変化が始まると、後は早かった。 ありすは、辛抱たまらん!という勢いで、まりさの背後に回り。 「きょうは、まりさに、こじんれっすんをしてあげるわあああ!!」 「ゆううん!!」 ありすは、無我夢中の子まりさの背後に圧し掛かるなり、自らも激しく揺れ始めたのだ。 すでに快感の中にあった子まりさは、すんなりとそれを受け入れてしまう。 瞳からはすでに光が消えうせ、体格差による重さも感じてはいない。 ありすは『ぴこぴこ』できない子が必死になるのを見て発情してしまう、HENTAIありすだったのだ! 「ゆふん!ゆふん!」 「いいわああ!まりさもテクニシャンになったわねえええ!!」 お互いに肌を擦り付け始めると、皮にはじっとりと粘液が浮かび、雫となって垂れ始めた。 二匹とも本格的な交尾体勢に入ったのである。 「なにしちぇるのおお!?」 ただ事ではない光景に、思わず体を休め見上げてしまう、末っ子れいむ。 そこへ。 「おちびちゃん、きょうはおやすみしましょうね?」 そう語りかけてきたのは、子ぱちゅりーだった。 少し乱れていた息づかいをゆっくりと落ち着けると。 「おかーさまたちは、とっくんちゅうよ。わたしたちはゆっくりねましょうね」 「とっくん……?」 末っ子れいむはもう一度、絡み合う二匹を見上げ。 しかしお腹も一杯な上に疲れていたので、素直にぱちゅりーに従うことにした。 子ぱちゅりーは、末っ子れいむを少し離れた隣の部屋へと案内する。 「むきゅ。さあ、ゆっくりおねむしましょうね。さみしいなら、すりすりしてあげるわ」 「ありがちょう、ぱちゅりーおねーしゃん!」 「すーりすーり」 「しゅーりしゅーり」 通路の向こうからは、相変わらず歪んだ嬌声が聞こえていた。 しかし、ぱちゅりーとの頬擦りはとても気持ちよく、れいむはいつの間にか眠ってしまっていた。 一方、子まりさとありすは絶頂が迫っていた。 だが、ありすは限界ギリギリで正気を保っていた。 『すすすす、すっきりー!!』 お互いがすっきりする直前、ありすは子まりさから体を離したのである。 「ハァハァハァ。もうすこしで、じぶんのこどもをにんっしんっ!させてしまうところだったわぁ!」 子まりさは精魂尽き果て、その場で気絶していた。 ありすは子まりさに再び歩み寄ると、舌をべろんと出して子まりさの皮を舐め始める。 交尾中に発した粘液を舐め取っているのだ。 「ゆふふ、まりさはきれいきれいしましょうね~」 ありすは、わざわざ子まりさをひっくり返してまで、丹念に掃除をする。 その瞳には、未だ狂気が宿ってた。 これは掃除ではなく、粘液を味わう行為なのである。 「ぺーろぺーろ。ゆふふふふ。まりさのエキスはおいしいわねええ!れいむはどんなあじなのかしらああ!」 いかがわしい舌舐めずりの音は、その後夜遅くまで続いたのだった。 翌朝。 末っ子れいむは、初めてぬくもりに包まれた朝を迎えた。 そして、何事もなかったように笑顔を浮かべる姉たち。 大変なのは寝る前だけで、後は満ち足りた生活を送れるのだ。 外は自分たちを受け入れてはくれない地獄。 これ以上、何を求めるというのか。 「むーちゃむーちゃ、しわせしぇ~……ゆゆっ?」 昨晩と同じように、ありすに柔らかくしてもらった餌を堪能していた、末っ子れいむ。 しかし今日は、なにやら外から慌ただしい喧騒が聞こえてきていた。 「ゆっくりできない、あくまのぐんだんがきたんだよおお!!」 群れの誰かが、そう叫んだ。 「あくまのぐんだん?」 子まりさと子ぱちゅりーが顔を合わせる。 「とうとうきたわね…。おちびちゃんたちは、おくのへやにかくれてね!!」 ありすは突然、キッと厳しい表情になり、子まりさたちにそう指示した。 わけもかわらず、食事を頬張りながら寝室へ向かう、三匹の子供たち。 ありすはそれを見届け、巣の外へと出た。 外はすでに大混乱。 迎え撃とうとする者、我先に逃げようとする者。 そして、朝日を背にして丘の向こう側からやってくる、数十、数百という黒い影。 それはすべてゆっくりだった。 彼らは『ぴこぴこ』する、ゆっくり出来ないゆっくりを討伐するため編成されたゆっくり軍団だったのだ。 ありすはすぐさま巣の入り口に、外側から蓋をして、土を掛けた。 ご丁寧にも何度も飛び跳ね、慣らす。 相手は圧倒的多数。 ここで逃げても生き残れる保障はない。 巣を隠すことで、せめて子供たちだけでも生き残らせようとする算段だった。 『ぴこぴこ』できるありすの群れは、『ぴこぴこ』出来ない大多数の群れから迫害を受けていた。 ありすの最初の子供たちも、彼らによって奪われていた。 「さあ、くるならくるがいいわ!」 ありすの脇を、逃げる仲間達が通り過ぎ、すぐに敵勢が姿を現す。 迎え撃つありすの元に、三匹のゆっくりがほぼ同時に飛び掛ってきた。 相手はみょん、ちぇん、まりさ。 特にまりさは一際大きく、背丈は50cmを超える特大級だった。 「ありすを、なめないでねええ!!」 気迫で一度はちぇんを弾き返したものの、所詮は多勢に無勢。 みょんが口先に銜えた、鋭い木の枝で貫かれ、重傷を負ってしまう。 「ゆばああああ!!」 ありすは地面にひれ伏した。 けれども、後悔はしていなかった。 「つぎのてきをたおすんだみょん!」 「さがすんだねー、わかるよー!」 すでにみょんとちぇんは、逃げ行く敵に気をとられていた。 このまま軍団が巣に気づかず過ぎ去ってくれれば、子供たちは生き残れるのだから。 ところが。 バンバン! という大きな音がして、みょんたちの意識がそちらに向かう。 ありすもその音を辿り愕然とした。 みれば子まりさが、土を乗せた重い蓋を死に物狂いで開き、外に出ようとしていたのである。 「ど……どうじでえええ!?」 守ろうとした子供によって計画が覆されてしまったありす。 しかし子まりさは全力でありすの元へ駆け寄り。 「ありすおかーさん!しんじゃだめええええ!!」 「ま、まりざ……」 ありすの悲鳴を聞き、居ても立ってもいられなかった子まりさ。 例え狂っていても、まりさにとって、ありすは大切な母親だったのだ。 家族に捨てられた自分を拾ってくれたおかーさん。 ごはんをいっぱい食べさせてくれたおかーさん。 すりすりしたり、ぺろぺろしたりしてくれたおかーさん。 だから。 ありすを背にして、敵へと向き直った子まりさは。 「おかーさんをきずつけるゆっくりは、ゆっくりしねええええ!!」 勇敢にも、敵へと飛びかかったのだった。 だが。 ぶすり。 無情にも、みょんの枝が突き刺さる。 相手は百戦錬磨のおさむらいであった。 「ゆっべええ!!」 しかもその枝は、成体サイズのゆっくりを屠殺するための枝。 子まりさは、顔面に大きな穴を開けられ、強い圧力により一瞬にして絶命してしまった。 「まりざっ……!まりざあああ!!ぎゅべっ!?」 そのありすも、特大まりさによって潰されてしまう。 「てきとはいえ、おやこをころすのは、かなしいことだね」 しみじみと呟く、特大まりさ。 この特大まりさは、かつて最初にゆっくり出来ないゆっくりと遭遇した、群れのリーダーだった。 まりさはその事件により、大事な子まりさを失っている。 もう二度とそのような悲劇は生み出すまい。 そう誓い他の群れと協力し、常に前線に立って戦ってきた総大将でもあった。 気が付くと、まりさは軍団で一番のまりさになっていた。 もしかしたら、ドスの素質が少しだけあったのかもしれない。 だからこそ、特大まりさはふと気が付く。 ゆっくりは、体が大きくなればなるほど餡子脳の容積が増し、頭が良くなる傾向にある。 目の前にある、子まりさは、他の敵とは違う印象を受けたのだ。 「そこのおうちを、しらべてきてね!こどもがいたら、ころさないでつれてきてね!」 「ゆっくりりかいしたみょん!」 まりさが指示すると、みょんとちぇんが巣の蓋を開いて中に入り。 しばらくすると、子ぱちゅりーと末っ子れいむが、巣の外に連れ出された。 「むきゅ……おかあさま……」 「きょわいよおお!きょわいよおお!!」 子ぱちゅりーは、ありすの亡骸に涙し、末っ子れいむは震えて泣いていた。 しかし、まりさはすぐに見抜く。 「ぱちゅりーたちは、ぴこぴこしないゆっくりだね!?」 「むきゅっ!?そ、そうよ……」 「だったら、なかまだね!ころさないでおいてあげるよ!!」 「そう、ありがとう……」 許された子ぱちゅりーは、しかしあまり嬉しそうな表情をしなかった。 唯一の肉親となった、末っ子れいむを舌先であやしながら。 周囲の惨状に絶句するしかなかったのだ。 群れは跡形もなく無くなり、これから子と赤子だけで、どう生きていけばいいのか。 子ぱちゅりーの表情は不安でいっぱいだった。 「どうしたのかしら?」 そこへ、台車に乗った別のぱちゅりーが現れる。 スィーと呼べるほど立派なものではない。 別のゆっくり二匹が、台車を引っ張っているだけの代物。 ぱちゅりーは、特大まりさの優秀な参謀役だった。 今までに何度も、おっちょこちょいな特大まりさをフォローしてきた、戦地の女房役でもある。 「そろそろたたかいもおわりね。みんなには、てっしゅうめいれいをだしたわ」 「てきかくなしじだね!ぱちゅりーには、このこたちの、めんどうをまかせるよ!」 「むきゅ?」 「ぴこぴこできない、こどもたちだよ!」 「わかったわ」 ぱちゅりーの承諾を得て、特大まりさはお供を従え、群れの中央へと向かった。 そこにはすでに多くの仲間が集まっていた。 「ゆっくりしょうりせんげんするよ!」 特大まりさが声を上げると、仲間たちが歓声を上げる。 まだまだ討ちもらした敵の掃討が残っているが、もはや勝利が覆ることはない。 それよりも、大きな仕事がその後に待っている。 『ぴこぴこ』するゆっくりの死体を食べたゆっくりは、同じように『ぴこぴこ』してしまう可能性があるのだ。 そう。 まりさの子まりさも、そのために泣く泣く殺さねばならなかった一匹。 この戦いで出た死体も、遠くに穴を掘り、捨てなくてはならないのだ。 その頃。 「まりさっ!じっがり……じっがりじでねぇ!」 我先に逃げたゆっくりの中に、生き残っているゆっくりの家族が居た。 まりさが一匹、れいむが一匹。 そして、赤れいむが三匹に、赤まりさも三匹。 そう、末っ子れいむを見捨てた一家だった。 しかし全員が無事というわけにもいかなかった。 父まりさは体中を蜂の巣にされ、餡子を垂れ流している。 赤ゆっくりたちを口の中に避難させ、思うように跳ね回れない母れいむのために、囮役になった結果だ。 「まりざがいなぐなったら、ゆっぐりできないよ!?」 「おとーしゃん、ちっかりしちぇえええ!!」 「びゅひっ!ぴゅひっ!」 まりさは奇声を上げながら、餡子を吐き出し続けていた。 目も焦点が合っておらず、家族の声が聞こえているかも微妙な状態。 悪魔の軍団は、突然現れた。 そして群れを滅ぼし、今こうして自分たちをも不幸のどん底に突き落とした。 一体、自分たちが何をしたというのか? 母れいむはすべてが信じられなかった。 しかし時は無情に過ぎ去る。 父まりさはやがて永遠にゆっくりしてしまい、れいむも現実を受け入れざるを得なかった。 ……夕闇が迫っている。 「さ、あかちゃんたち。おかーさんのおくちのなかへはいってね」 「ゆ?おとーしゃんは?」 「まりさおとーさんは、つかれてねむっているだけだよ!すぐにおいついてくるからね!」 赤ゆっくりたちは、父親の姿を見上げて何かしらを感じつつ、母親の口の中へと入ってゆく。 これからは、れいむが子供たちを守らねばならない。 圧倒的な力を持つ、悪魔の軍団の追っ手から逃れつつ、育てていかなくてはならない。 その道のりは、険しく、そして絶望的だ。 夕日を背に、一匹のれいむが跳ねてゆく。 …長い影が、とてつもない重い何かを顕していた。 おしまい。 後書き あれから、ぴこぴこするれいむがずいぶんと増殖したなぁ。 そんな気持ちで思わず続編を書いてしまいました。 自分の脳内では、ここで物語が終わっていますが、あのゲス親子のその後はどおしたっ!?という方も いらっしゃると思います。 なので、おまけ的な扱いですが、虐…制裁お兄さんを派遣しておきました。 もしよろしければ、感想をお願いします。 (おまけは別ファイル) このSSに感想をつける
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れいむよ永久に安らかに これは虐待の話だ。 僕が、ゆっくりれいむを虐待した件についての記録だ。 途中で、そうは思えなくなるかもしれない。だが、それは早とちりだ。 どうか最後まで読んでほしい。 僕は、自分の快感のためにゆっくりを虐待する人間だ。 たとえそう見えなくても、そうなんだ。 * * * * * 「ゆ゛……? ゆ゛……? ゆ゛……?」 ゆっくりれいむは自分の目に映っているものが理解できなかった。 狭い部屋、冷たい床、明らかにゆっくりできない熱そうな道具を持っている、青い服の人。 「ここはどこ? ゆっくりおしえてね! ――ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 返事の代わりに、れいむの頬に灼熱の焼印が押し付けられた。 * * * * * 以前、ゆっくりれいむは、お兄さんのところで暮らしていた。 れいむは加工所というところから出荷された冷蔵れいむで、お母さんや姉妹はいなかった。 でも、お兄さんがいた。おいしいごはんをくれて、暖かい部屋、ふわふわの寝床で飼ってくれた。 だから、とてもとてもゆっくりできた。最高のおうちだった。れいむはおにいさんが大好きだった。 ある日、お兄さんが、散歩に連れて行ってくれた。 高い空の下で、やわらかい草花の上で、れいむは元気に跳ねまわって夢中で遊んだ。 だが、知らないうちにお兄さんから離れすぎていた。気が付くと、知らない人に抱き上げられていた。 「ゆっくりはなしてね! れいむはおにいさんのれいむだよ!」 必死に頼んだが聞いてもらえなかった。泣きわめいて抵抗したが無駄な努力だった。 草原の向こうのベンチにお兄さんが座っているのが、袋に詰め込まれる直前に、見えた。 * * * * * そして今、れいむはどことも知れない、殺風景な部屋に放置されている。 周りには焼印の押されたゆっくりがたくさんいた。どの子もゆぐゆぐと泣いていた。 「ゆっくりしていってね!」懸命に声をかけると、似たような空元気の返事があった。 みんなさらわれた子だった。でもれいむは希望を抱いていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 最初の一週間は、れいむの生涯で二番目に不幸な週だった。 なぜなら、「棚」に押し込まれた週だったからだ。 焼印をつけられたあと、れいむたちは巨大な部屋に並ぶ棚に入れられた。 人間の靴箱のような狭い棚だ。一マスに一匹ずつ、何百何千ものゆっくりが詰め込まれた。まずい流動食が出た。 「ゆっくりだしてね!」「ここはせまいよ! おうちかえる!」「きっとしかえしするからね!」 みんなが文句を言った。だが、青い服の人間たちは誰ひとり返事をしてくれなかった。 二週目、れいむは自分たちの境遇を理解し始めた。 25センチ四方のマスの中。そこから出ることはできないのだ。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 三週目、れいむはうんざりしてきた。食事がまずいのだ。 食事は棚の前の樋を流れていくおからのような流動食だ。一応ほんのりした甘味はある。 だがひどく単純な味で、お兄さん手製のごはんにはとても及ばなかった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶ、きっとたすかるよ。お兄さんがゆっくり来てくれるよ」 四週目、れいむは体が痛くてたまらなかった。 ずっと体を動かしていないので、皮が堅くなってしまったのだ。 乾いた餅のようにほっぺたがコチコチになり、ひび割れた。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「まだだいじょうぶだよ。お兄さんがもうすぐ来てくれるよ」 五週目から、青い服の人間たちがたまにやってきて、スプレーをかけてくれるようになった。 頬の乾きはそれで抑えられた。けれどもコチコチの代わりに、ベタベタするようになってしまった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう願っていた。 「お兄さんが来てくれるよ。れいむがまんできるよ」 六週目、突然、隣のマスとの仕切り板がガシャンと開いた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 隣にもゆっくりがいた。初日に会ったきり見なかったまりさだった。人恋しさから、思わずすりすりした。 すると、どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「ゆゆゆゆゆ?」れいむは戸惑いつつも発情してしまった。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 れいむは生まれてはじめてのすっきりをしてしまった。 「ゆぅ、ごめんなさい、おにいさん。れいむ、すっきりしちゃった……」 そのあと、れいむの頭には茎が生え、小さな赤ちゃんたちが実った。 隣のマスとの間にはガシャンと再び仕切りができたが、声は聞こえた。 「れいむ、ゆっくりしたあかちゃんをうむんだぜ!」「ゆん! ゆっくりがんばるよ!」 赤ん坊の成長を心から楽しみにして、れいむは一週間を過ごした。 「ゆっくりうまれてね……!」 七週目、赤ん坊が生まれてすりすりを始めた途端、人間がやってきてガシャンとレバーを引いた。 床板が目の荒い網になり、赤ん坊はみんなボトボトと落ちて、どこかへ転がっていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その後、れいむは悲しみながらも、赤ちゃんが戻ってこないかと一縷の希望を抱き続けた。 「あかちゃんたち、きっとゆっくりもどってくるよ……!」 八週目が来ても、赤ん坊は戻ってこなかった。 「あかちゃんだぢ、どごなのぉぉぉ……!」れいむは悔し涙を流していた。 ガシャンと仕切り板が開いて、まりさが現れた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 床がぶるぶると震え始めた。「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」二匹はすっきりした。 九週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 楽天的なれいむの心の中にも、ドロドロした黒い不安が生まれ始めていた。 「お兄さん、ここはぜんぜんゆっくりできないよ!」 十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十一週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛、またれいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十三週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛!! あがぢゃんどらないでねぇぇぇぇぇ!!!」 十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは拒んだ。 「まりさ、だめだよ! すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十五週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ぎあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、まだまだあがぢゃんがあぁぁぁぁ!!!」 十六週目、 ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは厳しく拒んだ。 「まりさ、だめだよ! あかちゃんがとられちゃうから、すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十七週目、赤ん坊が生まれたが、れいむは口を大きく開けて、なんとか全員落下前に受け止めた。 「ゆー」「ゆっくち!」「ゆっくちちぇっちぇっ」「ゆっきゅう!」 「ゆああ……! あかちゃんたち、ゆっくりだよ! ゆっくりしていってね……!」 初めて助けることのできた子供たちを、涙を流して祝福したが、十分後に人間が来て持ち去った。 連続六回にわたって愛しの赤ん坊を奪われたれいむは、かなりダメージを受けていた。 うつろな目で宙を眺めて、「ゆあ゛あ゛……ゆあ゛あ゛……」とうめき、時おり「ひぐっ」と嗚咽した。 するとそこへ人間がやってきて、れいむをつついて我に返らせ、噛んで含めるように言った。 「子供を守ろうとしても無駄だ。ゆっくりの子供はすべてここの商品として出荷されるんだ」 「ゆぐっ……あかぢゃん、かえじでね……」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 すでに四ヵ月、百二十日も狭い棚に閉じ込められていた。 死ぬまで、という言葉がリアルな重みを持ってずっしりとのしかかってきた。 「ゆがああああああああ!!」 れいむは狂的な怒りにかられて、人間に飛び掛ろうとした。 ガシャン、と棚の枠にさえぎられて跳ね返されただけだった。 「ゆがああああああ!! ゆがああああああああああ!!!」 ガシャンガシャンという音が何度も響いた。人間は去っていった。 十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 十九週目、赤ん坊が生まれた。 れいむは力なく声をかけて祝福したが、十分後には落下して転がっていった。 れいむの心の中のドロドロは、真っ黒に固まりつつあった。 「お兄さん、お兄さん、ここはいやだよ、はやくたすけてよ……」 二十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄さん、お兄さん! はやくきて、れいむつらいよ!」 二十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざん、お兄ざんっ! れいむいやだよ! あかぢゃんかわいそうだよ!」 二十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざんお兄ざんお兄ざんはやくはやぐもうこんなとごろいやいやいや」 二十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁんお兄ざぁぁぁんたずげでねぇぇれいぶづらいよぉぉぉ!」 二十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁぁぁぁぁぁん! れっれいっぶっも゛っも゛ヴっ、こわっこわ゛れぢゃぅぅぅぅ!」 三十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 しかし、一匹だけが網目に噛みついて踏ん張った。 「ゆきゅっ!」「あかちゃん……!」 れいむの磨耗しかかっていた理性が蘇った。 母のしぶとさで、ビー玉ほどの赤ん坊を背後にかばい、自分と壁との間に隠した。 三十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 「まりさ……すっきりしていいよ」 「ゆっ? いいの、れいむ?」 連日れいむの悲鳴を聞かされているまりさも憔悴していたが、れいむの後ろの小さな影を見て、ハッと顔色を変えた。 「れいむ……!」 「まりさ……れいむはこのこのために、ほかのこをすてるよ!」 れいむは涙をこらえて言った。 「おねがい、ゆるしてね……!」 「ゆ、わかったよ、れいむ!」 まりさもれいむの悲壮な決意がわかったのか、強くうなずいた。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 二匹はすっきりした。 三十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 れいむは叫んだが、それは演技だった。 背中の後ろにしっかりと、ピンポン玉ほどの赤ちゃんれいむをかばっていた。 「おかーしゃん、ゆっくち!」 「このこのためなら、れいむはおにになるよ……!」 野生動物のような警戒心で青い服の人間の目を交わしつつ、ひそかに流動食を食べさせて、れいむは子供を育てた。 三十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、テニスボールほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうちょたち、てんごくでゆっくちちてね……!」 三十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、りんごほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうとたち、てんごくでゆっくりちてね……!」 三十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰では、グレープフルーツ大になった子ゆっくりが苦しんでいた。 「おかーさん……れいむ、そろそろせまいよ!」 「ゆっ!」 「ゆっくりたすけてね!」 れいむはヒヤリとしたものを感じた。いや、無視しようとしていたが、実はもう二週間も前から感じていたのだ。 このままではいずれ、子ゆっくりも、ゆっくりできなくなってしまうと。 「ゆ、ゆっくりかんがえるよ!」 そう答えつつ、心の中では藁にもすがる思いで願っていた。 (おにーさんおにーさんたすけて! いまならまにあうよ、いましかないよ! れいむのこどもをたすけてね……!!!) 四十週目、ガシャンと仕切りが開いてまりさが現れた拍子に、子れいむがコロンとれいむの前に出た。 まさにその瞬間、棚の前を青い服の人間が通りがかった。 「あれっ、子供いるじゃないか!」 れいむとまりさは、頭が真っ白になった。おたおたしているうちに人間が手を伸ばして子れいむを掴み取った。 「ゆっ、おかあさーん! ゆっくりたすけてねぇぇぇ!!」 「れいむぅぅぅ!!」 「うわぁ、でっかい! これだともう六……七週齢ぐらいか? よくもまあ育てたなあ」 人間はいったん子れいむを床に置き、母れいむをズボッとつかみ出して、奥を調べた。 「おっ、髪を敷いて巣を……すごいなあ、これは報告しなきゃ」 「おかーさん、おかーさぁぁぁん!!!」 「れいむ、にげてね! ゆっくりにげてね!」 子れいむはぴょんぴょんと跳びはねて泣きわめいた。母れいむは必死に子供だけで逃がそうとした。 人間は巣を取り除いてから、そんな母れいむを再び押し込め、ガッチリと枠を閉めた。 そして子れいむを取り上げ、ギュッと片手で握りしめた。 「ゆぶっ? ゆゆっくりやめっやっやべっ、おがぁしゃっゆブッ」 短い抵抗のあと、子ゆっくりはあっさりと潰された。人間はそれを隅の排水溝に捨てた。 れいむの頭の中で、最後の最後に子供が漏らした、おかあさん、という言葉がエコーしていた。 どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「れれれれれいむぅぅ!」 れいむはデク人形のように無表情のまま、まりさに犯された。 四十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 れいむは子守唄ひとつ歌わず、それをぼんやりと見つめていた。 それから、さらに十週間、れいむは同じ毎日を過ごした。 まりさに犯され、子供を生み、またまりさに犯され、子供を生んだ。 五十一週目、れいむはまた子供を生んだ。十分後には落下して転がっていった。六匹の赤ん坊がいなくなった。 れいむは二十二回出産して、百五十七匹の赤ん坊を産み、百五十六匹を奪われ、一匹を殺された。 れいむはもう、お兄さんの名を呼んでいなかった。 いつから呼んでいないのかわからなかった。 なぜ呼んでいたのかもわからなかった。 今ではただひとつの言葉しか覚えていなかった。 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 五十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 五十三週目、棚の枠を開けて、人間が手を差し込んできた。 れいむのぼやけて意味をなさない視覚に、顔が映った。 「れいむ、れいむか!? ああ、そのリボンの模様はれいむだな! 俺を覚えてるか?」 れいむは朦朧と眺めていた。そんな妄想はもう何千回も経験していた。 「わからないのか? もうダメになっちゃったのか? かわいそうに……」 ずるっと引き出されて抱かれた。頭の上の茎がゆさっと揺れた。 おにいさん、ゆっくりありがとうね、とれいむは思った。こういう夢は、たとえ夢でも、気が晴れるから好きだった。 「ええ、こいつです。間違いないんで……はい、はい。いえ、はい」 青い服の人間と話し合ったお兄さんが、れいむを運んでいく。 あれ、きょうのゆめはすごいよ。 おそとのけしきまでみえているよ。 ゆっくりできそうなけしきだよ……。 れいむはどんよりとした無表情で、加工所から家までの道のりを眺め続けた。 その目が、次第に明るくなってきた。 「さあ、うちだぞ」 ドアをくぐると、匂いがした。 人間の男の人の匂いだ。 なつかしい匂いだった。 それはまぎれもなく、現実の匂いだった。 れいむの周りを幾重にも覆っていたぼんやりとした膜が、急速に薄れていった。 「ゆ……ゆ……!?」 「おっ、れいむ!? 治ってきたのか?」 「ゆっ、ゆっ、ゆゆゆ……!」 ぽすっ、と座布団の上に置かれた。 そのふかふかの感触。 その甘い自分の匂い。 そこから見える室内。 すべてが、記憶のままだった。 「ゆっ! ……ゆ゛っっ!!! ……ゆ゛ぅっ!!!!!」 れいむはわなわな震えだした。目が見開かれ、大粒の涙がボロボロとこぼれだした。 錆付いてボロボロに朽ちていたはずの心が、再び動き出した。 「こ こ は……れい むの……おうち……」 「れいむ」 ハッと見上げた。カチャカチャと皿を出しながら、お兄さんがウインクしていた。 「ゆっくりしていってね」 「おにいざあああああああああああああん!!!!」 堰を切ったように感情があふれ出した。れいむはびょんびょんと激しくジャンプして、お兄さんに抱きつこうとした。 だが、それはかなわなかった。 足が萎えきっていて、跳ねるどころか這うこともままならなかったのと、近寄ったお兄さんに押さえられたからだ。 「無理しちゃだめだ。それに、赤ちゃんが落ちちゃうだろ」 「ゆっ!? あかちゃん?」 「そうだ。おまえ、あかちゃん大事だろう?」 れいむは愕然として頭上を見上げた。そこに、小さな子供の生った茎があった。 「ゆゆーっ!? れいむにあかちゃんがいるよ?」 「おいおい、気づいてなかったのか?」 笑ったお兄さんが、ふと顔を引き締めた。 「そうか……それほどつらかったんだな」 そう言って、皿に乗せたものをれいむの前に差し出した。 「食べな」 それはいちごを乗せた、白いショートケーキだった。 ガンッ! とれいむの嗅覚を何かが直撃した。 「!?」 戸惑って、目をぱちぱちさせながら、れいむはそれを確かめようとした。 それは甘味の、本物のスイーツの匂いだった。 おそるおそる舌を伸ばして、クリームをすくいとった。 とろぉり……と。 乳脂肪たっぷりの豊かな甘味が舌に乗り、れいむの口内に染み渡り、魂の底まで溶かしていった。 「ゆああああぁ……」 れいむは陶然となった。目が泳ぎ、頬がとろけた。 忘れきっていた、砂糖の香り、味、栄養。それらがれいむから、とうとうあの言葉を引き出した。 「ゆっくり……!」 「お、出たな」 「ゆっくり! ゆっくり、ゆっくり! ゆっくりー! ゆっくりぃぃぃぃぃ!!!」 叫べば叫ぶほど、乾ききっていた心が満たされていくようだった。 凄まじい勢いで本能がこみ上げ、れいむは行儀も何もかも忘れてケーキをむさぼり食った。 お兄さんは追加で三つものケーキを出してくれた。それらもすべて食べた。 食べている最中に、再び滝のように涙が流れ出し、とまらなくなった。 蘇った心に、あとからあとから温かい思いが湧き出していた。 「はっふはっふ! めっちゃ! うめっ! ゆまっ! ゆあい! ゆがっ! ゆあああ! ゆあぁーん! あああああん! あああああんあーんあーんあーああん!」 れいむは食べながら泣き出した。大声で心の限り泣いた。 泣きながらお兄さんに這いよって、ぐりぐりぐりぐりと頬を押し付けた。 「おかえり、れいむ」 あふれる感謝の思いをぶつけるため、れいむはいつまでも泣き叫び続けた。 翌日、赤ん坊が生まれ、十分後も二十分後も、れいむとゆっくりした。 声をかけあい、すりすりし、餌を与え、れいむは親身になって世話をした。 森にいるどんな親にも負けないほど立派な、親ぶりだった。 赤ん坊たちは、「おかーしゃん、すりすりしちゅぎだよ!」と文句を言ったが、れいむはやめなかった。 やめるつもりはなかった。自分の身がすり切れても、子育てに全力を尽くすつもりだった。 百五十七匹分のゆっくりを、与えてやらなければならないのだから。 二ヵ月後、ゆっくりれいむは、お兄さんに頼んで、家族ともども山へ連れていってもらった。 そよ風の吹く緑深い沢で、れいむは箱から出してもらい、草の上に座った。 「おかーしゃん……」 「ゆっくちできそうなところだよ……」 八匹の子供たちが、れいむに寄り添っていった。するとれいむがたしなめた。 「ちがうよ、れいむ、まりさ! ゆっくちじゃなくて、『ゆっくり』だよ!」 「ゆ!」 「わかったよ、ゆっくり!」 「ゆっくりー!」 ぴょん、ぽよん、と子供たちがはねた。 もうみんなトマトほどになり、立派に野山で生きていけそうだった。 それを見届けると、れいむはお兄さんを振り返って言った。 「おにいさん、いままでありがとうね」 「れいむ……」 「れいむはしあわせだったよ! ゆっくりかんしゃしているよ!」 「おかーさぁん……」 子供たちが並んで、ほろほろと涙をこぼした。そんな一座に、れいむはキッとした顔で言った。 「さあ、ゆっくりひとりだちしてね! のやまでゆっくりくらすんだよ!」 「おかーさん!」 「おかーさんはむかし、ゆっくりできなかったよ。こどもたちは、かこうじょのおとーさんや、おかーさんのぶんまでゆっくりしてね! それがおかーさんのねがいだよ!」 うるうると瞳を潤ませた子供たちが、サッと背を向けて駆け出した。 「ゆっくり、いくよ!」 「ゆっくりがんばるね!」 「おかーしゃん、ありがとう!」 「ゆっくり、ゆっくりー!」 ぴょんぴょんと跳ねた子供たちが、次々に草むらに飛び込んだ。 ザザザザザ! と風が渡ったあとには、もう何の痕跡もなかった。 子供たちと同じように涙しながら見つめていたれいむが、振り向いた。 「ゆう……これで、れいむのしごとはぜんぶおわったよ」 「本当によかったのか?」 「ゆっ。お兄さんひとりにまかせるには、おおすぎたからね!」 うなずいたれいむの髪には、あろうことか、白髪が混じっていた。 この二ヵ月、れいむはお兄さんのおかげで心底ゆっくりした。だが、その前の一年が悪かった。 身も心もボロボロにされた加工所の生活が、もともと長くもないゆっくりの寿命を、削り尽くしたのだった。 柔らかな草の上で、大好きなお兄さんに見守られながら、れいむは早くもうっすらとかすれ始めた声で、つぶやく。 「お兄さん、ありがとうね。ほんとにほんとにありがとうね! れいむ、すごくゆっくりできたよ!」 「そうか」 「だいすきだったよ、おにいさん……!」 そう言って、れいむは目を閉じた。このままこの場で、草木と風とともに、ゆっくりと消えていくつもりだった。 お兄さんが、れいむの正面に来て、何か言おうとした。 ……ゆ? れいむは目を開けて聞き返そうとした。 だが、すでにまぶたが開かなかった。 もう、お兄さん。さいごのことばなのに、ゆっくりしすぎだよ……。 ほんのちょっとの悔しさを覚えながら、れいむは死んだ。 * * * * * 加工所の記録などによれば、うちのれいむは、おおよそこんな一生を過ごしたらしい。 最後の二ヵ月は、他のどんなゆっくりよりも飼い主の僕になつき、感謝しながら暮らしていた。 これのどこが虐待だ、とおっしゃる方もいるかもしれない。 だが、これを聞いたらどう思われるだろう? ――つまり、誘拐を装ってれいむを加工所員に引き渡したのは、他ならぬ僕だという事実を。 僕はれいむの笑顔が見たかった。 最高の――比類なき最上の――感動が見たかった。 そのために、あの最低最悪の場所へ、一年にわたってれいむを放り込んだのだ。 そして、生還したれいむの心からの感謝を、体いっぱい受け止めたのだ。 人畜無害な愛護家のような顔で。 僕はすでに、加工所から冷蔵まりさを買ってきてある。 次の感動を得るためだ。一年越しの作戦。薄汚れたアニバーサリープレゼント。 どうだろう。 やってみたいと思わないか? アイアンマン これまでに書いた話 ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 (まりさ解体) ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1235 少年 二人のお兄さんと干しゆっくり.txt このSSに感想を付ける
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「みんな!体をキレイキレイにするよ!」 ここは霧の湖。一家の主である母れいむが口に水をため子供達に吹きかけている。 「ゆっ!きもちいいよ!」「ちめたーい!」「からだキレイキレイにするよ!」 冷たい水にキャッキャッと声を上げる子供達だがその中に一匹だけムスッとふくれている子供がいた。 「からだを洗うなんてめんどくさいよ・・・」 そのまりさ種の子ゆっくりは体を洗うことを酷く嫌っていた。 子まりさ自身は面倒くさいから嫌だと言っているが実際は本人すら知らない記憶の奥底、水に流され死んでいった父まりさのトラウマが 水に触れるという行為を極端に嫌わせていた。 「大きくなって独り立ちしたら絶対に体をあらったりするもんか。」 幼少時代にその決意を誰にも話すこと無く育ったまりさはすくすくと成長し見事な成ゆっくりとなったまりさは 越冬を終えた後、他の姉妹よりもずっと早く独り立ちした。 独り立ちして二ヶ月、まりさはまりさ種であるが故に狩りの腕もめきめきと上達し自分一人の巣も簡単ではあるが扉付きという つがい相手としてはこれ以上無い程優秀なゆっくりとなっていた。だがこのまりさには当然できるべくしてできた欠点があった。 「ゆうぅ!!くさいよ!」「くさいまりさはとっととどっかに行ってね!」「おおくさいくさい」 子供の頃の決意を揺るがすことなかったまりさは独り立ちした後に湖に行くことは水を飲む為だけになった。 つまりまりさは半年間水場の近くに住んでいたにもかかわらず一度も体を洗っていなかったのだ。 巣の中でひたすらゆっくりする赤ちゃんゆっくりならまだしも、外へ狩りに出るまりさの体は四六時中汚れていた。 生き物としては常識はずれのゆっくりだが汚れた体を不潔のままにしておけば臭いはしてくるらしい。 最初はその甲斐性に惚れていた多くのゆっくり達も2週間、3週間と経つと自然とまりさのもとから離れていった。 「べつにいいよ!まりさはひとりでゆっくりできるからね!」 体を洗うなんて愚図がやることだ。ゆっくりにあるまじきその活発的な考えは実はゆっくりの怠惰な特徴を濃縮した果ての考えであった。 そんな変わり者のまりさにも少ないがそれ故に固い絆で結ばれた親友が二匹いた。 「まりさ!れいむはまりさから離れたりはしないよ!」 彼女はゆっくりれいむ。幼少時代からのかけがえの無い親友だ。 今では当然となったまりさの水浴び嫌いも成体になってからその癖を初めて知ったれいむは驚きを隠せなかった。 しかしまりさはこの森のどのゆっくりよりも全てにおいて優れているとれいむは信じていた。 それはきっと体を洗わずに日々鍛錬を続けてきたからに違いないともれいむは信じていた。 「ゆぅぅ・・・ありがとぉおおおおお!!!」 れいむは水浴びをしてはいたがそれをまりさに強要することは無かった。 なぜなられいむはまりさに水浴びを一度でもさせることでその能力が削ぎ落とされるのではないかと思っていたからだ。 れいむは自分よりも優れたまりさの能力の根源を水浴びをしないことでもたらされた力、 すなわち一種の願掛けによるもののような気がしてならなかった。 それを失わせる行動をとることはまりさを軽く神格化していた二匹にとってはとても恐れ多いものだったのだ。 「「ふたりでゆっくりしようね!!!」」 まりさにとっては大切な友人、れいむにとっては崇めるべき尊い存在として互いにその心の拠り所となっていた。 「ゆぅぅ、なんか背中がかゆいよぉ。」 「大丈夫まりさ?・・・ゆ!ま、まりさ!」 「ゆぅ?なに?」 珍しく晴れていたある日、二匹がいつもの様にくつろいでいると突然れいむがまりさの背中を見て驚いた。 「ゆっゆううううう!!!?」 「な、なに!?おどろいてばかりいないで何があったかゆっくりおしえてね!」 「ま、まりさの背中が・・・緑色になってるううううう!!!」 「ゆぅう!!?」 れいむの言う通り、まりさの背中は鮮やかな緑でその六分の一が覆われていた。人で言えば尻の部分、蒙古斑のような可愛い物では決して無いが。 「まりさ!」 「な、なに!?」 「こんな色をしたまりさは見たことないよ!とってもきれいでかっこいいよ!」 基本ゆっくり達の中には緑色を持った種は珍しい方である。最も目につく種がちぇん種であるがそれは身につけている帽子がだ。 今のまりさの様に体自体が緑色になるゆっくり等は少なくとも周囲の群れでは全く見かけなかった。 「きれい・・?まりさきれい・・・?」 「とってもきれいだよ!群れの中でもこんなにきれいなゆっくりは見たこと無いよ!」 子供の頃綺麗になると言われ嫌々水浴びをしていたまりさ。独立し、水浴びをしなくなったまりさはあれ以降綺麗などとは一度も言われなかった。 久しぶりに言われたその言葉はまりさの感情を大きく揺さぶった。 「れ・・・れいぶありがどおおおおおおお!!!」 大声を上げてまりさは泣きじゃくり始めた。ここまで大泣きするのも一体何時ぶりだろうか。 「泣かなくていいんだよまりさ!これがまりさの本当の姿なんだから!」 「ゆぐっ・・ゆぐっ・・・」 「そうだっ!きれいなまりさをみんなに見せにいくよ!きっとみんなまりさを馬鹿にしたことをあやまってくれるよ!」 「ゆぐっ・・!群れに・・・!?」 今までまりさは自分に自信が持てなかったわけではない。ただ、今の自分はいつもの自分よりも何かで胸の中が満たされていた。 「・・・ゆっ、ゆっくり、みんなにあいさつにいくよ!」 まりさは群れのゆっくりにあうことを自分自身で決めた。 「まりさとってもきれいだね!」「こんなにきれいな色をしたゆっくりはみたことないよ!」「おおきれいきれい」 翌日、群れの小さな集落へと出かけた二匹のまわりには大きな人だかりならぬゆっくりだかりができていた。 その中心となっているのはあの緑色を背負ったまりさ。顔は今までしたことの無い笑顔で満ちている。 「これがまりさの本当の姿なんだよ!見事なとかい派でしょ! みんな、今までまりさを馬鹿にしたことをゆっくりあやまってね!」 「い、いいんだよれいむ。まりさはべつに怒ってなんかないよ!」 自分の容姿が認められているというだけでまりさの今までの鬱憤は跡形も無く消えていた。 「ゆっ!まりさの緑色がきのうよりも広がってるよ!もうちょっとで髪の毛の所まで緑色になるよ! もしかしたら髪まで緑色になるかもしれないね!すごいよまりさ、とってもゆっくりしてるよぉ!!」 れいむにつられて周りのゆっくりからも歓声が沸き上がる。 「むきゅ!どうしたのみんな大声で!」 歓声を聞きつけてやってきたのは群れの知恵袋であるぱちゅりー、前々から水浴びを嫌うまりさに口うるさく清潔を保つ様に言っていたので まりさはあまりぱちゅりーのことを好んではいなかった。 そのぱちゅりーに今の体を褒めてもらえたならもうこれ以上の喜びは無い。それはあの幼少時代に疎ましく思っていた母に勝利する感覚だろう。 ぱちゅりーは誇らしげに胸、ならぬ顎を張るまりさに近づきその背中を見るや否や叫び始めた。 「むきゅうう!!!みんなまりさから離れるのよ!!近寄ってはいけないわ!!!」 「ぱ、ぱちゅりーなんてこというの!!?」 「ひどいよぱちゅりー!まりさはこのみどりをとっても気に入ってるのにぃ!」 「気にすることないよまりさ!しょせんちしきしか無い病弱なぱちゅりーにはまりさのみどりがりかいできないんだよ! そうだ!ぱちゅりーはまりさにしっとしてるんだよ!おおあさましいあさましい。」 れいむは自慢の緑色の背中を否定されたことでうろたえるまりさのことを必死にフォローした。 しかし、ぱちゅりーは目を見開いたまま大声で叫び続ける。 「嫉妬なんかじゃないわ!まりさのその緑色は・・・カビよ!!!」 ぱちゅりーにまりさがカビだと宣告されて数十分後、体を葉っぱで包み込んだゆっくり達によってまりさ達は捕えられていた。 「むきゅう・・だからあれだけ体を洗っておきなさいって言ったのに。」 「はなじでええ!!まりさ達はなんもわるいことなんかしてないよおお!!」 「汚れたゆっくりは体を洗わないとまりさみたいにカビが生えやすくなるんだよ。ぱちゅりーやまりさのお母さんは まりさのことを心配して体を洗えと言っていたんだよ。」 群れのボスの大れいむは声を荒げずに静かにまりさを諭した。だが当のまりさは納得しない。 そもそもカビが生える環境には適した水分や温度、栄養等が必要だ。 本来ゆっくりの表皮は自然の脅威に対抗した防水性や抗菌性といった機能を保持している。 そのため巣に籠り餌を持ってきてもらえる環境にあるゆっくりにカビが生えるということは滅多に無い。 しかし狩りをするゆっくりとなると話は別だ。 彼らが狩りをする時、その体の構造上から草や虫を踏みつけながら森を走り抜けなければならない。 そのため体中に草汁や虫の体液がこびりつくのだ。 これらを水で洗い流す、もしくは仲間に舐めとってもらうなどの行動をとらなければ ゆっくりの表皮にはそこ足がかりとしてカビが生えてくることがある。 つまり狩り中心の生活をしていたまりさの体は洗わないことで見事な菌床と化したのだ。 「ふん!水浴びしたら体が溶けてしんじゃうんだよ!体を洗うゆっくりの方がおかしいんだよ!」 「きくみみもたないんだね。」 「ゆん!まりさはぜったいに体を洗わないよ!」 「しかたないね・・・」 大れいむは悲しそうに顔を下に向けた後、すぐにぱちゅりーの方を向いた。 「二匹を群れから遠くはなれた崖上近くについほう!二匹が死ぬか条件を満たすまでかんしをつけるよ!」 高らかに宣言される追放と死の言葉に三匹は大きくうろたえ始めた。 「なななななにいってるのおおおおおおお!!!」 「れいむだぢはわるいごどしてないよおおおおお!!」 「まってみんな!群れに戻る方法はあるんだよ!」 大れいむの言葉を聞いて二匹はぴくっと反応をする。この窮地を救う手段があるのなら何でもいいからすがりたい、 二匹は穴をあけようとするかの様に大れいむをじっと見つめた。 「あるにはあるけど覚悟が必要だよ。とくにまりさ!まりさにはいたい目にあってもらわなければいけないよ!」 「ゆぅ!どうすればいいの!どうすればたすかるの!?」 この際体を洗ったって構わない、まりさの幼少時代の決意は死と天秤に量られることでいとも簡単に空へと舞い上がったようだ。 「ゆっ!れいむは河で念入りに体を洗うだけでいいよ!」 大れいむの言葉に緊張が解かれるれいむ。れいむにとってはいつもと同じことをやればいいだけの話だ。 「で、まりさ。まりさの方は・・・」 まりさの気分はさっきよりも楽になっていた。水浴びを念入りにするのは気に食わないが死ぬよりはマシだと思ったからだ。 だが大れいむから示された条件はぱちゅりーを除いたその場のゆっくり達には到底想像もできないものだった。 「そのカビた部分をれいむに引きちぎってもらってね!」 それから数時間経った今、まりさの背中は変わらず緑色だった。 「まりさ!れいむがちぎってあげるから背中見せて!」 「ゆぅうう!!!いやだあああああああ!!!!」 「まりさまってえ!!!」 崖上に追いやられてすぐ、れいむは早速まりさの背中のカビ部分を引きちぎろうと躍起になっていた。 しかし引きちぎられる側にとってはそんな覚悟はたまったモノではない。 高い身体能力に物を言わせ背中に回ろうとするれいむからまりさは逃げ回っていた。 「やだああ!!痛いのはいやだあああ!!!」 叫ぶまりさのカビは大れいむの宣告を受けた時よりもわずかだが広がっていた。 カビが広がれば広がる程引きちぎる箇所が増えていくということもぱちゅりーからは伝えられてはいたが 目先の恐怖から逃げ続けるまりさの頭の中にその助言は残っていなかった。 気がつけば崖上に一匹、まりさは涙を流しながら夜空を見上げていた。 「どうじでごんなごどに・・・」 水に触れたくない、ゆっくりとしては至極当然な考えだと思っていた行動が実はもう一つの天敵であるカビを引き寄せてしまった。 カビが生えている背中の感覚が徐々に無くなってきていることにまりさは気づいていた。 このまま全体に行き渡れば自分の体は腐り落ちて醜く死んでいくだろう。 だがそれを防ぐ手段が体を引き裂くこととは、大れいむの宣告を思い出すだけでまりさの目には玉の様に涙があふれた。 「まりさ!」 後ろの草影から出てきてまりさの名前を呼ぶれいむ。わざわざ声を上げていることからして不意打ちではないらしい。 「嫌だよ!背中を引きちぎられたらゆっくりできないよ!」 「このままでいてもゆっくりできないんだよまりさ!」 崖上に追いやられてから続いている押し問答をまた繰り返し始める二匹。 「どうじでれいむはまりざのいやがるこどをずるのおおおおお!!!」 「このままだとまりさが死んじゃうからだよ!今背中をちぎれば一緒に群れにかえれるんだよ!」 それを聞いた瞬間まりさの眼がキッと鋭くなりれいむを睨んだ。 「違うでしょ!れいむは群れに帰りたいだけなんでしょ!本当はまりざのことがきらいなんだ! だがら背中を引きちぎってやるなんて言うんだよ!そんなれいむ達なんか大嫌いだ!ゆっくりしね!」 「なんでそんなこどいうのおおおおおおおおお!!!」 まりさの言葉が餡子でできたれいむの心に突き刺さった。 大声で泣きながら顔を歪ませるれいむを見てまりさの気分が少しだけ晴れる。 「れいぶはまりざがだいすきなのにいいいいいいいいいいい!!!」 「ゆっ・・・?」 しかし今度はれいむの言葉がまりさの心に突き刺さった。 だがその刺さり方はれいむとは違う物では例えようないモノが突き刺さった感覚だった。 「まりさが逃げる姿を見て思ったよ!まりさはれいむ達にとって神様でもなんでもないおなじゆっくりだって! でもそう思うと逆にれいむ達は心がおちついたんだよ!まりさはれいむ達のたいせつな友人、いやそれ以上の関係だってことが分かったから!」 「れ、れいむぅ・・・!」 「れいむはまりさが大好きだよ!子供を作って一緒にゆっくりしたいもん!でも・・・ まりざがぞんなからだだとぜっだいすっきりなんでできないよおおおおおおおおお!!!!」 「ゆぐぅうぅぅうぅ!!!!!」 れいむが自分のことをそこまで愛していたということを知り衝撃を受けるまりさ。 だが今のまりさの体はれいむの言う通り決してすっきりできない体だった。 今他のゆっくりとすっきりしようとすればその相手には必ずカビがうつるだろう。 くわえてそのカビの影響を受けてしまえば子育てができないどころか奇形児が生まれてしまうかもしれない。 まりさが子供を作る為には背中のカビを排除する以外に道はなかったのだ。 「ゆぅうぅぅぅ・・・・!うぎゅぅぅぅ・・・・!!」 「ま、まりさ大丈夫!?いたいの!?」 まりさは悩む。大れいむからの宣告と背中を引きちぎることの痛みを量る天秤に新たにれいむの告白が加わったからだ。 れいむがそのどちらに荷担したかは言うまでもない。 うなるまりさが静かになり一分が経つ。この一分間はれいむにとっては今までの生活で最も長い時間となっただろう。 「ちぎって」 「ゆっ!?」 「まりさの背中のカビをちぎってね!」 「ま、まりざああああああ!!!」 まりさは自分の命とれいむの想いのため自分が痛い目を見る決心をした。 「まりさ、いくよ・・・」 「ゆっ!」 「ゆっくりたえてね!」 「ゆっ!」 まりさは木の幹にがっしりと噛み付き痛みに耐える準備をしている横でれいむもまりさの背中を引きちぎる準備をしている。 「じゃあまりさ、今からきずをつけるからゆっくりたえてね・・・!」 れいむはまりさのカビを効率よく引きちぎる為に一つの作戦を考えていた。 まずまりさの背中にカビを取り囲む様な傷を付ける。カビを引きはがした時に余分な所まで傷つけない様にする為だ。 「ゆっ!・・・ゆゆゆゆゆゆゆゆゆうぅううぅぅうう!!」 「がまんしてねまりさ!引きはがすときはこれよりもっと痛いんだからね!」 れいむはフォローのつもりなのかもしれないがやられるまりさからしたらいちいちそんな宣告はしないでほしい。 だからといって心配してくれるれいむを無下に扱うわけにはいかない、まりさはただひたすらいた意味に耐えることがだけに集中した。 「ゆっ!・・ゆぅ・・ゆぅ・・・」 「おわったよまりさ。さあこれからよ、覚悟はいいわね!」 「ゆぐぅ!ゆゆゆゆゆ・・・」 「だいじょうぶだよありす!まりさはさっきやるっていったもん!」 「ゆゆ!ゆぅぅ・・・」 正直まりさは後悔し始めていた下準備でこれだけ痛いのだからこれから行われることは一体どれだけの痛みを伴うのだろうか、 まりさは不安と痛みで頭の中がぐるぐると回っていた。 「さすがまりさだね!それじゃあ一気にいくよ!せーのっ・・・」 「ゆぅっ!?ゆゆゆゆゆゆ!」 「それっ!!」 「ゆぎゅ!!ぐうううううううううううう!!!」 掛け声と共にれいむはまりさのカビ部分に余裕を持たせてマーキングした箇所に噛み付き思い切り引っ張った。 「うぐぐぐ!!なかなかとれないよ!ふんぐううう!!」 「うぎぎぎぎ!!!ゆゆゆうぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!」 「まりさ我慢してね!」 「ゆうううううううういぃっしょ!!」 「ゆう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!」 森中にまりさの悲鳴がこだまする。それはれいむの計画が成功しまりさ達がその罪を償ったという合図でもあった。 贖罪から二日が過ぎた。 まりさの背中はぱちゅりー達の治療のおかげで傷跡のない綺麗な肌に戻っていた。 大れいむとぱちゅりーは見事に試練を克服したまりさとれいむが正式に群れに加わることを快く承諾した。 まりさが元気になってすぐ、れいむは改めてまりさに告白し二匹は正真正銘の夫婦となった。 「れいむ、きっとゆっくりした赤ちゃん達だよ!」 「ゆぅゆぅ!はやく落ちてきてね赤ちゃん!」 れいむの頭に生えている茎には小さな黒い実が7つ程可愛らしく生えている。 自らのカビをはぎ取り、体を綺麗に洗ったまりさだからこそ手に入れることができた幸せ。 その幸せを常に忘れない為にまりさは自分の体を洗うことを日課としていた。 「ゆうぅ、れいむも赤ちゃんたちの姿がみたいよ。」 「だいじょうぶ!まりさがしっかり赤ちゃんのことを見ててあげるよ! そうだ!このことをぱちゅりーと大れいむに伝えてくるよ!きっとよろこんでくれるよぉ!」 「ゆっ!まってまりさ!れいむの頭がかゆ・・・もうゆっくりしてないんだから!ぷんぷん!」 外は霧雨、ゆっくりが外出できない程ではなかったが身重のれいむは巣から出ることはできなかった。 「ぱちゅりー!」 「むきゅ!まりさ!元気にしてた?」 「あたりまえだよぉ!ぱちゅりぃー!!」 「むきゅう!まりさやめなさい!はずかしいじゃない!」 体の清潔を保つ様になってからまりさはやたら他のゆっくりと頬を擦りあわせるスキンシップをとる様になった。 当然愛しているのはれいむただ一匹だけなので交尾に発展することは決して無い。 例えるなら欧米人のスキンシップにそのノリは近かった。 「ゆ!ごめんよぱちゅりー!ゆゆ!大れいむ!大れいむもこんにちは!」 そう言ってぱちゅりーにしたのと同じ様に大れいむと頬を擦り合わせるまりさ。 体の大きい大れいむはとてもくすぐったそうだったがまりさの好意を無下に扱う気はさらさらなかった。 「ゆー!まりさくすぐったいよ!」 「ゆう~♪ゆう~♪ゆう~♪」 「まりさ、今日わざわざここに来たってことはなにかあったんじゃないの?」 気分よく大れいむにじゃれるまりさの浮かれ具合に気づいたのか、群れの管理を行うぱちゅりーはその原因を知らなければならないと考え まりさの動きを制止した。 「ゆ、そうだった!びっくりしないでねぱちゅりーに大れいむ!なんとまりさとれいむに赤ちゃんができたんだよ!」 「むきゅん!それはすばらしいことね!」 「それでにんっしんっ!はしょくぶつがた?おなかがた?」 「ゆ?なにそれ?」 末っ子、そして今まで一人で暮らしてきたまりさにとってにんっしんっ!という概念はあってもそれがどのようなモノなのかは 全く考えが及ばなかった。そのため、今回のれいむのにんっしんっ!が頭から蔓が生える植物型であるということや もう一つのにんっしんっ!のタイプ、動物型が存在するということも全く知らなかった。 ちなみに大れいむが言っているおなかがたとは人間たちの言う動物型のことだ。 「むきゅ、頭からはっぱさんが生えていたらしょくぶつがた、おなかがおおきくなっていたらおなかがたよ。 しょくぶつがただったらうまくいけば今日中に赤ちゃんたちは生まれるわ!」 「ゆゆゆ!れいむの頭にはみどりのはっぱさんがたくさん生えてたよ!」 「よかったねまりさ!きっと今日の夜には赤ちゃんたちとゆっくりできるよ!」 「ゆ!そしたらゆっくりしないで帰るよ!教えてくれてありがとう、ぱちゅりー!大れいむ!」 まりさは二匹に背を向けたまま礼を言って一目散に自分の巣へと帰っていった。 「むきゅう・・・せっかちなゆっくりね、まりさは。」 「そういうゆっくりも群れにはひつようなんだよ、ぱちゅりー。」 「むきゅ?むっきゅう・・・」 「ゆ?どうしたのぱちゅりー。」 「むきゅ~、なんだかほっぺがかゆいわ。」 「ゆゆ?そういえばれいむもかゆいよ?なんでかな?」 巣の中、まりさとれいむはわくわくしながらゆっくりと赤ちゃんたちの誕生を待った。 きっととってもゆっくりした赤ちゃんが生まれるだろう、生まれた赤ちゃんたちには色んな狩りの方法やゆっくりプレイスの探し方を教えよう、 れいむ種とまりさ種どちらが多いだろうか、毎日毎日体をきれいにしてあげよう。 二匹のゆっくり将来は月が高く昇るまで延々と続いた。 だが、当の赤ちゃんたちは以前生まれ落ちる気配はない。れいむに至っては蔓から全く振動を感じないことに不安を抱く始末だ。 「ねえ、まりさ・・・赤ちゃんたち何時生まれるんだろうね・・・」 「ゆう、きっととてもゆっくりした子たちなんだよ!心配しないでれいむはゆっくり寝てていいよ。まりさが見てるからね!」 親としては未熟なまりさであったがれいむの疲れはその顔から読み取ることができた。 これ以上疲れさせると赤ちゃんたちにも影響が出るかもしれない、まりさは直感的にれいむを休ませることにして 自ら夜番をとることをきめた。 「まだ葉っぱさんばっかり・・・本当に今日生まれるのかな?」 まりさの眼には確かにれいむから蔓が生えていた。 しかし肝心の子供たちはどうしてもまりさの眼には見えないのだ。 ただただ青いれいむの蔓、本当はれいむに尋ねてみたかったが蔓はれいむの頭から生えているのでれいむ自身には赤ちゃんたちの様子は見えない。 むしろこのことを話せば不安になるのではないかと思い言うに言い出せなかったのだ。 「でもいいよ!まりさの赤ちゃんたち、あせらずゆっくりうまれてね!」 その瞬間、まりさが葉っぱだと思っていたその物体はまりさの足下にぽとりと落ちた。 これは子供が生まれる兆しではないだろうか。そう思ったまりさはすぐさまれいむを起こし始めた。 「れいむれいむ!大変だよ!もうすぐ赤ちゃんが生まれるかもしれないよ!」 「ん・・ゆぅぅん・・?・・・ゆ!?赤ちゃんが!!?」 まりさの呼びかけで一気にれいむは覚醒した。赤ちゃん誕生の瞬間に母親がゆっくり寝ていたらいい笑い者である。 「ゆっゆっ!たのしみだね~!」 「ゆうぅぅん!何人生まれるんだろう♪まりさ、幾つ赤ちゃんたちができてる?」 「ゆっ?まだ赤ちゃんたちはできてないよ?」 「・・・ゆっ?」 まりさの言うことにれいむが疑問に思うのも当然だった。 れいむは一度自分の母の植物型にんっしんっ!を見たことがあったからだ。 その時の母の頭には自分の妹たちを思われる丸い固まりが幾つも生っていた。 「冗談言わないでねまりさ!一個か二個はすくなくともついてるはずだよ!」 「ゆ~赤ちゃんたちは一つも見えないよ。れいむの頭にはたくさんの葉っぱさんしかないよ?」 「じ、じゃあなんでれいむを起こしたの!?赤ちゃんはまだ生まれないよ!」 「ゆゆ、みてこれ!葉っぱさんが落ちてきたんだよ!だから赤ちゃんたちも落ちてくるとおもったんだよ!」 そういってまりさは先ほどれいむの蔓から落ちてきた緑色の物を指し示した。 まりさが葉っぱだと言い張る物、れいむにはそれがどうしても葉っぱには見えなかった。 なぜならその物体は果物の様に綺麗な球体で、その緑色はついこの間れいむが目にした忌まわしきあの天敵の色そのものだったからだ。 「カカカカカカカビだああああああああああ!!!!」 れいむは絶叫した。今まで自分の頭から生えていた物はゆっくりした赤ちゃんではな自分達を殺す気味の悪いカビの固まりだったからだ。 「これがカビ!!?どどどどういうこどおおおおおお!!!」 まりさにしても葉っぱだと思っていた物が以前自分を苦しめた原因だったのだから混乱しないわけがない。 まるで頭を抱える様にまりさはうずくまって叫び続けた。 その空気の振動でぼたぼたと落ちるれいむのカビ球。普通のゆっくり以上にカビを嫌悪している二匹にとって その光景は恐怖でしかなかった。 「うぎゅうううう!!!カビさんこないでえええええええ!!!」 「れいむ!いったんお外に出るよ!」 巣から勢いよく飛び出した二匹を待っていたのは夜遅くまで降り続ける梅雨の長雨。 光の全くない雨の日の森の中で一夜を過ごすのはゆっくりにとっては命がけだ。 「ゆぎゅう・・・!今日はお外じゃゆっくりできないよ。お家に戻ろうれいむ。」 「ゆうううう・・・でいむのあがぢゃんがぁぁぁ・・・・」 自然の力に負けた二匹は仕方なく今日は巣の中で夜を越すことにした。 朝になったらすぐにぱちゅりー達の所へいって相談しよう。まりさ達はなるべくカビ球から離れてから床についた。 「うぎゅ・・・ぎゅぎゅ・・・」「おが・・・」「・・・げで・・・」 更に夜が深くなった時、まりさ達は外からの雨音に混じって奇妙な声を聞いた。 「ゆっ?だれ、だれなの!?」 巣の中には自分達二匹しかいない。雨が降っている深夜に他のゆっくりが外出しているとも考えられなかった。 カビに続く気味の悪い現象にまりさ達は大きなストレスを感じ始めた。 「ゆぐううう!!まりさぁ、こわいよぉ!!!」 「ゆっ!だいじょうぶだよれいむ!まりさがいるからね!」 まりさは大きく顎を張りれいむを落ち着かせようとしたが正直まりさも今の事態に頭を回していた。 なぜ自分達にこれほどゆっくりできないことが続くのか、ゆっくりに神様がいるとしたなら今すぐにでもまりさはその神様を やっつけてやろうとまりさは考えていた。 自分達以外の生き物はいないはずの巣に自分達以外の声がする。 何度巣を見回してもあるのは部屋の隅にある保存用食料とカビ球。 カビ球・・・? まりさはよく目を凝らしてそのカビ球を見つめた。 そういえばなぜ球なのだろうか。自分にできたカビはどうやら皮一枚にしかついてなかったらしい。 じゃあこのカビは球にびっしりとついてるのだろうか? その時、微かにカビ球が動いたことにまりさにつられてカビ球を凝視していたれいむが気づいた。 直後、れいむはそのカビ球に飛び寄った。 「ゆゅ!?れいむ何してるの!あぶないよ!」 まりさの制止も聞かずれいむはカビ球のカビを口を使ってさっと払った。 「おが・・・おがあざん・・・」 出てきたのは可愛らしい顔を涙とカビでぐちゃぐちゃにしたれいむ種の赤ちゃん。 カビ球の正体はカビで包まれた赤ちゃん達だったのだ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛れいむのあがぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「いだいよぉ・・・いだいよぉ・・・」「だずげでえ・・・」「うぎゅ・・・うぎゅ」 そのカビ球全てが赤ちゃんだと知ったれいむは全ての赤ちゃんのカビを口で払いはじめた。 「あがぢゃあああああん!!!でいむのあがぢゃあああああんん!!!」 「やめてよれいむ!そんなことしたらゆっくりできなくなっちゃうよ!!!」 「うるざぁいいい!!!だまっででええええええ!!!」 その母親としてのれいむのあまりの剣幕にまりさは気圧されてしまう。 「まっででね!!いまだすげであげるからね!!!!」 粗いながらもれいむは全ての赤ちゃん達のカビを払い終わった。 しかしその代償としてれいむの体はカビでいっぱいになっていた。 その様子はまるでカビの培養実験で使われたシャーレの様、たった短時間でれいむは既に虫の息となっていた。 そのれいむが救ったと思った赤ちゃん達も半数が息を引き取っている上に残りの子達も全て虫の息だった。 「れいむのばがぁ!!こんなごどしだらゆっくりできなくなるってわかってたでしょぉ!!!」 「ご、ごめんねまりさ・・・もうれいむはゆっくりできないよ・・・」 「ゆぅぅ!!!ぞんなごどいわないでえええええ!!!!!」 「まりさ・・・きっとまりさにはまだカビさんがついてるんだよ・・・ここにいたらきっとぱちゅりー達に知られちゃう。 そしたら今度は殺されちゃうかもしれない・・・れいむのことは放っておいてすぐににげてね・・・」 「できないよぉぉ!!!まりざはれいむどゆっくりするためにあの日がんばっだんだよぉ!!?」 「まりさ、れいむは短い間だったけどとってもたのしかったよ・・・いっしょにゆっくりしてくれてありがとうねまりさ・・・」 「れいむ・・・?れいむ!!おきでよれいむ!!おきで!!!」 それより先、れいむは二度と喋ることはなかった。 周りの子供達もまりさが放心しているうちにいつの間にか息絶えていた。 外に出ると雨は降っていたが既に空は明るんでいた。 れいむの意思を組んでこの群れを離れよう、まりさはカビの死体となったれいむと赤ちゃんを器用に風呂敷に包んで 長旅の準備を整えた。 「むっぎゅうう!!!まりざあああああああああ!!!」 外から尋常ではない気迫のぱちゅりーの叫び声が聞こえた。ばれたのか、まりさは焦ったが落ち着いて考えるとあまりの情報が早すぎる。 疑問を抱きつつしずかに扉を開けるとそこには鬼の形相をしたぱちゅりーや大れいむ、群れの面々がまりさを睨んでいた。 「まりざ!!あなたまだカビが残ってるでしょ!!」 「ゆぅ!!なんでもう知ってるの!!?」 「当たり前よ!!!これを見なさい!!!」 そういってその場にいたまりさ以外のゆっくりは一斉に左右どちらかの頬をまりさに見せつけた。 「ゆぐうううう!!?みんな緑色!!!!?」 「そうよまりさ!!カビがついているあなたが私達に頬擦りしたから私達にもカビがうつったのよ!!!」 「みみみみんな、ごめんね!まりさはそんなつもりじゃ・・・」 無論まりさにはみんなにカビをうつす気などなかった。 しかしなんと言おうと結果的にはうつしてしまったことに変わりはない。ぱちゅりー達の怒りが収まるわけがなかった。 「うるさいよゲスまりさ!!やっぱり臭いやつはきれいになっても心はくさいやつなんだよ!」 「くさいまりさはしね!」「まりざのせいでありすの子供達ももう・・・」「ゆるせるわけないよーわかるよー!」 「いくよみんな!まりさに総攻撃をかけるよ!!!」 大れいむの掛け声で群れのゆっくりは戦闘態勢に入る。当然その目線の先にいるのは扉前に立っているまりさだ。 「かかれー!!!」 「「「「「おぉーー!!!」」」」」 「いやぁあ!!!やめてえええ!!!」 まりさは向かってくるゆっくりの群れに恐れをなしすぐに家に閉じこもってしまった。 「むぎゅううう!!!やめでええおさないでえええええ!!!」 「いだいよおおおお!!!はやくどいでええええええええ!!!!」 先頭にいたぱちゅりーと大れいむは群れと扉の板挟みとなり異常な程に平ぺったくなっている。その衝撃で巣の扉のノブが壊れてしまった。 まりさの巣の扉は引くタイプ。つまりノブがついてなければ外部から手のないゆっくりが侵入するには扉を壊すしかない。 「むっぎゅうううううううう!!!ぎゅっ?!」 「やめでえええええええええ!!!ゆっぐりできないいいいいいいいいい!!!いぎっ!?」 しかしまりさ自慢の巣の扉は頑丈だった。ぱちゅりーと大れいむが揃って圧殺される程の力がかかってもびくともしなかったのだ。 「ゆぅ・・・お家のとびらをしっかりつくっててよかったよ・・・」 しかしまりさにゆっくりしている暇などない。まりさは急いで扉の前にありったけの土を地面から掘り出して積み上げていった。 その土のおかげもありまりさの巣は見事な鉄壁を作り出すことに成功した。 「よぐもぱちゅりーとだいれいむをおおおおおお!!!」 「でてこいまりさぁ!!!ひきょうものぉ!!!!」 襲撃から二時間、群れの面々はいまだにまりさの巣の前で怒号を放っていた。 一方のまりさはというと巣から出ることもできない上に土を掘り起こした疲労、そして目の前のカビだらけの死体との対面で 著しく体力を失っていた。 溜め込んでいた食料を食べようにも、災難なことに全てがカビでやられていた。 「ゆぅぅれいむぅ・・・さびしいよぉ゛・・・」 その時外から悲鳴が聞こえてきた。 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ありすとかいはな顔があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 さっきまで近くの朽ちた老木の下で寝ていたありす一家母親の顔の半分は緑色で覆われている。 しとしとと降る雨と老木の湿気が無防備なありすの顔にあるカビの浸食を早めたのだ。 「大丈夫ありす!?ゆぎゅっ!?」 近づこうとするれいむ種がぬかるんだ地面で勢いよく滑った。 「ゆぎゅぎゅ・・・いたいよぉ。ゆっ・・・?れれれいむの髪があああああああああああああああ!!!!」 転んだれいむ種の目の前にあったのは自分の髪とリボン。湖でいつも確認をしていたから間違えるわけがなかった。 「いやあああああ!!れいむの髪があああ!!!リボンがあああああ!!!」 カビによりもろくなった頭皮、それが転んだことによりずるむけたのだ。 「あああれいむうううう!!!」「いやああああ!!!カビさんこわいよおおおおおおお!!!」 「ここにいたらゆっくりできなくなるううううううう!!!!」 被害を目にしたゆっくり達が一斉にパニックなり方々へと散らばりだす。 しかし群れのゆっくりの数は多い。ゆっくり達はあちらこちらでぶつかり合い先ほどのれいむ種と同じ悲劇を繰り返した。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛まりざのおめめがあああ!!!」「いやあああああほっぺがくずれるよおおおおお!!!!」 「おがーしゃあ゛あ゛あ゛あ゛がぁっ!!?」「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛でででいぶのあがぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 外から聞こえる阿鼻叫喚にまりさは改めて恐怖した。自分もあのように死んでいくのだろうかと思うとろくに動くことができなかった。 外の連中よりもカビとの付き合いが長い自分が今度へまをすれば無事ではないことは本能で理解していた。 「ゆうううううぅ!!!れいむぅ!!ごわいよぉおおおおお!!!!」 それからまりさはその巣にひたすら籠ることになった。 外に出れば群れのみんなに殺されることが分かっていたからだ。 だがカビの蔓延した巣からでないことはそれだけで自殺行為であった。 一日経つだけでカビはまりさの頭皮からまりさの全体の皮膚を侵していった。 日が経つにつれてまりさの体は動ける部位が減っていき、三日目にはカビの中心であった頭皮から反対側に位置する まりさの顔以外は全てカビで埋まっていた。 「うぎぎぎぃ・・・いだいよぉ・・・・くさいよぉ・・・」 ところどころで走る激痛と倦怠感がまりさの意識を朦朧とさせる。 すでにまりさは食事をとることすら頭になかったのだ。 「れいむと赤ちゃんたち・・・ぱちゅりぃ・・・大れいむぅ・・・みんなごめんねぇ・・・・!」 その意識の中で既に自分のせいで亡くなった仲間達に謝罪を発することができたまりさにもうやり残すことはなかった。 「ごべんねえ・・・!ごべんねえ・・・!ごべ・・ん・・・ね・・・・」 八月 強烈な夏の日差しは以前ゆっくりの群れがあった林をも照らしていた。 そこにやってきたゆっくりれいむ。古木の下に綺麗な色をしためずらしいものを見つけたのでそれが気になりやってきたのだ。 「ゆっゆー!とってもきれいなものだよ~!」 しかし自分の巣に運ぶにはちょっと大きい、ゆっくりれいむがきょろきょろと周りを見てみると今度はちょうどいい大きさの気を見つけた。 「ゆぅ~!!こんなゆっくりしたおうち初めて見たよ!それにあのきれいな物がこんなにたくさんあるよ! きめた!ここは今日かられいむのお家だよ!あしたまりさとありすとちぇんとー、うーんぱちゅりーは疲れるだろうから涼しくなったらにしよう!」 天敵に無防備なゆっくり、自然界で彼らが生き残れるのは後何年間だろうか。 このSSに感想を付ける